氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!

柚屋志宇

文字の大きさ
13 / 14

13話 さようなら

しおりを挟む
「愛人などいません」

 私は無表情で答えました。

「私が不用意に外出していたかどうか、執事たちに聞けば解るでしょう」
「そ、そうか……」

 ライナス様はほっとしたようなお顔をなさいました。
 それが少し癇に障り、私は少し嫌味をいいました。

「ライナス様のご希望通りに、愛人を作らず申し訳ありませんでした。ライナス様は私が愛人を作ることをとってもお望みで、愛人との付き合い方まで指示してくださいましたのに。ライナス様のご期待に沿えないつまらない妻で申し訳ありませんでした」

「い、いや、良かった……」

「良くないでしょう。ライナス様のご要望に従わなかったのですから」
「そ、そんなことは……」
「愛人を作れと、私に言ったのはライナス様です。お忘れですか? ライナス様は、私の相手をしたくないから、私に愛人を作ってそういうことをせよとご命令なさったのですよ?」
「あ、あのときは、本当に……。わ、悪かった。許してくれ……」

 ライナス様はもごもごと言いました。

「あのときのことは、あ、謝る……」
「いいえ。ライナス様のおかげで、私は愛する人と結婚できることになって、私は助かりました」
「は?!」

 弾かれたように、ライナス様は顔を上げました。

「ど、どういう意味だ?! やっぱり愛人がいたのか?!」

「愛人はいませんが、愛する人はおりました」
「は?!」

 美貌で間抜け顔を晒しているライナス様に、私は説明しました。
 私の事情を。

「私にはもともと愛する人がいたのです。ライナス様と結婚することになってお別れしたのですが……。ライナス様が二年で離婚してくださるというので、愛する人に二年待ってて欲しいと頼んだら、彼は待っていてくれました」

 そう、私の初恋の幼馴染アーサーは、二年間、待っていてくれたのです。
 もちろんただ待っていただけではなく、彼は領地の復興のために頑張っていました。

 アーサーはエヴァレット子爵の嫡子で、領地が隣同士だった縁で、私とは幼馴染でした。
 大雨でエヴァレット子爵の領地も、我がスタンリー伯爵家の領地ほどではありませんが被害を受け、彼は二年間その復興のために尽力していたのです。

「私はようやく愛する人と結婚できます。これもライナス様が女嫌いでいらしてくださったおかげです。あのときは傷つきましたが、こうして愛する人と結婚できることになって、今は感謝しております」
「そ、そんな……」

 ライナス様は衝撃を受けたようなお顔をなさいました。

 そのライナス様のお顔……。
 不謹慎ですが、溜飲が下がる思いでした。

 二年前のあのとき、愛することはない、愛人を作れと侮辱されて、衝撃を受けた私ですが。
 今、ライナス様が衝撃を受けているお顔を見て浄化された気がします。

「ライナス様、ありがとうございました。そして、さようなら」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯

あなたの言うことが、すべて正しかったです

Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」  名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。  絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。  そして、運命の五年後。  リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。 *小説家になろうでも投稿中です

私を追い出した後に後悔しても知りません

天宮有
恋愛
伯爵家の次女マイラは、結婚してすぐ夫ラドスに仕事を押しつけられてしまう。 ラドスは他国へ旅行に行って、その間マイラが働き成果を出していた。 1ヶ月後に戻ってきた夫は、マイラの姉ファゾラと結婚すると言い出す。 ラドスはファゾラと旅行するために、マイラを働かせていたようだ。 全て想定していたマイラは離婚を受け入れて、家族から勘当を言い渡されてしまう。 その後「妹より優秀」と話していたファゾラが、マイラより劣っていると判明する。 ラドスはマイラを連れ戻そうとするも、どこにいるのかわからなくなっていた。

白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

白い結婚をご希望ですか? 良いですよ。私はジャガイモと筋肉を育てますので!

松本雀
恋愛
「……いいか、エルゼ。あらかじめ言っておくが、私は君を愛するつもりはない」 「願ったり叶ったりです! 実は私、国境警備隊に幼馴染の恋人がいまして。この結婚が決まった時、二人で『体は売っても心は売らない』って涙ながらに誓い合ったんです。閣下が愛してくださらないなら、私の貞操も守られます! ありがとうございます、公爵閣下!」 「……こいびと?」 ◆ 「君を愛するつもりはない」 冷徹な公爵ギルベルトが新婚初夜に放った非情な宣告。しかし、新妻エルゼの反応は意外なものだった。 「よかった! 実は私、国境警備隊に恋人がいるんです!」 利害が一致したとばかりに秒速で就寝するエルゼ。彼女の目的は、愛なき結婚生活を隠れ蓑に、恋人への想いを込めた「究極のジャガイモ」を育てることだった! 公爵家の庭園を勝手に耕し、プロテインを肥料にするエルゼに、最初は呆れていたギルベルト。だが、彼女のあまりにフリーダムな振る舞いと、恋人への一途(?)な情熱を目の当たりにするうち、冷徹だった彼の心(と筋肉)に異変が起き始めて……!?

処理中です...