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第1章 獣の檻
第27話 急襲
しおりを挟む厳しかった寒さも少しずつ和らぎ、春の兆しが日一日と見え隠れするころ。その日の夜、翠蓮はいつも通り湯浴みや身支度を終えて、寝台に入ろうとしていた。そろそろ渓青が来る時刻である。
そのとき、居間の方からきぃとかすかに戸がきしむ音がして、梅の香りがふわりと漂った。中庭に咲いていた紅梅が、風にのってここまで匂いを運ばせたのだろうか。
「渓青?」
その名を呼んでから、翠蓮はふと不思議に思った。
いつもならば渓青は必ず「失礼いたします」と一声かけてから翠蓮の部屋に入ってきていた。渓青は外では従順で生真面目な宦官の仮面を絶対に外さない。渓青の本性が垣間見れるのは、寝台の帳の内だけなのだ。
居間から寝室へと続く扉が開かれたとき、ちらりと見えた衣は宦官が身に纏う淡緑の色彩だったので、翠蓮は安堵して上衣も羽織らず寝衣だけで扉の方へ体を向けた。
「渓青、どうしたのですか?」
声をかけた刹那、翠蓮の顔は凍りついたように強張った。渓青だと思い込んでいたその宦官――否、宦官の衣服だけを纏った男は、淡い雪灰色の髪とわずかに碧がかった瞳を持っていたのである。
「貴方は……っ!」
うろたえる翠蓮などお構いなしに、男――琰単は距離をつめると翠蓮の腰を抱いた。翠蓮は抗うが、腕の力は強く振りほどけない。
「……渓青っ! 渓青っ、来てください!」
翠蓮は渓青を大声で呼んだが、あたりは静まりかえっていて渓青が来る気配はない。いつもならば渓青はたいてい翠蓮のそばにいるか、渓青がすぐに来られない時は雑用係の少年のような宦官を一人つけてくれていて、彼が渓青を呼びに走る。
夜は少年宦官も自室に帰るため、ほとんど渓青は翠蓮の部屋の居間に置かれた長椅子で寝ている――という体で、その実は翠蓮の寝台で共寝していたわけだが――状態になっていた。
今回は、少年宦官が自室に戻り、渓青がやってくるまでのわずかな隙間を狙われた。ならば渓青はいくらもしないうちにやって来るだろう、という翠蓮のかすかな希望は琰単の言葉によって粉々に打ち砕かれた。
「いくら呼んでも無駄だ。お前はあの宦官に売られたのだからな」
「売ら、れた……?」
呆然とする翠蓮に、琰単は追い討ちをかけるように言った。
「なにを不思議がることがある。あやつはお前のせいで宦官にされた。その恨みを晴らすために、賄で我を手引きし、富を得ることのどこがおかしい」
「嘘、嘘です……」
「嘘なものか。こうして掖庭宮に我がいることがその証左であろう」
「そん、そんな……っ」
翠蓮の思考は完全に停止する。渓青が私を裏切るなんて、と呟いている間にも琰単は翠蓮を横抱きにし、寝台へと投げ入れた。
「まったくあの腐れた父がお前をかっ攫わなければ、こんな面倒な手段をとらずともすんだのに、忌々しい」
「い、やっ……」
翠蓮は抵抗するが、渓青に裏切られた衝撃でろくに体も動かず、なすすべもなく寝衣が剥ぎ取られていく。大きな手で胸が鷲掴みにされ、下帯はびりびりと音を立てて破り裂かれた。
「いやっ……嫌ぁ……っ」
とめどなく涙がこぼれ落ちるが、琰単はお構いなしに翠蓮の脚を割り開き、秘部へ無遠慮に指を突っこんできた。ぐちゃり、と音がして琰単は意外そうに眉を上げた。
「ほう……この前とは随分と勝手が違うではないか。胸を少しいじっただけで感じたか。女陰が洪水のようだぞ」
「う、嘘……っ」
「後宮の宦官どもに嬲られて男の味を覚えたか。この淫乱めが」
「そんな、こと……っ」
「我のものが待ちきれんで涙をこぼしておるな。愛いやつめ」
そう言うなり、琰単は前をくつろげると準備もなにもなしに翠蓮に怒張を突き入れた。あまりの衝撃に、翠蓮は背をしならせて叫ぶ。
「い、やああっ!」
「くっ……なん、だ……っ……この、締まり具合は……っ」
翠蓮は体をがくがくと震わせて、呆然としている。琰単は驚いたようにそれを見つめていたが、ややあってにやりと笑って言った。
「……挿れただけで達したのか……そんなに我のものが良かったか」
「い、いやっ……うご、か、ない、でっ……いま、いって……っあああ!」
「こんなに貪欲な体を放っておくわけがなかろうっ」
琰単は翠蓮の腰をがっしり掴むと、滅茶苦茶に揺さぶりはじめた。翠蓮の重たい胸が上下に激しく揺れ、汗の滴が弾け飛ぶ。
「やぁっ……だめ、だ、めっ……達した、ばか、りで……っ」
「ぐっ……食い、千切るっ……つもり、か……っ」
「いやぁっ! また、いくっ、いっちゃう……っ!」
「く、うっ……‼︎」
どくりどくりと琰単のものが脈打ち、翠蓮の中に熱いものが広がる。翠蓮は自分の腕で体を抱きしめ、震えを止めようとした。
「ひっ……ん、うっ……いく、の、とまんなっ……」
翠蓮が涙目で琰単を見つめると、琰単がごくりと唾を飲み込んだ。一度力を失ったものが翠蓮の中で再び力を取り戻す。
「い、やっ……うそ、またっ……」
「お前のような淫乱な体は、一度では満足できぬであろう?」
そう言うと琰単はぐるりと翠蓮の体の向きを変えさせて、今度は後ろからずぶりと貫いた。
「い、や、ああああっ!」
「ふっ……っく、お前はっ……どれだけ、好きもの、なのだ……っ」
ばつんばつん、と肉のぶつかる音に混じって、ぐちゃぐちゃという粘った音が絶え間なく寝台に響いた。翠蓮の秘裂からはとめどなく雫がこぼれ、琰単の太腿をも濡らす。
「こんなに溢れさせてはっ……せっかくの、我の精がっ……こぼれて、しまうでは、ないか……っ」
「あ、ああんっ! や、やだぁ……っ……いく、いくっ、いくぅっ!」
「……っく‼︎」
翠蓮はびくりびくりと体を震わせ、寝台に突っ伏した。琰単もしばらくは呼吸を荒げていたが、汗を拭うと衣服を整え、嘲るような声音で言った。
「……とんでもない淫乱だな、お前は。こんな体では我以外では満足できぬであろう。また来る故、それまでに今後の身の振り方を考えよ」
それだけを言い捨て、琰単は来た時と同じように宦官の衣を纏い出て行った。
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