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新しい風
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しおりを挟む面食いなひとなんてそこら中にいる。そう考えたら別に恥ずかしいことじゃないはずなのに何だろう、このむず痒いかんじは。
じわじわと頬に熱が集まってくるのが分かって、それにまた羞恥心がこみ上げる。
「きっと、第二の東雲律が現れる。そんな予感がするんだ」
「…………」
「どう? 興奮しない?」
「すっごく興奮します」
想像しただけでぶわっと鳥肌が立つ。
僕にとって東雲律は唯一無二でそれはこれからも変わらないことだけど、誰かにとっての神さまが誕生する瞬間を目の当たりにできると思えば、堪らなく興奮した。
「吉良くんなら分かってくれると思ってた。だから君に出演してほしかったんだ」
「でも、僕は審査できるような立場じゃないです」
「東雲くんをずっと追いかけてきた君にアイドルを見る目がないとは言わせないよ」
「…………」
そう言われれば、何も返す言葉がない。
今田島さんを否定するということは、即ち律と僕らの九年間を否定するということ。そんなの、口が裂けても言えるはずなかった。
きゅっと口を噤んで黙り込んだ僕の反応を見て、困ったように眉を下げた田島さんが譲歩する。
「うーん、そうだなぁ……。審査員が駄目そうなら、ひとつのグループのメンターとして参加してみない?」
「メンター……?」
「所謂指導者的な立ち位置のことですね。でも、どうして吉良なんですか?」
理解の追いつかない僕に代わって、仕事のできるマネージャー・楠木さんが間に入る。
楠木さんの疑問も尤も、今の僕に指導できるようなアイドルスキルなんて全く無い。それなら律に頼む方がいいってことは火を見るより明らかだ。
「確かに吉良くんはアイドルとしてまだまだひよっこかもしれない。だけどこれはただのアイドルオーディションじゃなくて、JTOだから。スキルどうこうはまた別の話、ファイナル優勝者としてオーディション参加者に寄り添ってあげてほしいんだ」
「つまり、メンタルコーチのようなかんじですかね?」
「そうですね。興味があれば、グループのプロデューサー的な立ち位置もやってもらって構わないけど」
アイドルグループをプロデュースする。
それはきっと、アイドルオタクなら一度は夢見たことがある憧れの仕事。
きらりと瞳を瞬かせた僕を敏腕プロデューサーは見逃さない。
「吉良くん、君だけのアイドルグループをプロデュースしてみたくない?」
「……ッ」
思わず息を飲んだ。
なんて殺し文句。
田島さんは僕の興味を引くのが上手すぎる。
「紡の作るアイドルグループか、興味あるなぁ」
「JTO出身者の紡さんが手掛けるっていうのも面白いですね」
律も楠木さんも、当事者となる僕よりずっと意欲的だ。
それに田島さんは僕がこの世界に入るきっかけをくれたひと。僕が参加することで少しは恩返しになるだろうか。
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