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貴方に宛てたラブレター
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しおりを挟むありがとう、僕を見つけてくれて。
ありがとう、僕を好きになってくれて。
吉良紡という人生において、これまでもこれから先も東雲律の存在は欠かすことができない。
アイドルになってくれて、僕と出会ってくれてありがとう。
どうか、この想いが届きますように。
これからも貴方の隣にいられますように。
そして、いついかなる時も貴方が幸せでありますように。
そんな願いを込めて歌い終えた僕を待っていたのは、拍手喝采のスタンディングオベーション。観客席には泣いているひともいて、僕の胸もじーんと熱くなった。
「いや~、前回よりもパワーアップした歌声に聞き惚れてしまいました。どうでしたか、松来さん」
「透明感のある歌声は清涼感があって、澄み渡る青空を感じました。ご自身で作られた曲もストレートな歌詞が沁みて、よかったです」
「前も絶賛されてましたもんね」
「えぇ、今回は更に力強さも加わって、進化した吉良くんを見せつけられました。すごく素敵でした」
「ありがとうございます」
ぺこりとお辞儀すれば、音楽プロデューサーの松来さんは満面の笑みで頷いた。
「さて、東雲さん。あなたに聞かないわけにはいかないですね」
そう司会者が口にすれば、観客席からキャーと悲鳴が上がる。どこに行っても若い女の子たちに人気だなぁと感心してしまう。
「最高でした、その一言に尽きます。彼にこれほど想われている相手に酷く嫉妬してしまいそうなほど、すごく情熱的なラブレターでしたね」
「吉良くんは東雲さんのファンだって言ってましたもんね、油断してると取られちゃいますよ」
「うーん、それは困りますね」
司会者の冗談に律も笑いながら答える。
嗚呼、なんだか嫌な予感がする。律が意外と悪戯好きで、愉快犯なことを知っているからこそ、ここではこれ以上口を開くなとすら思ってしまう。
芸能人をしている律には全く慣れていないというのもある。これ以上律が何かを言う前にさっさと終わらせてほしかったけれど、そうは問屋が卸さない。
「紡」
「ッ、」
「浮気は許さないよ」
いつものように名前を呼ばれて息を飲んだ。当然のように、先程よりも大きな悲鳴が上がる。司会者はヒューと茶化すだけで、役に立ちそうもない。
こちらをまっすぐに見つめて言ってのけた東雲律は、一体何を考えているのか。僕ははくはくと何も言葉が出せずに、顔を真っ赤に染め上げてパニックになることしかできなかった。
「吉良くん、……吉良くん? ちょっと、東雲さん、やりすぎですよ」
「あはは、すみません。かわいくて、つい。歌ってるときとのギャップもいいんですよね、彼」
もう考えることすら放棄してしまいたい。楽しそうに笑って謝る律は一切悪びれてなくて、僕だけが恥をかいていることを恨めしく思う。
「変わらず東雲さんのお気に入りなんですね」
「はい。だから、俺はただ紡を信じてます」
「相思相愛というところでしょうか、素敵な関係ですね~」
ここで一度カットがかかって、僕はステージを後にした。最早どんな顔をしていたのかは分からないし、どうやって楽屋に戻ったかすら記憶にない。
テレビで放送されるときには、さすがに放送事故だと判断した田島さんのお陰で問題のシーンはカットされることになったのだけど、なんだかよく分からない感情のまま僕は結果を待つことになった。
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