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第7章 聖魔大戦編
第92話 聖戦
しおりを挟む「来たか!」
魔王レイは立ち上がりながら叫んだ。
その隣には目をつぶったままの市長と腕組みをしているエルガの姿があった。この広場には、精鋭しか連れてきていない。元々辺境の村に住んでいた者達と、エルガの腹心だけの総勢で100名にも満たない人数だ。だが、現魔王軍の総戦力と言って良い軍勢だった。
二人とも緊張の顔つきで、状況を聞いている。
「敵は勇者RENを先頭に2000。勇者の隣に魔術師タイプを二人、確認しております!」
「そうか……」
「妾と市長は勇者RENを迎え撃つ。エルガは予定通り、後方待機。そして……」
魔王レイは後ろに控えていた二人を見た。
「どうやら早速、僕たちの出番みたいだね!」
「フフッ、魔術師二人の相手、私達姉妹が請け負いましょう」
リズと霞の二人は全く緊張している様子もなく答えた。
ソウの強い推薦もあり、駆けつけてくれた二人。レイは強力な助っ人を頼もしくも思っていた。が、アルティメットハンターズのリーダー、リズも霞もソウを見る目が普通の目でない事はすぐに判った。リズは分かりやすい位だ。霞は外見上はさらっとしているがやはりソウに対する接し方が少し他の人とは違っている。
この戦争が終われば、二人とはライバルか……。やれやれ、旦那さまはモテ過ぎて困るのぅ。ま、妾はハーレムに入れてもらえればそれでいいのじゃが……。
複雑な気持ちを抑えつつ、今は指示を出さねばならない時なのだ。
「頼みます。リズ殿、霞殿は妾達と共に前線へ」
「では、行くぞ!」
「おおっ!」
皆の気持ちが一つになる。行こう、聖教国の野望を打ち砕く時が来たのだ。
***
以前、勇者RENと激突した平野まで魔王軍は進んだ。
地面は所々に抉れており、木々はなぎ倒されたまま、戦いの跡が色濃く残るこの場所に陣を取り、待つこと1時間。
勇者RENを先頭に侵略者達が到着する。
話し合いの余地はない。お互いの命運をかけた一戦がこれから始まるのだ。
「よいか! 皆の者! 勇者RENは妾と市長で相手をする。他の部隊をなんとしても後方へ逃がすでないぞ!」
「「「おおっっ!!」」」
わずか30名程度の魔王軍。それが、勇者を先頭に強力な魔術師二人、そして、精鋭の兵が2000だ。
数の上では圧倒的に少ない。だが、魔王に悲壮感はない。ここで決戦となることは予想出来ていたことなのだ。
遠くで勇者が剣を抜き、こちらへ向かって振り下ろした。その号令と共に大きな歓声が上がり、兵達が一斉に突撃してくる。
「全軍、突撃じゃ!」
魔王レイは手に持った杖を前方に振りかざした。魔王軍の精鋭達が走り出す。
「市長! 行くぞ!」
「はっ、先日の借り、返してみせましょうぞ!」
魔王レイは全力で先頭を走る勇者に向かって魔法で牽制を放った。
ファイヤーボールを立て続けに数発をお見舞いする。
「ぬるいぜっ!」
勇者は叫び声を上げると、火の玉を剣で切り裂き、走る勢いは全く衰えない。
瞬く間に勇者RENは目の前だ。ギラつく聖剣に魔力を纏わせ、聖剣から金色の光が放たれる。
「ぬりゃあああああっっっ!」
勇者からの挨拶代わりの一撃。それは強烈無比な上からの振り下ろしだ。魔力を帯びた剣はその刀身が何倍もの大きさに膨れ上がり、レイの頭上に襲いかかる。
「市長!」
「お任せ下され!」
市長は前に出ると、両腕にホーリーソードを出した。短く太い聖なる剣を交差させ、勇者の振り下ろしに真っ向からぶつかった。
市長の剣は見事に勇者の一撃を防ぎきることに成功した。
「ほぅ!」
勇者RENは感心の声を上げる。
市長の剣は攻撃の為の剣ではなかった。完全に相手の攻撃を防ぎきるための防御の剣だ。勇者の剣を通さないよう、分厚く創り出す。そのため、長くすることができず、短い。
「市長! でかした! これで、勇者REN、恐れるに足りずじゃ!」
レイは攻撃魔法を連続で放っていく。ファイヤーボールを多数放つと、勇者はそれを剣で切っていく。だが……、
「なっ!?」
勇者が驚きに目を見開いた。その頬には赤く線が走り、血がタラリと流れ落ちる。
「ファイアーボールの中に、ウィンドカッターを混ぜただと?」
勇者の顔がたちまち、赤く染まり、眉を寄せ、怒りに染まっていく。
「よくも、俺様の顔に傷をっ! 殺してやる、殺してやるぞぉ!!」
勇者はさらに魔力を剣に込め、振りかぶるのであった。
***
「あらあら? RENったら……、あんな大口を叩いていたくせに」
「いつも偉そーにしてるから、たまにはいい薬じゃん?」
チコとミウはRENが苦戦しているのを遠巻きに眺めているだけだった。
「助けには行かないのかい?」
ボクは声をかけてみた。が、チコは手のひらを上に、首を左右に振る。ミウはゲンナリした顔つきになった。
「あんな奴はほっとけばええんですよ。ウチらを戦力として数えておりませんでしょうし」
「そーだよ。なんであんな奴。やられちゃえばいいんだから!」
「フフフッ、助けにいくなら阻止しなければならない所でしたが……。手間が省けて助かりましたわ」
霞がボクの隣に並んだ。
「へぇ……、貴方たち……、なかなかやりそうな雰囲気じゃありませんこと?」
「私だってもう暴れたかったんだから、ちょーどいいじゃん?」
チコとミウは自分の闘う相手が現れたことに笑みをこぼした。
「ふーん、ボクはなんだかやる気でないけどね。キミ達……たいしたことなさそうだし」
「あら? 姉さん? じゃあ、二人とも譲ってくれるのかしら?」
「そ、それはダメだよ! ちゃんと彼に借りを作っておくんだから!」
「それは残念。じゃ、二人で相手しましょうか」
二人で会話していたら、チコとミウが体をフルフルと震わせていた。
「ウチらを前にして、随分と余裕に構えてくれましたなぁ?」
「アンタたちなんてすぐにケチョンケチョンなんだからね!」
ミウはロッドを両手に持ち、走り出してきた。
「はぁ……。じゃあ、やってやりますか」
ボクは刀をアイテム袋から取り出し、横薙ぎに振るう。
ミウのロッドと刀がぶつかり合い、火花を散らした。
「私のロッドは特別なんだから! そんな刀なんか!」
「へぇ……、ホントに固いや」
そのまま刀で数撃放つも、全てロッドで防がれる。
「なるほど、そのロッドの固さは大したモノだ。鍛冶師の人に会ってみたいものだね」
「余裕ぶれるのも今だけなんだからね!」
ミウはロッドに魔力を込め、ロッドをクロスさせるように構えるのだった。
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