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4章 コスで救済

88話 大陸を渡って

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「ブルー見てよ、凄く大きな貝が変なの付けてるわ」


ウインダムについた僕たちは、浜辺の大きな貝たちを見て歓声を上げました、ザナルパープルちゃんが楽しそうっと、浜辺の観覧車を指差します、ブルーパイさんも綺麗ですねっと返事をして乗って見たそうです、ザナルサンサン様が後で行ってみるがいいっと言ってるけど、ザナルサンサン様も行きたそうなのは尻尾で分かります、ドラゴンの様な尻尾が嬉しそうに振られてるんです。
魔王様も仕事が終わったら行きましょうっと僕はお誘いしました、もちろん本体のエリナにも伝えて誘って貰うつもりだよ。


「余も行って良いのか?」

「当然ですよ魔王様、僕たちは友好関係を求めて来た使者ですからね」


娯楽を楽しんでもらうのは当然です、ザナルサンサン様も小さく「そうか」っと言ってニコリとします、尻尾は更に早くなり、出来るだけ早く遊びたいと思ってる様です。
僕たちは船を降り、ここの女王様が迎えてくれます、その隣には勇者であるエリナがピンクのドレスを纏って立っていました。
自分で言うのもなんだけど、エリナはとても綺麗です、やっぱりお姫様コスは最高だね。


「ようこそザナルサンサン殿、長旅お疲れ様です」


女王様が労いの言葉を伝え馬車での移動が始まります、早く挨拶を済ませて遊びたい、馬車の中の全員からそんな空気を感じましたね。
それでもお城で挨拶だけはしなくてはいけません、僕も魔族としているので、あまり遊戯の説明は出来ないのが心苦しいよ。
お城に着くと騎士たちが並んでいました、中には睨んでくる人もいたけど、ほとんどは笑顔で迎えてくれます、それでもあまり良い感じは覚えませんよ。


「何だか嫌な視線を感じる、チクノ先生どうしてなの?」


ザナルパープルちゃんの嫌そうな顔を見て、注意力が高いんだと思ったね、僕が感じた視線はほんとに少しだったんだ、才能と言う事でしょう。
種族が違うと起きる事だと教え気にしない様に伝えます、ブルーパイさんはかなり警戒したみたいで、いつでも動ける体勢です。
僕も注意する、そう視線で伝え僕たちはお城の挨拶を済ませます、そしてザナルパープルちゃんの待望の時間がやってきました、青い水着に着替え浜辺に立ちます。


「このミズギって服、凄い魔力を感じるわね」

「ちょっと恥ずかしいですね」


ブルーパイさんは露出が多くて恥ずかしいようで、ちょっと腕で隠しています、でも赤い水着はすごく似合っています、僕は魔法の糸を使っている事を説明し、滑り台の摩擦を減らす効果があると教えました。
早速滑って見ようと、ブルーパイさんの手を引っ張り走って行きましたよ、僕はそれを遠目で見守ります。
貝の開くタイミングで遠くに飛んだふたりは、とても良い笑顔でした、僕も滑ったんだけど、タイミングを変えて水面を走る様に飛んでみたんだよ、板もないのに出来たのは足に魔力を集めたからだね。


「すごい!アタシもやってみたいわチクノ先生」


初心者には難しいので、お店でサーフィンで使う板を借りて使いました、板は何度も水面をバウンドしていたけどうまく滑っていましたよ、遠目で魔族と見て離れていた人達にも興味を持つ物で、僕たちをマネて滑り始めたんだ、そして僕たちにも教えてと言ってくる子供もいたんだよ。
ブルーパイさんはその光景を見て不思議そうでした、休憩中に僕の隣に座りその遊びをしてる人達に視線を向けます。


「あなたはすごい人ですね、誰でも導いてしまう」

「そんな大層な事はしてませんよブルーパイさん、僕は自分が楽しいからやってるんです」


魔族の教育もそうです、争いは自分たちが持っていないからおきます、それなら与えればいい、上を見ればきりがありませんから、いつか奪い合いの戦いは起きるでしょう、でもそのブレーキは僕がしっかりと握っていれば良いんです。
各国に僕の分身はいます、みんなでバランスを整え平和にして行きますよ。


「それが凄いのです、誰でも出来る事ではない・・・あのチクノジュウゴ、もしよかったら」

「チクノ先生ー!今度はあっちに乗りましょう」


ブルーパイさんが何かを言いかけた時、ザナルパープルちゃんが僕を呼びました、指の先には観覧車があります、途中の貝柱焼きを買って3人で乗り込むと、水平線の先に魔族大陸が見えました。
船で7日の航海を思い出し、僕たちは船での出来事を話します、揺れる船の上で片足で立つ訓練や海の上を走る訓練、イカのモンスターを倒してゲソ焼きを食べて事等、楽しい思い出です。


「先生、訓練は楽しくなかったわ」

「そうかな?ザナルパープルさんは嬉しそうでしたよね」

「そ、それは・・・違う理由があったのです」


何故か急にモジモジしてるザナルパープルちゃんです、僕は変な事を聞いたかとブルーパイさんを見ます、でも何故かブルーパイさんも同じ様になっています、一体どうしたんでしょう。
変な空気を打ち消す為、僕は今夜のパーティーの話を振ります、ふたりにも綺麗なドレスを用意していると打ち明けたんだ、僕の作る衣装を知ってる二人だから期待の目をし始めます。


「沢山の布を重ねた衣装でね、十二単衣って言うんだよ」


良く分からない、ふたりの表情はそれを伝えてきます、本物はすごく重いからパーティーには向きません、でも大丈夫、魔法の糸とミスリルの糸を駆使して軽くて動きやすい衣装に仕上げました、魔族の伝統衣装にいつかしてみせます。
僕の力説の後、もう直ぐ観覧車が下に着くという所でブルーパイさんがさっきの話の続きを始めました、それは僕に結婚の申し込みです、魔族では番と言うそうです。


「ぶぶ、ブルーパイ!?」

「姫様申し訳ありません、姫様の気持ちも知っています、でも自分の気持ちが抑えられないのです、彼はそれだけの技量を見せた、もう我慢が出来ません」


ふたりで分かったような会話をしています、良く分からない僕は状況が掴めません、もしかしたら強い男を求めるとか言う物かもです。
だったら自分もとかザナルパープルちゃんも言い始め、一緒に番になりましょうとかブルーパイさんが言い出します、ふたりの思いは嬉しいけど、今の僕にはそれを受ける資格がありません、本体に意見を聞いてみないとです。
ふたりに時間を貰い、僕は本体に会いに行きました、そこには他にも分身がいましたよ。


「もしかしてさ、竹の15もなの?」

「っと言いますと・・・ここにいる全員が僕と同じ悩みで来てるんですか?」


お城の一室に20体の分身がいます、そして他にもいるけど代表で来ていると数名が言いました、本体は頭を抱えてしまっていますよ。
それでも思いを無下には出来ません、何とかしようと対策を聞きます、リュウからその解決策は既に完成していると言われ、小さな瓶を渡されました、それには人工の生命体が入っています、僕たちは思考を人工生命体に宿すように指示を受けました。


「完成するのはもう少し後だから、しばらくそれに思念を送っておいて、本体が出来たら知らせるよ」


全員で返事をして、僕たちは急いで解散しました、少しだけ抜け出してきたからです、部屋に戻ると丁度扉をノックされ、一瞬で武士の衣装に着替え扉を開けます。


「せ、先生も変わった衣装を着たんですね」

「ふたりの衣装に合わせたんです、これは男性用ですよ」


カッコいいと二人に言われたので、僕も二人を褒めました、お世辞ではなく凄く綺麗なのは本当です。
会場にはドレスやタキシードを着た人が沢山います、僕たちはひと際目立っていました、ザナルサンサン様も僕と同じ武士の衣装です。
これで僕の作戦通りとウキウキです、これから魔族間で和服を広めます。
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