トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】

新羽梅衣

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天を仰ぐ


 もしも、僕の世界に先に足を踏み入れたのがsuiだったら――……。
 そんなたらればを繰り返し考える。

 もしも、僕がsuiのファンだったら――……。
 もしも、僕がsuiのリア恋勢だったら――……。

 今頃、世界は色を変えていただろうか。

 画面の中で歌って踊る姿にときめいて、遠くの世界から恋をしている方がよっぽど健全だ。だって、そこには純粋な想いしかない。

 叶いもしない、どろどろの醜い恋心を密かに抱いて、人畜無害な顔を貼り付けたベータが隣にいるなんて知ったら、翠は幻滅するに決まっている。

 オメガでも、女でもない。
 ただの平凡な男に彼が友達以上の感情を持つことはない。

 今は、ただ、物珍しくて構っているだけ。それが分かっているのに、翠の一挙一動に乱される自分が馬鹿馬鹿しい。

 だけど、心は素直だ。
 優しくされれば心が弾むし、会えないときは寂しさが募る。

 けれど、日に日に大きくなる「それ」をどれほど大切にしていたって、いつかきっと終わりが来る。

 決定権を持つ翠が「もう、いらない」と言えば、僕はそれを黙って受け入れるしかない。

 そんな未来が来ることを恐れているから。
 一分一秒でも遅く、その時が来てほしいから。

 僕は今日も感情を瞳に滲ませないように、何もかもを排除して、彼の望むままに生きるしかない。

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