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1章 コスで生活

11話 僕の覚悟

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「すすす、すみません・・・とと登録を」


僕は今、勇気を出して男性の服装をしています、場所は冒険者ギルドで受付の女性に怖がられてるんです。
ギルドに冒険者がいない時間を酒場で聞いて、夜に覚悟をしてここに来ました、フードを深くかぶり、なるべく見えない様震えながらです、言葉もすごく小声でどもっています、女性はそれでも登録の紙をテーブルに出してくれました。


「あああ、ありがとう、ござます」

「いえ・・・ですがあなた、平気ですか?」


当然の質問です、でも僕は頷くだけで答える事は出来ません、もう怖くて仕方ないんです、受付の女性が何かしてくる訳じゃありません、でも怖い物は怖いんですよ。
それと言うのも、孤児院のみんなの為にお金が必要だからです。
お仕事を始めて3日が経ち、僕の所持金が尽きかけているからなんだ、当然ですよね、17人分の食料を買ってるんですから、使えば直ぐになくなります。
酒場の給金は月払いで銀貨3枚、ビールは1樽銅貨20枚と、とても安い特別価格です、どれも月払いで今は貰っていません、つまり来月にならないとお金は入ってきません、だから今ここにいるわけです。
酒場のマスターに頼めば前借りは出来ます、だけどその場凌ぎは良くありません。


「ででで、出来ましゅた」


記入を済ませ、紙を女性の方に押すと笑われました、噛んでしまったので仕方ないです、でも僕はそのしぐさを見てビクってします、待っている間も少しでも顔を隠そうとフードを引っ張ります、職員をチラチラ見て凄く挙動不審です。
女性の姿で登録出来ればどんなに良いか、水晶の性能が分からないので女性に性別が変わってもどうなるか分からない、なので決死の覚悟で男性になって来たんだ、これさえ乗り切れば2階に行って魔石が売れるんです。
震えて待っていると、受付の女性が身を乗り出し僕の顔を除いてきました、僕は直ぐに横を向き顔を隠しましたよ。


「ななな、なんでしょうか」

「すみません、書類はこれで良いんですけど、顔を見せてもらわないと水晶が認証できません、少しの間でいいので見せてくださいますか?」


その時来た人の顔を水晶が認識しないといけないみたいです、そうすると未完成のコスプレ中はダメだけど、女性になれるコスなら行けたかもです。
でも折り返して来る時間はありません、僕は怖いですけどフードを取りました、女性はビックリした顔で固まってますよ。
そんなに驚く事ないよね、僕だって怖いんだよ。


「あああ、あの・・・早く、して」

「そ、そうでしたねごめんなさい」


書類を水晶に吸い込ませると水晶が光りました、そしてカードが出てきたんです、何とか登録が終わったとホッと一息です、女性からカードを受け取り書いてある情報を見ると、ブロンズクラスと書かれていて、リュウと言う僕の名前が記載されてました。
他の情報は書かれてないんです、きっとラノベとかみたいにカード機能があるんだろうね、詳細は呼び出さないと見れないんだよ。


「登録は無事完了です、おめでとうございますリュウさん」

「は、はははい」


名前を呼ばれすごくキョドります、女性はニヤニヤして見て来るので、余計キョドってしまってしまったよ、どうしてそんなにニヤニヤしてるんですかと言いたいです、でも言える訳もなく怖がるだけです。


「ギルドの説明はお聞きになりますか?」

「いい、いえ・・・しし知ってるので良い、です」


冒険者は、ブロンズ・アイアン・スチール・ミスリル・プラチナ・ゴールド・オリハルコンとクラスがあります、試験を受けて上がるシステムです。
冒険者は報酬などの問題でケンカが絶えません、ギルドは仲介に入り問題を解決してくれるんですよ。
まぁケンカをしたら減点対象になり、試験が受けにくくなるそうです、とにかく僕は知ってるんです、早く2階に行きたいです。


「あなた可愛いわね、この後お姉さんと食事でもいかない?」

「い、いいいいえ、僕はそう言ったのは」

「良いじゃない、優しくするわよ?」


ごめんなさいと、フードをかぶって2階にそそくさと上がりました、階段の途中で受付を見ると女性が手を振ってくれてました、それを見て体をビクってさせて急いで上がります。
階段を上がった所で止まり深呼吸です。


「はぁ~怖かった、男だとほんとにダメだね、とても怖いよ・・・でもあと少し、がんばろ」


後はあの寝てる職員さんだと、少しホッとして売店に行きます、でもそこで僕は立ち止まり、今まで以上に怖くなります、カチカチと歯を振るわせ足もガクガクし始めたんです、寝ているはずの職員さんがムキムキの男性だったんですよ。
どうしよう逃げたい、僕の頭はそれでいっぱいです、でも今日お金に換金しないと、明日の朝食は買えても夕食は買えません、昼にコスプレをして換金に来るのも考えたけど、カードを男性で作ってしまったから認証がされないかもしれません、男性では冒険者たちの視線に耐えきれません、思い出しても無理だって即答できます。


「ここ、これは必要な事なんだ、みみみみんなの為なんだよ」


自分に言い聞かせ、僕はゆっくり1歩1歩売店に近づきます、ムキムキ職員さんは僕をジッと見て来てます、それがすごい威圧されてる様でもう帰りたいです、でも最初の食事を取ってる時のみんなの顔を思い出し、僕は前に進みます、もうあんな寂しい食事はさせたくないんだ。
しっかりした食事を嬉しそうに食べてるみんなを思い出し、僕は前に進みます。


「なんか用か?」

「あああ、あの・・・ここ、これを売り、たいんです」


魔石をテーブルに置き、僕は少し(3歩)下がります、職員はすごく怖い顔をして魔石と僕を見てきます、きっと僕が盗んだと思ってるんでしょう、そう思っていると職員さんが目をギラっとさせて睨んできました『来る!?』僕はそう思って更に下がり(3歩)体を震わせます。


「おい!」

「ははは、はい!」


ムキムキ職員さんの大声に、かなり離れてる僕も大きな声で返事をしました、もし身構えてなかったら気絶してるかもです、職員さんは手を出してきて何かを要求しているみたいです、僕は分からなくて震えるだけです。


「冒険者カードを寄こせ、じゃないと買い取れねぇだろ」

「そ、そそそうでした」


怒られると思っていたんですけど、少し優しく言ってくれました、近づいてカードを渡すと、名前とランクを見て僕を見返してきます、優しく言われても顔は怖いので1歩ずつ下がってしまいます。
また顔の確認をしなくちゃいけないかもと、僕はまた下がります、でもそんな事もなくカードはテーブルに置かれました、どうやら普通に返してくれるみたいです、その後は普通にお金を用意してくれてます。
見かけよりも優しい人なのかも、そう思ってジュロスさんとジューダスさんの顔が浮かべました。


「ほらよ、大銅貨330枚だ」


パンパンの袋をテーブルに置いてくれたので、僕は恐る恐る近づいて中身を鑑定します、330枚確かにあります。
ありがとうございますと、小さく声に出し頭を下げます、ムキムキ職員さんは手招きをしてきました、きっと聞こえないって言ってるんです、優しい人だって分かったのでゆっくり近づきます、そしてお礼をもう一度言ったんです。


「こっちは仕事だ気にするな、だがお礼は大事だな、また来いよ」

「は、はい!ありがとうございました」


元気に返事をして、僕は階段まで来ました、振り返るとムキムキ職員さんが手を振ってくれたんです、ここの人達は優しい人たちばかりだって手を振り替えします。
受付の女性にも失礼をしてしまいました、階段を降りて受付の女性がこっちを見ていたので、今度は僕の方から手を振ります、女性は笑顔で返してくれて嬉しかったです。
人はまだ怖いです、でもあのおふたりは僕に勇気をくれました、これならきっと換金には来れます、僕はフードを深くかぶり孤児院に急いで帰りました。
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