神さまに捧ぐ歌 〜推しからの溺愛は地雷です〜【完】

新羽梅衣

文字の大きさ
103 / 114
貴方に宛てたラブレター

しおりを挟む

 その人を初めて見たときのことを、昨日のことのように今でも鮮明に思い出せる。周りから音がなくなって、聞こえるのは彼の紡ぎ出す音だけ。

 一瞬で心を奪われた。彼以外、この世界には存在していないんじゃないかと錯覚するほど、その瞬間の僕は東雲律しか見えていなかった。

 誰もが見蕩れる美しい容姿、一度聴いたら忘れられない歌声、人の心を惹き付けてしまう圧倒的オーラ……。

 歳を重ねるごとに、その輝きは増していく。数え切れないほどの魅力で溢れた、生まれながらに持っているひと。

 姿は見えるはずなのに、遙か遠い向こう側の存在。同じ人間のはずなのに、雲泥の差がある。彼にはあって、僕には無いものがたくさんある。

 だけどないものねだりをしようとも思わなかった。望むだけ無駄だと理解していた僕は、根っからの敗北者。

 神さまがもし本当にいるならば、彼のことをいうのだと思った。

 手を伸ばしても届かない孤高の存在。彼の世界はどんな風に彩られているのだろう。

 吉良紡という存在を認知しないでほしいけれど、東雲律の一部になりたい。日毎に、彼へ抱く感情はどんどん大きくなって、どろどろと重たいものになっていく。


 ――いつか、貴方と一緒に歌えたら。
 それは、僕のようなちっぽけな人間が口に出すのも烏滸がましい夢。

 だけど、心に小さな灯火がついてしまったんだ。叶うはずのない夢を抱いてしまったんだ。

 彼の隣に立つということ。彼と想い合うこと。
 あの頃は想像したことさえなかった現実が、今はある。

 僕だって、夢に手を伸ばせるんじゃないかって。ほんの少しだけ希望を見い出せるところまで来れたんだ。

 幾度となく背中を押してもらった。
 卑下してばかりだった自分に少し自信を持てるようになった。
 たくさんの愛情をもらった。
 その存在の大きさに何度救われたことだろう。
 
 これまでの僕とは違う。決心したんだ。
 だって、一番の味方がこんな僕を信じてくれている。
 
 だから、今度は僕が彼を孤独から守ってあげたい。隣に並んで、一緒に歩んでいきたい。

 夢は叶えるためにあるのだから、最初から諦めるなんてもったいない。自分の手で未来を掴むんだ。運命も夢も、僕自身の力で手繰り寄せる。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

バーベキュー合コンに雑用係で呼ばれた平凡が一番人気のイケメンにお持ち帰りされる話

ゆなな
BL
Xに掲載していたものに加筆修正したものになります。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

男同士で番だなんてあってたまるかよ

だいたい石田
BL
石堂徹は、大学の授業中に居眠りをしていた。目覚めたら見知らぬ場所で、隣に寝ていた男にキスをされる。茫然とする徹に男は告げる。「お前は俺の番だ。」と。 ――男同士で番だなんてあってたまるかよ!!! ※R描写がメインのお話となります。 この作品は、ムーンライト、ピクシブにて別HNにて投稿しています。 毎日21時に更新されます。8話で完結します。 2019年12月18日追記 カテゴリを「恋愛」から「BL」に変更いたしました。 カテゴリを間違えてすみませんでした。 ご指摘ありがとうございました。

元アイドルは現役アイドルに愛される

BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。 罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。 ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。 メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。 『奏多、会いたかった』 『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』 やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。

処理中です...