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特別はいらない
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「……う、」
「んん……」
「陽、起きて」
自分の名前が呼ばれた気がする。幸せな夢を見ている邪魔をしないでと幼子のようにぐずっていると、肩を揺すられてようやく意識が覚醒した。
開けっ放しの窓の外はすっかり日が沈んで真っ暗。眠らない街は星が少なくて、それが残念だと思う。
ぱちぱちと瞬きを繰り返せば、優しい微笑みを浮かべた翠と目が合った。それが嬉しくて、体の奥から喜びの声が聞こえてくる。
だけど、駄目だ。謝らないと。
少し掠れた声で謝りながら目線を落とす。
「あ、寝ちゃっててすみません……」
「んーん、いいよ。でも風邪引くから気をつけて」
長く細い指が頬をするりと撫でる。
気持ちいい。まだはっきりと動いていない頭、再び目を閉じて何も考えずに擦り寄ってしまう。
警戒心のない子猫が甘えるような仕草に、翠は嬉しそうに口元を綻ばせた。
「かわいい……」
言うつもりはなかったのに、思わず漏れた。そんな風にぽつりと零された言葉は、寝起きの頭には届かない。
「……泊まってく?」
「……ううん」
「お願いって言ったら?」
「……ずるい」
「うん、ごめんね」
甘く蕩けるような声で囁かれると、思考まで溶かされてしまう。ぼんやりと目を開ければ、思ったよりも近くにいて心臓が跳ねた。
世界中のひとから愛されているその顔立ちに改めて惚れ惚れする。美人は飽きない、自分とは全く違う顔の造りに感心さえしてしまう。こんなに至近距離で見ても毛穴ひとつないなんて、綺麗なひとって凄い。
「……そんなに見つめられると恥ずかしいんだけど」
見られることが仕事だろうに。常に多くのひとの視線を集めているだろうに。僕なんかに見つめられただけで、耳を赤くして、口元を手で隠す翠がかわいいと思った。
「翠、」
「うん?」
「……なんでもない」
僕は、今、何を言おうとした?
ぼんやりとしていた頭からようやく霧が晴れた。冷静になって口を噤んだ僕の肩に翠が顔を埋める。
「……何言おうとしたの」
「…………秘密」
言えないよ。
貴方に贈る愛のメッセージなんて、持ち合わせてないのだから。
「んん……」
「陽、起きて」
自分の名前が呼ばれた気がする。幸せな夢を見ている邪魔をしないでと幼子のようにぐずっていると、肩を揺すられてようやく意識が覚醒した。
開けっ放しの窓の外はすっかり日が沈んで真っ暗。眠らない街は星が少なくて、それが残念だと思う。
ぱちぱちと瞬きを繰り返せば、優しい微笑みを浮かべた翠と目が合った。それが嬉しくて、体の奥から喜びの声が聞こえてくる。
だけど、駄目だ。謝らないと。
少し掠れた声で謝りながら目線を落とす。
「あ、寝ちゃっててすみません……」
「んーん、いいよ。でも風邪引くから気をつけて」
長く細い指が頬をするりと撫でる。
気持ちいい。まだはっきりと動いていない頭、再び目を閉じて何も考えずに擦り寄ってしまう。
警戒心のない子猫が甘えるような仕草に、翠は嬉しそうに口元を綻ばせた。
「かわいい……」
言うつもりはなかったのに、思わず漏れた。そんな風にぽつりと零された言葉は、寝起きの頭には届かない。
「……泊まってく?」
「……ううん」
「お願いって言ったら?」
「……ずるい」
「うん、ごめんね」
甘く蕩けるような声で囁かれると、思考まで溶かされてしまう。ぼんやりと目を開ければ、思ったよりも近くにいて心臓が跳ねた。
世界中のひとから愛されているその顔立ちに改めて惚れ惚れする。美人は飽きない、自分とは全く違う顔の造りに感心さえしてしまう。こんなに至近距離で見ても毛穴ひとつないなんて、綺麗なひとって凄い。
「……そんなに見つめられると恥ずかしいんだけど」
見られることが仕事だろうに。常に多くのひとの視線を集めているだろうに。僕なんかに見つめられただけで、耳を赤くして、口元を手で隠す翠がかわいいと思った。
「翠、」
「うん?」
「……なんでもない」
僕は、今、何を言おうとした?
ぼんやりとしていた頭からようやく霧が晴れた。冷静になって口を噤んだ僕の肩に翠が顔を埋める。
「……何言おうとしたの」
「…………秘密」
言えないよ。
貴方に贈る愛のメッセージなんて、持ち合わせてないのだから。
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