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18話 王宮での失敗
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「娘が、申し訳ございません、殿下」
父は貴族ですので、当然作法は心得ています。
ルビーの無礼を、父はカーネリアン王子に謝罪しました。
「気にしなくて良い。私は王子様だからね」
カーネリアン王子は、良く言えば寛大、悪く言えばちゃらんぽらんな態度で、ルビーの無礼を気に留めず軽く許しました。
「……ルビー、殿下にご挨拶を」
「は、はい。ルビー・コランダムです」
父に促されて、ルビーはちゃんとカーテシーをして、一応カーネリアン王子にご挨拶が出来たそうです。
「ルビー嬢は噂とは全然違いますね。こんなに無邪気で可愛い令嬢だったなんて」
ルビーはストロベリー・ブロンドの美少女です。
そしてカーネリアン王子と同い年。
ルビーは作法が拙いので、カーネリアン王子はルビーを自分より年下だと思ったかもしれません。
奔放で気さくなカーネリアン王子は、ルビーを褒めました。
「やはり会ってみなければ解らないものだ。ルビー嬢のように可愛らしい令嬢にはぜひ王宮に来て欲しい」
「そ、そんなぁ、可愛いだなんて……」
「綺麗なストロベリー・ブロンドだね」
「あ、ありがとうございますぅ」
「あはは……。可愛いね。コランダム子爵、私はルビー嬢が子爵家を継ぐことに賛成です」
カーネリアン王子は気さくに、それはそれはとても気さくにお話をなさり、ルビーの容姿を誉めそやしたそうです。
それで、ルビーは気を許してしまったのでしょう。
王宮に行くことになって、ルビーはルビーなりに、最初は一応緊張していたこととは思います。
ルビーは無知ですが、さすがに王宮では、家と同じ振舞いではいけないことくらいは解っていたことでしょう。
ですがカーネリアン王子があまりにも親しみのあるお振る舞いをなさったので、気を抜いてしまったのだと思います。
「私がルビー嬢を謁見の間まで案内しますよ」
「わあ、ありがとうございますぅ!」
ルビーはいつものように気ままに飛び出して、そしてカーネリアン王子の腕に絡みついてしまったのです。
「……っ!」
カーネリアン王子が驚愕の表情で固まるのと、同時に。
王子に付き従っていた護衛が素早く動きました。
「無礼者!」
護衛たちは即座にルビーを王子から引きはがしました。
「きゃあ!」
ルビーは護衛たちによりその場で取り押さえられました。
「ルビー!」
父は蒼白になりました。
護衛は王子を守るようにして、父を糾弾しました。
「コランダム子爵、どういうつもりだ!」
「ご、誤解です!」
父は他意が無いことを護衛たちに説明しましたが、取り返しがつきませんでした。
そう、王族の体に、許可なく触れてはいけないのです。
ルビーはいつものように甘えたつもりだったのでしょうが。
暗殺者と疑われるような動きをしてしまったのです。
そんなつもりは無いと言い張っても、王族の体に触れることはそれだけで無礼ですから、そのまま牢に入れられても文句は言えない所業でした。
とはいえ。
父もルビーも国王陛下に招集された身です。
ルビーは護衛に後ろ手を押さえられたまま、引き立てられるようにして、国王陛下に謁見することになりました。
「カーネリアン、一体何があった。説明せよ」
簡単な報告を聞いていた国王陛下は、カーネリアン王子に詳しい説明を求めました。
「はい、陛下。ルビー嬢がいきなり私に抱き付いて来たのです」
カーネリアン王子がそう言うと……。
「抱き付いてなんていませんから!」
ルビーは即座に反論の声をあげました。
発言を許可されていないのに。
「私は腕を組んだだけです! 王子様は嘘を吐いています! ちょっと腕に触っただけで、なんで私がこんなことされなきゃいけないんですかぁ!」
国王陛下は、頭が痛そうに額に手を当てたとか。
「もう良い。解った。コランダム、下がれ」
父は貴族ですので、当然作法は心得ています。
ルビーの無礼を、父はカーネリアン王子に謝罪しました。
「気にしなくて良い。私は王子様だからね」
カーネリアン王子は、良く言えば寛大、悪く言えばちゃらんぽらんな態度で、ルビーの無礼を気に留めず軽く許しました。
「……ルビー、殿下にご挨拶を」
「は、はい。ルビー・コランダムです」
父に促されて、ルビーはちゃんとカーテシーをして、一応カーネリアン王子にご挨拶が出来たそうです。
「ルビー嬢は噂とは全然違いますね。こんなに無邪気で可愛い令嬢だったなんて」
ルビーはストロベリー・ブロンドの美少女です。
そしてカーネリアン王子と同い年。
ルビーは作法が拙いので、カーネリアン王子はルビーを自分より年下だと思ったかもしれません。
奔放で気さくなカーネリアン王子は、ルビーを褒めました。
「やはり会ってみなければ解らないものだ。ルビー嬢のように可愛らしい令嬢にはぜひ王宮に来て欲しい」
「そ、そんなぁ、可愛いだなんて……」
「綺麗なストロベリー・ブロンドだね」
「あ、ありがとうございますぅ」
「あはは……。可愛いね。コランダム子爵、私はルビー嬢が子爵家を継ぐことに賛成です」
カーネリアン王子は気さくに、それはそれはとても気さくにお話をなさり、ルビーの容姿を誉めそやしたそうです。
それで、ルビーは気を許してしまったのでしょう。
王宮に行くことになって、ルビーはルビーなりに、最初は一応緊張していたこととは思います。
ルビーは無知ですが、さすがに王宮では、家と同じ振舞いではいけないことくらいは解っていたことでしょう。
ですがカーネリアン王子があまりにも親しみのあるお振る舞いをなさったので、気を抜いてしまったのだと思います。
「私がルビー嬢を謁見の間まで案内しますよ」
「わあ、ありがとうございますぅ!」
ルビーはいつものように気ままに飛び出して、そしてカーネリアン王子の腕に絡みついてしまったのです。
「……っ!」
カーネリアン王子が驚愕の表情で固まるのと、同時に。
王子に付き従っていた護衛が素早く動きました。
「無礼者!」
護衛たちは即座にルビーを王子から引きはがしました。
「きゃあ!」
ルビーは護衛たちによりその場で取り押さえられました。
「ルビー!」
父は蒼白になりました。
護衛は王子を守るようにして、父を糾弾しました。
「コランダム子爵、どういうつもりだ!」
「ご、誤解です!」
父は他意が無いことを護衛たちに説明しましたが、取り返しがつきませんでした。
そう、王族の体に、許可なく触れてはいけないのです。
ルビーはいつものように甘えたつもりだったのでしょうが。
暗殺者と疑われるような動きをしてしまったのです。
そんなつもりは無いと言い張っても、王族の体に触れることはそれだけで無礼ですから、そのまま牢に入れられても文句は言えない所業でした。
とはいえ。
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ルビーは護衛に後ろ手を押さえられたまま、引き立てられるようにして、国王陛下に謁見することになりました。
「カーネリアン、一体何があった。説明せよ」
簡単な報告を聞いていた国王陛下は、カーネリアン王子に詳しい説明を求めました。
「はい、陛下。ルビー嬢がいきなり私に抱き付いて来たのです」
カーネリアン王子がそう言うと……。
「抱き付いてなんていませんから!」
ルビーは即座に反論の声をあげました。
発言を許可されていないのに。
「私は腕を組んだだけです! 王子様は嘘を吐いています! ちょっと腕に触っただけで、なんで私がこんなことされなきゃいけないんですかぁ!」
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「もう良い。解った。コランダム、下がれ」
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