4 / 13
第一章 憧れへの挑戦
第3話 何のために
しおりを挟む
「本当にすいませんでした!!!」
「いいっていいって!そんな謝る事じゃねえよ」
大通りにロビンの謝罪が響く。オブジェクトの力を使って法を犯してしまったロビンは、ライデンに自分の無意識下の行動を反省して頭を下げた。ところが深々と下げられたその頭を、ライデンは笑いながらポンポンと叩いた。
「確かに街中でのオブジェクトの使用は禁じられているが、君の攻撃は人命救助のための止むを得ない手段だった。警察には俺からも説得しとくから気にすんなって!」
たった一撃で、ライデンは地中から出現した全てのタイトゥンワームを真っ二つに両断した。今は到着した救急隊が、道路にぶち撒けられたタイトゥンワームの肉塊を処理しているところである。腕を軽く怪我したレハトは、負傷者として手当てを受けながらその様子を傍で眺めていた。
「そもそも君がいなければ、あの少女は今頃死んでいたかもしれない。君は1人の命を救ったんだ。自分をもっと誇るべきだ」
「いや、そんな事は…」
否定をするロビンであったが、ライデンの言う通り、ロビンがいなければあの少女がどうなっていたかは分からない。結果はどうであれ1人の命を救うことが出来たのに変わりはない。
そんな2人のやり取りを見ていたレハトは、ふと同じように負傷していたはずの少女がいない事に気づいた。不思議に思いつつ辺りをキョロキョロ見渡していると、ライデン達に近づいて来る1人の男の姿が目に入った。
「ボルティア総隊長、彼がオブジェクトを?」
「あぁ、リトか。そうだ、この子だ」
ライデンに声を掛けながら歩いてきたのは、全身真っ白のスーツを着た金髪ショートのハンサムな男性だった。高身長且つスラリとしたモデル体型で、胸には警察の紋章のバッジが光っている。少々チャラそうにも見える顔つきの彼は警察手帳を取り出し、レハトとロビンに身分証明を行った。
「僕の名前はリト・シニング。ユーサリア市警の警視だ。話はボルティア総隊長から聞いたけど、取り敢えず君達の名前を教えてもらおうか」
そう言われ、2人も身分を明かす。納得した顔で頷いたリト警視は、顔に僅かな笑みを浮かべつつ口を開いた。
「知っての通り、街中での戦闘用オブジェクトの使用は原則として違法となっている。それは単純に、悪用されて民間人に被害が出るのを防ぐ為だ。だが今回のケースは人命救助が目的であり、現にそれによって被害を抑えられたのも事実。よって今回の君達の行動は不問とする」
「ほ、本当ですか⁉」
「…だが、それでも一般人、ましてや君たちのような学生がオブジェクトの力を街角で扱うのは危険だ。これからはなるべく避難を最優先にして、我々警察か、或いはトレイルブレイザーが駆け付けるのを待っていてほしい」
煌びやかで不真面目さすら感じさせる姿とは裏腹に、思いのほかしっかりとした言葉遣いで2人を諭すリト警視。2人が安堵の笑みを浮かべるのを見て、ライデンもその姿を見守るように腰に手を当てた。
「「ありがとうございます!!」」
2人は同時に頭を下げて感謝の言葉を述べる。警察に誘導される他の受験生達からの視線を一点に受けながら、2人はこの瞬間の喜びを分かち合ったのだった。
それから数十分経ち、気づけば時刻は9時手前を指していた。試験の時間がすぐそこまで近づいたせいか、ここを歩いていた受験生の姿はいつの間にか消え、残っていたのは後処理を行う警察とレハト達だけである。治療も終わり、そろそろ試験会場に行こうと腰を上げたその時、隣に立っていたロビンがどこか遠くを眺めていた事に気づく。
「おい、速く行くぞ」
「ごめん、ちょっと待ってて」
突然そう断ると、ロビンはどこかに向かって走って行った。その先にいたのは、後処理の手伝いをするライデンである。何事かと気になったレハトは、ロビンに気づかれないようにその後を付け、物陰に隠れた。
「ライデンさん!」
「ん?何だ?」
何か言いたげにもじもじとするロビンの姿を見て、ライデンは不思議そうな顔をした。しばしの躊躇いの後、深呼吸を一度挟んでロビンはゆっくりと口を開いた。
「初対面の人にこんな事言うのは変なんですけど、トレイルブレイザーの隊長であるあなただからこそ、どうしても聞いてほしい話があるんです」
ロビンはあからさまに緊張しつつも、自分の言葉を一つ一つ噛み締める様にして丁寧に言葉を紡いだ。その様子を見ていたレハトは、ロビンのどこか深刻そうなオーラを感知して思わず唾を飲み込む。
「実は僕、トレイルブレイザーになるのが怖いんです」
突然の告白だった。幼馴染のレハトでさえも、そんな弱音はロビンの口から一度も聞いたことが無かった。自分の本音を吐露し、弱気な姿勢で語るその少年の背中は、酷く頼りなく感じた。
「僕は生まれつき体が弱いですし、オブジェクトも大して性能がいいわけではありません。臆病でビビりで、クリーチャーなんて化け物たちと戦う度胸も勇気もありません。さっきの行動も勝手に手が動いただけで、僕はずっと委縮してしまっていました。なのに、人々を守る為に戦っていくだなんてとても…」
ロビンは自分の意思でトレイルブレイザーを志望したわけではない。3歳の時にレハトがトレイルブレイザーを志した際、ロビンも彼に憧れてそれに続いたというだけの理由だった。
トレイルブレイザーは人の為に命を賭けて戦う仕事。そんな事はとうの昔から解っていたはずなのに、いざ本物のクリーチャーと対峙すると怖くて仕方がなかった。死ぬのはまだ怖かった。
それに対して、この時レハトが抱いたのは微かな恐怖心であった。14年間共に同じ目標を立てて努力したにもかかわらず、ライデンの返答によっては、ずっと隣を歩いて来た親友がいなくなってしまうかもしれないという不安が、確かにレハトに芽生えていたのだ。
「なら、やらなきゃいいんじゃねぇか?」
「……っ!」
ライデンの口から出た言葉は、レハトが恐れていた言葉そのものだった。
「知っての通り、トレイルブレイザーは命がけの仕事だ。新人隊員の約5割が、入隊1年以内に大怪我をするか、或いは死亡するとも言われている。確かに高水準の生活やら収入やらが手に入るが、自分の命と天秤にかけられる程の物でもない。戦う力も度胸もないなら大人しく諦めた方がいい」
「……そう、ですか」
ロビンは顔を俯かせて、一言そう呟いた。後ろからではその少年の表情を見ることは出来なかった。
「———でもな」
英雄は言葉を続ける。
「誰だって、本当は自分が一番大切だ。自分の命を守る為に逃げたり、他の人を見捨てたりするのは必ずしも悪い事じゃない。でも、だからこそ目の前で誰かが助けを求めていた時、それに伴うリスクや危険を顧みずに行動出来る事が尊いんだ。
君達がその手に持っている武器|《オブジェクト》は、誰でも簡単に扱える強力な武器だ。人を守ることも出来るが、世の中にはこの力を悪用している人間も大勢いる。
君達には、誰かを助ける事の出来る心とそれを実行するのに十分な力がある。その証拠がさっきの結果だ。俺はどうか、君達が持つその心で何を護りたいのか、その力を何の為にふるうのかについて考えて欲しいんだ。その答えを見つけ、自分が正しいと思う道を選んでほしい。それが俺の望む君への…いや、君“達”への願いだ」
レハトはその言葉を聞き、再度ロビンの反応に注目した。少年の表情はやはり分からなかったが、さっきとは違って背筋をしっかりと伸ばして顔を上げていた。それだけで十分、その少年の感情が読み取れた。
「ボルティア総隊長!こちらの手伝いもお願いします!」
「ああ分かった!少し待っててくれ!」
向こうからライデンを呼ぶ警察の声が聞こえる。快活な口調で反応したライデンはロビンから視線逸らして、その後ろに見えた人影に声を掛けた。
「そこにいるんだろ、レハト君?」
「えっ…あ、はい!」
急に自分の名前を呼ばれて驚いたレハトは、戸惑いながらも元気よく返事をする。いつの間に見られていた事に気づいて顔を赤らめたロビンを横目に、ライデンはレハトにも質問を投げかけた。
「君もトレイルブレイザーになりたいんだろ?だったら教えてくれ。君はトレイルブレイザーになって何がしたい?」
瞬間、戸惑いの色が見えていたレハトの顔にギラついた笑みが現れた。そんなもの、とうの昔から決まっていると言わんばかりに、少年は力強い眼差しと共に口を開いた。
「全てを護りたいです」
「……全て?」
「はい。クリーチャーから人を守るだけじゃない。人も動物も、全ての命をあらゆる脅威から護る。そうやって、誰も悲しまない世界を創る。そんなトレイルブレイザーになります」
その言葉を聞いて、ライデンはニヤリと微笑んだ。
「随分と大きく出たな」
「絶対に実現出来ますよ。なんたって、俺がそう信じてますから」
レハトの決意には微塵の揺らぎもなかった。心から願うあまりにも大きすぎる夢を、彼は夢だとは思っていなかった。必ず成し遂げる。むしろそれが確定した未来かのようにさえ思わせる自信だった。そうした強い意志を、ライデンはその少年から感じ取ったのだ。
「ハッハッハ!なるほど、今まで色んな奴を見てきたが、君ほど強欲な奴は初めて見たな。…だが気に入った!君がその未来を叶えるのを楽しみにしておくよ」
「ありがとうございます!」
元気よく頭を下げながら感謝を述べるレハトを見て、ライデンは満足そうに笑った。
「さて、君達も試験があるんだろ?速く行った方がいい。また会おうな、ロビン君にレハト君!」
ライデンは2人に別れを告げると、仕事を手伝いに現場に戻って行った。遠くへ消えていく大き過ぎる背中を眺めていると、ロビンは晴れやかに笑った。
「よし、早く試験に行こう!間に合わなかったら笑い話にもならないから!」
「おう!絶対合格するぞ!」
2人はすぐそこに見えるトレイルブレイザーベースに向かって真っすぐ走り出した。その足取りはとても軽快で、ぶつかる風が心地良い。道沿いに生えた木々が2人を歓迎するように立ち並び、白い街灯に照らされた歩道は2人を導くように光の道を形作る。
これから先に待つ沢山の出逢いと冒険に心を躍らせながら、少年達は胸を張って前に進むのだった。
「いいっていいって!そんな謝る事じゃねえよ」
大通りにロビンの謝罪が響く。オブジェクトの力を使って法を犯してしまったロビンは、ライデンに自分の無意識下の行動を反省して頭を下げた。ところが深々と下げられたその頭を、ライデンは笑いながらポンポンと叩いた。
「確かに街中でのオブジェクトの使用は禁じられているが、君の攻撃は人命救助のための止むを得ない手段だった。警察には俺からも説得しとくから気にすんなって!」
たった一撃で、ライデンは地中から出現した全てのタイトゥンワームを真っ二つに両断した。今は到着した救急隊が、道路にぶち撒けられたタイトゥンワームの肉塊を処理しているところである。腕を軽く怪我したレハトは、負傷者として手当てを受けながらその様子を傍で眺めていた。
「そもそも君がいなければ、あの少女は今頃死んでいたかもしれない。君は1人の命を救ったんだ。自分をもっと誇るべきだ」
「いや、そんな事は…」
否定をするロビンであったが、ライデンの言う通り、ロビンがいなければあの少女がどうなっていたかは分からない。結果はどうであれ1人の命を救うことが出来たのに変わりはない。
そんな2人のやり取りを見ていたレハトは、ふと同じように負傷していたはずの少女がいない事に気づいた。不思議に思いつつ辺りをキョロキョロ見渡していると、ライデン達に近づいて来る1人の男の姿が目に入った。
「ボルティア総隊長、彼がオブジェクトを?」
「あぁ、リトか。そうだ、この子だ」
ライデンに声を掛けながら歩いてきたのは、全身真っ白のスーツを着た金髪ショートのハンサムな男性だった。高身長且つスラリとしたモデル体型で、胸には警察の紋章のバッジが光っている。少々チャラそうにも見える顔つきの彼は警察手帳を取り出し、レハトとロビンに身分証明を行った。
「僕の名前はリト・シニング。ユーサリア市警の警視だ。話はボルティア総隊長から聞いたけど、取り敢えず君達の名前を教えてもらおうか」
そう言われ、2人も身分を明かす。納得した顔で頷いたリト警視は、顔に僅かな笑みを浮かべつつ口を開いた。
「知っての通り、街中での戦闘用オブジェクトの使用は原則として違法となっている。それは単純に、悪用されて民間人に被害が出るのを防ぐ為だ。だが今回のケースは人命救助が目的であり、現にそれによって被害を抑えられたのも事実。よって今回の君達の行動は不問とする」
「ほ、本当ですか⁉」
「…だが、それでも一般人、ましてや君たちのような学生がオブジェクトの力を街角で扱うのは危険だ。これからはなるべく避難を最優先にして、我々警察か、或いはトレイルブレイザーが駆け付けるのを待っていてほしい」
煌びやかで不真面目さすら感じさせる姿とは裏腹に、思いのほかしっかりとした言葉遣いで2人を諭すリト警視。2人が安堵の笑みを浮かべるのを見て、ライデンもその姿を見守るように腰に手を当てた。
「「ありがとうございます!!」」
2人は同時に頭を下げて感謝の言葉を述べる。警察に誘導される他の受験生達からの視線を一点に受けながら、2人はこの瞬間の喜びを分かち合ったのだった。
それから数十分経ち、気づけば時刻は9時手前を指していた。試験の時間がすぐそこまで近づいたせいか、ここを歩いていた受験生の姿はいつの間にか消え、残っていたのは後処理を行う警察とレハト達だけである。治療も終わり、そろそろ試験会場に行こうと腰を上げたその時、隣に立っていたロビンがどこか遠くを眺めていた事に気づく。
「おい、速く行くぞ」
「ごめん、ちょっと待ってて」
突然そう断ると、ロビンはどこかに向かって走って行った。その先にいたのは、後処理の手伝いをするライデンである。何事かと気になったレハトは、ロビンに気づかれないようにその後を付け、物陰に隠れた。
「ライデンさん!」
「ん?何だ?」
何か言いたげにもじもじとするロビンの姿を見て、ライデンは不思議そうな顔をした。しばしの躊躇いの後、深呼吸を一度挟んでロビンはゆっくりと口を開いた。
「初対面の人にこんな事言うのは変なんですけど、トレイルブレイザーの隊長であるあなただからこそ、どうしても聞いてほしい話があるんです」
ロビンはあからさまに緊張しつつも、自分の言葉を一つ一つ噛み締める様にして丁寧に言葉を紡いだ。その様子を見ていたレハトは、ロビンのどこか深刻そうなオーラを感知して思わず唾を飲み込む。
「実は僕、トレイルブレイザーになるのが怖いんです」
突然の告白だった。幼馴染のレハトでさえも、そんな弱音はロビンの口から一度も聞いたことが無かった。自分の本音を吐露し、弱気な姿勢で語るその少年の背中は、酷く頼りなく感じた。
「僕は生まれつき体が弱いですし、オブジェクトも大して性能がいいわけではありません。臆病でビビりで、クリーチャーなんて化け物たちと戦う度胸も勇気もありません。さっきの行動も勝手に手が動いただけで、僕はずっと委縮してしまっていました。なのに、人々を守る為に戦っていくだなんてとても…」
ロビンは自分の意思でトレイルブレイザーを志望したわけではない。3歳の時にレハトがトレイルブレイザーを志した際、ロビンも彼に憧れてそれに続いたというだけの理由だった。
トレイルブレイザーは人の為に命を賭けて戦う仕事。そんな事はとうの昔から解っていたはずなのに、いざ本物のクリーチャーと対峙すると怖くて仕方がなかった。死ぬのはまだ怖かった。
それに対して、この時レハトが抱いたのは微かな恐怖心であった。14年間共に同じ目標を立てて努力したにもかかわらず、ライデンの返答によっては、ずっと隣を歩いて来た親友がいなくなってしまうかもしれないという不安が、確かにレハトに芽生えていたのだ。
「なら、やらなきゃいいんじゃねぇか?」
「……っ!」
ライデンの口から出た言葉は、レハトが恐れていた言葉そのものだった。
「知っての通り、トレイルブレイザーは命がけの仕事だ。新人隊員の約5割が、入隊1年以内に大怪我をするか、或いは死亡するとも言われている。確かに高水準の生活やら収入やらが手に入るが、自分の命と天秤にかけられる程の物でもない。戦う力も度胸もないなら大人しく諦めた方がいい」
「……そう、ですか」
ロビンは顔を俯かせて、一言そう呟いた。後ろからではその少年の表情を見ることは出来なかった。
「———でもな」
英雄は言葉を続ける。
「誰だって、本当は自分が一番大切だ。自分の命を守る為に逃げたり、他の人を見捨てたりするのは必ずしも悪い事じゃない。でも、だからこそ目の前で誰かが助けを求めていた時、それに伴うリスクや危険を顧みずに行動出来る事が尊いんだ。
君達がその手に持っている武器|《オブジェクト》は、誰でも簡単に扱える強力な武器だ。人を守ることも出来るが、世の中にはこの力を悪用している人間も大勢いる。
君達には、誰かを助ける事の出来る心とそれを実行するのに十分な力がある。その証拠がさっきの結果だ。俺はどうか、君達が持つその心で何を護りたいのか、その力を何の為にふるうのかについて考えて欲しいんだ。その答えを見つけ、自分が正しいと思う道を選んでほしい。それが俺の望む君への…いや、君“達”への願いだ」
レハトはその言葉を聞き、再度ロビンの反応に注目した。少年の表情はやはり分からなかったが、さっきとは違って背筋をしっかりと伸ばして顔を上げていた。それだけで十分、その少年の感情が読み取れた。
「ボルティア総隊長!こちらの手伝いもお願いします!」
「ああ分かった!少し待っててくれ!」
向こうからライデンを呼ぶ警察の声が聞こえる。快活な口調で反応したライデンはロビンから視線逸らして、その後ろに見えた人影に声を掛けた。
「そこにいるんだろ、レハト君?」
「えっ…あ、はい!」
急に自分の名前を呼ばれて驚いたレハトは、戸惑いながらも元気よく返事をする。いつの間に見られていた事に気づいて顔を赤らめたロビンを横目に、ライデンはレハトにも質問を投げかけた。
「君もトレイルブレイザーになりたいんだろ?だったら教えてくれ。君はトレイルブレイザーになって何がしたい?」
瞬間、戸惑いの色が見えていたレハトの顔にギラついた笑みが現れた。そんなもの、とうの昔から決まっていると言わんばかりに、少年は力強い眼差しと共に口を開いた。
「全てを護りたいです」
「……全て?」
「はい。クリーチャーから人を守るだけじゃない。人も動物も、全ての命をあらゆる脅威から護る。そうやって、誰も悲しまない世界を創る。そんなトレイルブレイザーになります」
その言葉を聞いて、ライデンはニヤリと微笑んだ。
「随分と大きく出たな」
「絶対に実現出来ますよ。なんたって、俺がそう信じてますから」
レハトの決意には微塵の揺らぎもなかった。心から願うあまりにも大きすぎる夢を、彼は夢だとは思っていなかった。必ず成し遂げる。むしろそれが確定した未来かのようにさえ思わせる自信だった。そうした強い意志を、ライデンはその少年から感じ取ったのだ。
「ハッハッハ!なるほど、今まで色んな奴を見てきたが、君ほど強欲な奴は初めて見たな。…だが気に入った!君がその未来を叶えるのを楽しみにしておくよ」
「ありがとうございます!」
元気よく頭を下げながら感謝を述べるレハトを見て、ライデンは満足そうに笑った。
「さて、君達も試験があるんだろ?速く行った方がいい。また会おうな、ロビン君にレハト君!」
ライデンは2人に別れを告げると、仕事を手伝いに現場に戻って行った。遠くへ消えていく大き過ぎる背中を眺めていると、ロビンは晴れやかに笑った。
「よし、早く試験に行こう!間に合わなかったら笑い話にもならないから!」
「おう!絶対合格するぞ!」
2人はすぐそこに見えるトレイルブレイザーベースに向かって真っすぐ走り出した。その足取りはとても軽快で、ぶつかる風が心地良い。道沿いに生えた木々が2人を歓迎するように立ち並び、白い街灯に照らされた歩道は2人を導くように光の道を形作る。
これから先に待つ沢山の出逢いと冒険に心を躍らせながら、少年達は胸を張って前に進むのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
借金5億で異世界転移、よりによって金本位制の世界だった
夜明け一葉
ファンタジー
32歳の個人トレーダー・佐藤慧は、5年間の雪辱を賭けたトレードで5億円の借金を抱え、意識を失った。目覚めると、そこは剣と魔法が存在する見知らぬ世界だった。常識が通じない異世界で、金貨を見るだけで嘔吐する「金アレルギー」を抱えながら、若き冒険者リナと出会い、生き延びる術を探し始める。諦めることだけができなかった男が、新たな世界で再び立ち上がる異世界サバイバル譚。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
チート魔力のせいで世界の管理者に目を付けられましたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――
そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。
交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。
しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。
だがその力は、本来存在してはいけないものだった。
知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。
その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在――
「世界を束ねる管理者」
神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。
巻き込まれたくない。
戦いたくもない。
知里が望むのはただ一つ。
金を稼いで楽して生きること。
しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。
守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。
金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる
巻き込まれ系異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる