191 / 219
第9章 勇者RENの冒険
第188話 ジークからの宣戦布告
しおりを挟む「ミリィの体が場外まで吹き飛んだーーーーーッッッ!!! 生命反応がありませんッ! 勝者、死の国代表ッ! ジーーークッ!」
会場は割れんばかりの歓声に包まれる。
溢れる興奮の渦に俺は嫌気を感じつつ、ミリィに近づいた。
完全に意識もなく、機能も停止しているのだろう。指先一つ動かないその体を目の前にすると、なんとも言えず、握りしめた拳が震えるのだった。
「次はいよいよ貴様の番だ。わかっておるな」
ジークが退場し、すれ違いざまに宣戦布告と取れる言葉を言い残す。そして奴は花道の奥へと去っていった。
俺はミリィの体をそっと抱き起こした。擬似体液がこれ以上漏れ出さないよう、ゆっくりと持ち上げていく。
先程まで激闘を繰り広げていたためか、その体はいまだに熱かった。
ズールも羽織っていたマントをミリィに被せ、衆目にさらされないよう気を使ってくれるのであった。
「さぁ、本日の試合がこれで終了し、明日は二回戦第三試合と第四試合が行われる予定となっております」
「バッジ VS ルシフェル、それから、ギガース VS ニュートの二試合ですね。これは楽しみです。いくつもの聖剣を保持し、防具までガッチリと固めているバッジに対し、最強天使ルシフェルですが、あの正体不明の神剣に、マリーンが使用していた魔導弓を奪いましたからね。相当に戦力が上がっているかと思いますよ!」
「なるほど……、バッジの鉄壁の防御にルシフェルの攻撃がどれほど通用するのか? これは楽しみですねぇ!」
「ギガース VS ニュートですが、ギガースのライバルであったバハルを打倒したニュートとの対戦。ニュートは不利な下馬評を覆し、勝ち上がっただけに、期待が高まりますッ! ニュートが再びの奇跡を起こすのか? それともギガースが亜神としての意地を見せるのか? 注目ですよ!」
「嫌でも期待が高まってしまいますね! それでは皆さん、また明日お会いしましょう!」
舞台は先程までの喧騒がウソのように静まり返っていくのだった。
***
「しかし、REN殿。その遺体は埋葬するつもりなのか?」
ズールが後ろから声をかけてくる。
俺が考えもなしにミリィの遺体を引き取ったので、気になったのだろう。
「いや……、ダメ元で俺の魔法が効かないか、試してみようと思っている」
「フゥム、その女は機械ゆえ、REN殿のリザレクションといえど、効かぬ可能性もある……」
「ご主人さまはそのようなメイドがお好みでしたか?」
イヴリスが子猫のように心配そうな顔で俺を見上げてくる。
「いや、そうではないんだ。ただ、戦士として、この者が死ぬには惜しいと思ってな……」
イヴリスはホッとしたような顔つきで胸に手を当てた。
「リザレクションッ!」
俺は取り敢えず魔法を行使してみる……が、ミリィの擬似体液が揺れるだけで反応を起こすことが出来なかった。
「……っ、この俺の魔力で足りないのか……、それともこの魔法では効かないのか……これでは分からんな……」
「私の魔力も合わせますわ! ご主人さま、もう一度お願いします」
「フム、微力ながら我の魔力も預けようぞ」
二人は手を繋ぎ、俺に魔力供給をする為、俺と三人で手を繋ぎ合わせた。
三人の中をグルグルと膨大な魔力が廻っていく。
「こ、これなら……、リザレクションッ!」
ミリィの傷口が僅かだが塞がっていく。だが、ジークの剣は深々とミリィを切り裂いており、傷口が完全に塞がる所までは再生が追いつかない。それよりも先に俺達の魔力が切れてしまうだろう。
「すまない、皆。だが、これでわかった。ミリィの体は半分にも満たないほどだが人間の細胞を使って作られているようだ。このまま術を行使していけば回復させられるかもしれん! もう少し……頑張ってくれッ!」
「し、しかし……このままでは……」
「我の魔力が……、もう枯渇しそうだ……」
二人の表情が曇り、息も荒くなっている。俺の魔力も限界が近づき、頭がフラフラとしてきた。
イヴリスとズールが膝を付き、苦しそうに息を荒くする。
残ったのは俺だけか……、やはり……無理……なのか……。
その時だった。突然、足元に青白い光の円が描かれた。
「こ、これは……?」
その円は大きな魔法陣を描く。そして……、
「こ……この魔力は……? 一体どこから来たというの?」
「むうぅっ? 力が湧き上がる……。これなら……」
イヴリスとズールがまた立ち上がった。
俺の中にも清廉な魔力が満ち溢れ、空に近かった魔力が元に戻っていくのを感じた。
「これでイケるッ! 頼むッ、この最後のチャンスに、生き返るんだッ! ミリィよ!」
辺りを青白い光が包み込み、ミリィの体の傷は塞がった。それと同時に呼吸が始まり、無事に魔法が成功したのだった。
「ふぅーーーーーッ、なんとかなったか……」
俺はあまりの疲れにその場に座り込んでしまった。しばらく動けそうにもない。
それはイヴリスとズールも同様だった。
「なんとか上手くいったわね……」
「あぁ……、しかし、先程の魔法陣は一体……?」
ズールが首を傾げる。
俺はその魔力に懐かしさを覚えていた。
まさか……、アイツがこの神の国に来ているとでもいうのか?
今は動くことが出来ず、確認する術はない。
この礼はいつか必ず……。
俺は姿を現さなかったその者へ感謝し、礼をすることを誓った。
RENの控室、その扉の前から足早に去っていく黒い鎧がやがて、黒い霧に飲まれるように消えていくのだった。
2
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
追放されたプログラマー、異世界をリブートせよ ~バグスキルで神システムを書き換える~
川合佑樹
ファンタジー
異世界に転生したプログラマーのリクは、神の適性判定で最弱の職業「ノービス」を与えられる。
地球でのプログラミング経験が活きず、仲間から「役立たず」と追放された彼は、戦闘中に不思議なコンソールを発見する。
それは世界の「ソースコード」を編集できるスキル「コードエディット」だった。
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる