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第2章

第12話 お嬢様の執事は意地悪

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形を確かめるように、太股をなでる、大きな手。

ゆっくりと上昇してきた手は、小ぶりな胸を直接包みこんだ。
 
 
「可愛らしい胸ですね。もっと、啼かせてしまいたくなる」

「ひあ……っん」
 

爪で引っかくように、突起を弾く。
身体に電気が走ったように足先を仰け反らせ、瞳が大きく見開いた。

 
視界が大きく揺れる。
蜃気楼のように景色がぼやけ、追って頬を濡らす感触が伝わる。
 

ポロポロと、大粒の涙がこぼれた。
 

 
「泣いても、男は興奮するだけですよ。――…余計、虐めたくなる」
 
 
もてあそぶように動く指先。
くすぐったさに、身体が身震いを起こす。
 

否――…
身体が勝手に、ネオの行動に反応する。
 
 
「ネ、オ……っ、やめ、て」
 

懇願するシアを、一瞥するように見下す。

その瞳を見るのが怖い……。


涙の流れる顔を、両手でおおった。
 
お願い、お願い、と何度も口にする。
 

いつも意地悪で、そばにいるネオ。
なにをするにも一緒で、いつも怒られてばっかりで…。
 
目の前にいるネオは、《男》の顔をしている。


……こんなネオ、知らない。
 
 

大きなため息が耳に届く。
と同時に、圧しかかっていたネオの身体が離れる。

軽くなった身体が、少しだけ寒い……。
 
 

「シアお嬢様は、優秀なようですね」

低くうなるように呟く。
この状況で、優秀と口にする。

「……なに、が?」
 

潤む瞳がネオを見つめる。
わずかに痙攣する体に指を這わせると、再びぴくりと仰け反る。
 

それをみて、くくく、と笑う。

「男を知らなくても、男心を煽る技術はある。――…淫乱な方だ」

「いっ、んら……っ!?」


自分の肩を抱きしめながら、必死に怒りを堪える。
ここで怒鳴ったって、ネオに勝てるはずがない。
 
あらわになった肌が熱を持ち、震えが止まらない。
 
 
ネオは、くすりと笑った。
 
「それだけ反応ができるのなら、教えがいがありそうですね」

「……ネオ」
 
呟いた言葉が、小さく床へと向けられた。
 

なんで、そんなことをいうの……?


疑問に思いながらも、シアはきつく、前を見据えた。
 
 
寂しそうに見えたのは、暗闇のせい……。

そう、自分にいい聞かせて。
 


きゅっと唇を噛みしめ、眉をひそませた。


「出てって」

自分の肩を守りながら、不安に耐える。


いくらネオが好きでも、こんな関係は求めていない。
ネオの心が欲しいだけなのに……。
 


 
「仰せのままに」


淡々とした口調でそう口にすると、ネオは部屋をあとにした……。
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