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2章

閑話 ブレイドの居ないSクラス

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時は大分遡り、ブレイドの転送ワープ前。
「おい、大丈夫か?」
「【彼の者を我が望みの場所へ飛ばし給え、転送ワープ】」
ブレイドが声を掛けながら近づいて行くとブルレックが最後の悪あがきか魔法を放った。
そして、不覚にも油断していたのかブレイドはまともに魔法を食らってしまった。
「「ブレイド!」」
私とグラーフェは殆ど同時にブレイドの名を叫んでいた。
そして、駆けつけようとしたがブレイドの魔法の影響かある範囲から出られないようになっているようだ。
だが、グラーフェは尚も諦めずに効果の範囲外に出ようとしている。
「おい、グラーフェ、私達のいる範囲はブレイドの魔法で何者をも通さないようになっているようだ。自然に効果が切れるのを待つかブレイドが発動を停止するかの2つしか方法はない。諦めろ。」
「し、しかし王子!このままではブレイドが!」
「今更私達が行ったところで何になる。」
「もういいです!」
私の言葉を聞こうとしないグラーフェはまたブレイドの方へと走って行く。

すると、魔法の効果が切れ、それと同時にブレイドの姿が消えた。
「何っ!?ブレイド!どこへ行った!」
私が呼んでも返事はない。ということはどこか遠くへ飛ばされたのだろうか。
「おい、魔族!ブレイドをどこへやったんだ!!」
私が問い詰める前に既にグラーフェが原因と思われる魔族を問い詰めていた。
「俺の魔法で出来る限り遠くへと飛ばしたのだよ。」
「だから、それがどこが聞いてるんだ!」
「知らない。どこまで飛ばせるかは俺でも分からない。この国の端、他国、海の上、もしくは他の大陸かもしれない。」
なんといい加減なことを言う魔族だ。
どこへ飛んで行ったか分からないだと?
「それでは邪魔者もいなくなりましたので帰りましょうか、姫様。…姫様?どこにいらっしゃるのですか?」
魔族の姫もどこかへ行ってしまったようだ。
「ブレイドといるのではないか?」
私は思っていたことをそのまま言ってやった。
「いや、まさか、そんなはずは…皇帝様になんと説明したら良いか……」
「それを考えるのはこの国から出てから考えるべきではないか?皆、こいつを捕まえろ!」
捕まえてギルドに突き出してやろう。
「【彼の者を我が望みの場所へ飛ばし給え、転送ワープ】」
ケンプターの手が魔族に触れる直前に今度は魔族の姿が消えた。
「………逃げられたか。」
「申し訳ございません、王子殿下。」
私が悔しがっているとケンプターが声を掛けてきた。
「いや、大丈夫だ。ギルドへ報告に行こう。」
その後、私達はギルドに魔族の出現とブレイドの消失について簡単に報告をし、解散となった。

***

翌日、ラミッシュ王立学園1-S教室。
「昨日、ヴィトゲンシュタインが魔族の魔法によって行方不明となった。皆、不安はあると思うがあいつなら恐らく無事だろう。信じて待っていてやってくれ。」
授業を始める前にアルベリヒ先生が仰った。

あの場にいなかったハイディングスフェルトとゲストヴィッツは今日ブレイドがいない理由を知り驚いていた。
だが、私達もこの目で見たとは言え未だに信じがたい。
あのブレイドが魔法で後れを取るとは。

その日は皆授業に集中できず話が全く入ってこなかった。
また、この調子で狩りに行くと怪我では済まない可能性もあるため中止となった。

***

ブレイドが消えて1週間となった。
この日は朝からずっと大雨が降っていた。
「王子殿下、ブレイドの目撃情報は?」
グラーフェが訪ねてきたが、私は黙って首を振るだけだった。
ブレイドが消えてからというものSクラス全体の雰囲気が良くない。
私は、魔法の制御が上手くいかなくなった。
グラーフェは常に上の空だ。
ミッターマイヤーはグラーフェを心配し授業をあまり聞けていない。
グラネルトは盛り上げようと空回りしている。
ハイディングスフェルトは他人と距離を取るようになった。
ゲストヴィッツは帰りが夜遅くになっているようだ。
オシュケナートは私とブレイドの絡みが見れない等と訳の分からないことを言うようになった。
ホルツァーはずっと剣を振るようになった。
ケンプターは剣筋に乱れが現れた。

ブレイド1人が消えただけでこの有様だ。
いったいどこで何をしているのだ。
「早く帰ってきてくれ。」
私の呟きは雨の音によって掻き消された。
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ありがとうございます。
ブレイドがエルフの里でジャンヌと楽しんでいる間にSクラスはこんな状況になってしまいました。
旅から帰ってきたらヴェル達に何と言われるのでしょうか。
ヴェルはイザベラが変なことを言い始めたと思っていますが元々ですよね。
これからもよろしくお願いします。
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