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13話 さようなら
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「愛人などいません」
私は無表情で答えました。
「私が不用意に外出していたかどうか、執事たちに聞けば解るでしょう」
「そ、そうか……」
ライナス様はほっとしたようなお顔をなさいました。
それが少し癇に障り、私は少し嫌味をいいました。
「ライナス様のご希望通りに、愛人を作らず申し訳ありませんでした。ライナス様は私が愛人を作ることをとってもお望みで、愛人との付き合い方まで指示してくださいましたのに。ライナス様のご期待に沿えないつまらない妻で申し訳ありませんでした」
「い、いや、良かった……」
「良くないでしょう。ライナス様のご要望に従わなかったのですから」
「そ、そんなことは……」
「愛人を作れと、私に言ったのはライナス様です。お忘れですか? ライナス様は、私の相手をしたくないから、私に愛人を作ってそういうことをせよとご命令なさったのですよ?」
「あ、あのときは、本当に……。わ、悪かった。許してくれ……」
ライナス様はもごもごと言いました。
「あのときのことは、あ、謝る……」
「いいえ。ライナス様のおかげで、私は愛する人と結婚できることになって、私は助かりました」
「は?!」
弾かれたように、ライナス様は顔を上げました。
「ど、どういう意味だ?! やっぱり愛人がいたのか?!」
「愛人はいませんが、愛する人はおりました」
「は?!」
美貌で間抜け顔を晒しているライナス様に、私は説明しました。
私の事情を。
「私にはもともと愛する人がいたのです。ライナス様と結婚することになってお別れしたのですが……。ライナス様が二年で離婚してくださるというので、愛する人に二年待ってて欲しいと頼んだら、彼は待っていてくれました」
そう、私の初恋の幼馴染アーサーは、二年間、待っていてくれたのです。
もちろんただ待っていただけではなく、彼は領地の復興のために頑張っていました。
アーサーはエヴァレット子爵の嫡子で、領地が隣同士だった縁で、私とは幼馴染でした。
大雨でエヴァレット子爵の領地も、我がスタンリー伯爵家の領地ほどではありませんが被害を受け、彼は二年間その復興のために尽力していたのです。
「私はようやく愛する人と結婚できます。これもライナス様が女嫌いでいらしてくださったおかげです。あのときは傷つきましたが、こうして愛する人と結婚できることになって、今は感謝しております」
「そ、そんな……」
ライナス様は衝撃を受けたようなお顔をなさいました。
そのライナス様のお顔……。
不謹慎ですが、溜飲が下がる思いでした。
二年前のあのとき、愛することはない、愛人を作れと侮辱されて、衝撃を受けた私ですが。
今、ライナス様が衝撃を受けているお顔を見て浄化された気がします。
「ライナス様、ありがとうございました。そして、さようなら」
私は無表情で答えました。
「私が不用意に外出していたかどうか、執事たちに聞けば解るでしょう」
「そ、そうか……」
ライナス様はほっとしたようなお顔をなさいました。
それが少し癇に障り、私は少し嫌味をいいました。
「ライナス様のご希望通りに、愛人を作らず申し訳ありませんでした。ライナス様は私が愛人を作ることをとってもお望みで、愛人との付き合い方まで指示してくださいましたのに。ライナス様のご期待に沿えないつまらない妻で申し訳ありませんでした」
「い、いや、良かった……」
「良くないでしょう。ライナス様のご要望に従わなかったのですから」
「そ、そんなことは……」
「愛人を作れと、私に言ったのはライナス様です。お忘れですか? ライナス様は、私の相手をしたくないから、私に愛人を作ってそういうことをせよとご命令なさったのですよ?」
「あ、あのときは、本当に……。わ、悪かった。許してくれ……」
ライナス様はもごもごと言いました。
「あのときのことは、あ、謝る……」
「いいえ。ライナス様のおかげで、私は愛する人と結婚できることになって、私は助かりました」
「は?!」
弾かれたように、ライナス様は顔を上げました。
「ど、どういう意味だ?! やっぱり愛人がいたのか?!」
「愛人はいませんが、愛する人はおりました」
「は?!」
美貌で間抜け顔を晒しているライナス様に、私は説明しました。
私の事情を。
「私にはもともと愛する人がいたのです。ライナス様と結婚することになってお別れしたのですが……。ライナス様が二年で離婚してくださるというので、愛する人に二年待ってて欲しいと頼んだら、彼は待っていてくれました」
そう、私の初恋の幼馴染アーサーは、二年間、待っていてくれたのです。
もちろんただ待っていただけではなく、彼は領地の復興のために頑張っていました。
アーサーはエヴァレット子爵の嫡子で、領地が隣同士だった縁で、私とは幼馴染でした。
大雨でエヴァレット子爵の領地も、我がスタンリー伯爵家の領地ほどではありませんが被害を受け、彼は二年間その復興のために尽力していたのです。
「私はようやく愛する人と結婚できます。これもライナス様が女嫌いでいらしてくださったおかげです。あのときは傷つきましたが、こうして愛する人と結婚できることになって、今は感謝しております」
「そ、そんな……」
ライナス様は衝撃を受けたようなお顔をなさいました。
そのライナス様のお顔……。
不謹慎ですが、溜飲が下がる思いでした。
二年前のあのとき、愛することはない、愛人を作れと侮辱されて、衝撃を受けた私ですが。
今、ライナス様が衝撃を受けているお顔を見て浄化された気がします。
「ライナス様、ありがとうございました。そして、さようなら」
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