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遠藤を待ちながら
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タランティーノみたいな夜になるはずだった。モロコミルクバーみたいなバーで、僕は夜の王様に。
でも現実は道玄坂の糞地獄で、まずいビールを飲みながらドープに決めてるってわけ。
帰りたいわけじゃない。地元のやつは馬鹿すぎるし、丸の内はこの哀れな語り部と住む世界が違いすぎるんだ。
11ptのゴシック体をMeiryo UIに直したり、エクセルで財務モデルを組んだりするのは定時内で充分だってわけ。
遠藤は良いやつだ。遠藤とは久しぶりに会った。健康的な太陽の日差しと、ただ余るだけの自由な時間。退屈は、いつだって隣で座ってた。
遠藤の隣にもきっとそう。
なんだってことない毎日を、不可思議wonderboyに同調して、素敵な思い出のモノクロームに。
そんな思い出の片隅に遠藤はいたはずなんだ。
はっと目が覚めると、コンプトンの片田舎で、ドクタードレの仲間たちとゲットーからの脱出をたくらんでいる。
白髪の拳銃って誰が書いたんだっけ?
永久も半ばを過ぎたとき、ぼくはとりとめもないことを思う。
30分がたった。はっとして、グッと来て、ぱっとめざめる恋だから。きっと今夜はブギーバック。
まだ遠藤は来ないみたいだ。
長すぎる45分間を、ぼっくはすっかり待ちぼうけだ。咳をしてもひとり。
もしも、ぼくが映画監督で
このシーンを撮影しているなら、
きっとディレクターにカットされ、デジタルの虚空に消え去るだろう。
物語にするには、ちょっと退屈すぎるからね。
でと、人生はそんなことの繰り返しなんだ。
きっとそう。
まだ遠藤は来ない。
仕方ないがらもう少し遠藤について、触れてみよう。
彼は男だ。
それしか思い付かないくらい彼に関する思い出は少ない。
ぼくはなんで遠藤を待ってるんだろう。
わからないくらい夜は早い。
きっともうすぐ朝が来るだろう。
日が沈む前と登るとき。ぼくは優しい音楽が聞きたくなる。
チルい音楽って知ってるか?
ぼくの後輩に良く似た男がカウンターで酒を頼んでる。たったそれだけのことに強い印象を持つ。暇なんだな。
きっとそう。
急に遠藤が戻ってこない気がした。
彼は地下室の闇にのまれて、暗い底で窒息してる。軟体動物に包まれて、すやすや眠る気分はどうだい。どんな気がする?転がり続ける石のような気分はどんな気がする?
答えはいつまでも風の中。風に舞っているのさ。
そうじゃない。待っているのはぼくの方だった。そんなこともわからないなんて、きっと僕は酔っているのかな。
音楽が変わった。何をしているのかわからないまま。
湖に浮かんだ月をとろうとして、死んだ李白よように。今夜は酒に溺れたい。
結局、遠藤はちっとも来ない。
僕はドアをそっと閉める。
一度閉めたドアは簡単には開かない。平気で知らない他人に話しかける勇気を僕はまだ知らない。
くだらないゲーム。ぼくはこのゲームを遊び続ける。いつまで遊んでりゃいいのか。
ぼくはバロウズ。頭の中のジャンキー。裸のランチを知らない人は、おうちに帰ってパパに聞いてみよう。ママには内緒だぞ。
さぁ、ホラーショーもそろそろ幕が降りる。強者どもの夢のあと。外のカーテンに包まれて、ぼくはきっと風邪を引く。アマレットとサザンカンフォートがキスをして、シシリア島の恋のあと。
まだドアはしまったままだ。見果てぬ夢を見たあとは、暖かい毛布にくるまって、虹色うさぎの夢を見る。胡蝶が見る夢の夢。あと何周したら、ぼくは君に出会えるんだろう。
書を捨てよ街へ出よ。この糞だらけの現実で、ストレートエッジを聞かせたって。
どうせ一度の人生じゃないか。人生は、男おいどん。なくな男だろう。男はくやしさを糧に成長するってね。ぼくもそう思うよ。
そろそろタイムアップだ。
遠藤はまだ来ない。
やっぱりこの街が嫌いだ。くだらないタンつぼ。SARUが支配しているのは、いつだったけ。
きっとぼくのことを知ってる人が、遠藤以外の赤の他人が、ぼくのことを通りすぎたとき、ぼくはとっても悲しい気分になる。
感情のリフレインが、こぼれ落ちたメロディーが、きっとそれは琥珀みたいに。
ナイフみたいな感情が、そっとぼくを通りすぎていく。
遠藤はきっと来ない。
あと、一時間だけ。そうたった一時間。
ぼくは遠藤を待ってみる。
山守さんよ、まだ弾は残っちょりますけん。
遠い異国のはてのはて、あの人が残してきた子供が、母を求めて涙を流す。
そんなことを思ったところで別になにもならいけどね。
きっとこれは、オープニング。
もしかしたら、第9章。いや、たぶん42章。人類、宇宙、すべての答え。
もうヒッチハイクはこりごりだから、ケバブ屋の店主と友達になって、
ぼくは遠藤を待ち続ける。
何を待っているのだろう。そんなもん生まれたときから、わかってる気がする。
閉店時間を過ぎたバーに、入ろうとする人がいる。
観念したように、ぼくはそっとドアを開ける。
遠藤を待ちながら。
でも現実は道玄坂の糞地獄で、まずいビールを飲みながらドープに決めてるってわけ。
帰りたいわけじゃない。地元のやつは馬鹿すぎるし、丸の内はこの哀れな語り部と住む世界が違いすぎるんだ。
11ptのゴシック体をMeiryo UIに直したり、エクセルで財務モデルを組んだりするのは定時内で充分だってわけ。
遠藤は良いやつだ。遠藤とは久しぶりに会った。健康的な太陽の日差しと、ただ余るだけの自由な時間。退屈は、いつだって隣で座ってた。
遠藤の隣にもきっとそう。
なんだってことない毎日を、不可思議wonderboyに同調して、素敵な思い出のモノクロームに。
そんな思い出の片隅に遠藤はいたはずなんだ。
はっと目が覚めると、コンプトンの片田舎で、ドクタードレの仲間たちとゲットーからの脱出をたくらんでいる。
白髪の拳銃って誰が書いたんだっけ?
永久も半ばを過ぎたとき、ぼくはとりとめもないことを思う。
30分がたった。はっとして、グッと来て、ぱっとめざめる恋だから。きっと今夜はブギーバック。
まだ遠藤は来ないみたいだ。
長すぎる45分間を、ぼっくはすっかり待ちぼうけだ。咳をしてもひとり。
もしも、ぼくが映画監督で
このシーンを撮影しているなら、
きっとディレクターにカットされ、デジタルの虚空に消え去るだろう。
物語にするには、ちょっと退屈すぎるからね。
でと、人生はそんなことの繰り返しなんだ。
きっとそう。
まだ遠藤は来ない。
仕方ないがらもう少し遠藤について、触れてみよう。
彼は男だ。
それしか思い付かないくらい彼に関する思い出は少ない。
ぼくはなんで遠藤を待ってるんだろう。
わからないくらい夜は早い。
きっともうすぐ朝が来るだろう。
日が沈む前と登るとき。ぼくは優しい音楽が聞きたくなる。
チルい音楽って知ってるか?
ぼくの後輩に良く似た男がカウンターで酒を頼んでる。たったそれだけのことに強い印象を持つ。暇なんだな。
きっとそう。
急に遠藤が戻ってこない気がした。
彼は地下室の闇にのまれて、暗い底で窒息してる。軟体動物に包まれて、すやすや眠る気分はどうだい。どんな気がする?転がり続ける石のような気分はどんな気がする?
答えはいつまでも風の中。風に舞っているのさ。
そうじゃない。待っているのはぼくの方だった。そんなこともわからないなんて、きっと僕は酔っているのかな。
音楽が変わった。何をしているのかわからないまま。
湖に浮かんだ月をとろうとして、死んだ李白よように。今夜は酒に溺れたい。
結局、遠藤はちっとも来ない。
僕はドアをそっと閉める。
一度閉めたドアは簡単には開かない。平気で知らない他人に話しかける勇気を僕はまだ知らない。
くだらないゲーム。ぼくはこのゲームを遊び続ける。いつまで遊んでりゃいいのか。
ぼくはバロウズ。頭の中のジャンキー。裸のランチを知らない人は、おうちに帰ってパパに聞いてみよう。ママには内緒だぞ。
さぁ、ホラーショーもそろそろ幕が降りる。強者どもの夢のあと。外のカーテンに包まれて、ぼくはきっと風邪を引く。アマレットとサザンカンフォートがキスをして、シシリア島の恋のあと。
まだドアはしまったままだ。見果てぬ夢を見たあとは、暖かい毛布にくるまって、虹色うさぎの夢を見る。胡蝶が見る夢の夢。あと何周したら、ぼくは君に出会えるんだろう。
書を捨てよ街へ出よ。この糞だらけの現実で、ストレートエッジを聞かせたって。
どうせ一度の人生じゃないか。人生は、男おいどん。なくな男だろう。男はくやしさを糧に成長するってね。ぼくもそう思うよ。
そろそろタイムアップだ。
遠藤はまだ来ない。
やっぱりこの街が嫌いだ。くだらないタンつぼ。SARUが支配しているのは、いつだったけ。
きっとぼくのことを知ってる人が、遠藤以外の赤の他人が、ぼくのことを通りすぎたとき、ぼくはとっても悲しい気分になる。
感情のリフレインが、こぼれ落ちたメロディーが、きっとそれは琥珀みたいに。
ナイフみたいな感情が、そっとぼくを通りすぎていく。
遠藤はきっと来ない。
あと、一時間だけ。そうたった一時間。
ぼくは遠藤を待ってみる。
山守さんよ、まだ弾は残っちょりますけん。
遠い異国のはてのはて、あの人が残してきた子供が、母を求めて涙を流す。
そんなことを思ったところで別になにもならいけどね。
きっとこれは、オープニング。
もしかしたら、第9章。いや、たぶん42章。人類、宇宙、すべての答え。
もうヒッチハイクはこりごりだから、ケバブ屋の店主と友達になって、
ぼくは遠藤を待ち続ける。
何を待っているのだろう。そんなもん生まれたときから、わかってる気がする。
閉店時間を過ぎたバーに、入ろうとする人がいる。
観念したように、ぼくはそっとドアを開ける。
遠藤を待ちながら。
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