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1章 開店

2杯目 ラーメンの為に

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何度試しても通り抜けてしまい、本当に作れない事が分かったよ。


「更にこれはまずいんじゃないか?コンロや冷蔵庫にコードやホースが付いてないぞ」


火や電気が必要な器具なのに、これは使えるのかという問題だ。
テーブルも椅子も出したのに、どうしたものかと悩んだよ。


「アイテムボックスには戻せるからまだ良いが・・・そもそも、この部屋には電気もガス栓もない」


そこを確かめるまでもなく、四角い部屋で見れば分かるが、道具が使えるのかを確かめるには、あの女の声の通りラーメンを作ってもらうモンスターが必要で、まずは召喚する事にした。
説明書を見ようと出して触ったんだが、どうしてかその書物だけは持つ事もページをめくる事も出来た。


【目次】
・ダンジョンポイントの取得方法
・道の種類と作り方
・部屋の種類と作り方
・階層の種類と作り方
・罠の種類と作り方
・採取エリアの種類と設置方法
・オブジェクトの種類と設置方法
・宝箱の種類と設置方法
・モンスターの種類と設置方法


「ふむ、目次で何処を見れば分かるが、兎に角モンスターだな」


ダンジョン作成を念じると、またまた四角い画面が出て来て、俺はモンスターの文字をタップした。
そこには、俺でも知ってるゴブリンやスライムといった名前が並んでいて、どれが最適なのかを考えたよ。


「人と同じくらい賢い者が良いだろうな」


最初に表示されているモンスターは明らかに無理があるので、スライドさせてどんどん下に移動したが、モンスターの名前の横に表示してある数値がどんどん増えていく。
モンスターを召喚する為に必要なポイントなのは知識の無い俺でも分かり、5万Pと書かれた場所で止まった。


「オーガ、こいつなら調理は出来るか?」


一度タップすると詳細が出るんだが、どうやらオーガではダメなのが分かった。
オーガは、力が強く細かな作業には不向きだそうなんだ。


「そうすると、オーガの上位種鬼神か、他のモンスターを探すしかないのか?」


更に下に移動すると、良さそうなモンスターを見つけて止まった。
そいつはレイスと言って、今の俺の様に半透明の幽霊モンスターだ。


「詳細にも、家事全般が出来るとか書かれてるし、熱い場所も平気とか書いてあるからきっと行けるよな」


触れないとか言うオチは無いと思い、ポイントも気にしないで召喚した。
ちょっと離れた床に魔法陣が刻まれ、予定のモンスターが召喚されたんだが、美人のお姉さんが出て来て驚きだ。


「白いドレスのお姉さんかよ」
「あなたがワタクシを呼びましたの?」
「ああ、俺はメンヤと言うんだが、ラーメン屋と言う店を手伝ってほしいんだ」
「お店ですの?侵入者を殺すのではなく?」


部屋を見回して不思議そうだが、ダンジョンなら侵入者を排除するのが当然で、物騒とは思ったが普通はそうなんだろうと室井の話を思い出した。
そう言えばっと、あの女の声は言っていた事を思い出したが、外の世界を混乱させる気はないぞ。


「殺す必要はないし、そもそもこの部屋以外作ってないぞ」
「見れば分かりますが、それですとポイントが稼げませんわ」
「そう言えば、そんなのが必要なんだよな」


そう思ってポイントを確認したんだが、どうやらポイントをすべて使ってしまったらしく、ゼロと表示されていた。
それを見て、レイスはとても困った顔をしてきて、美人のそんな顔も良いなとか思ってしまったよ。


「それでは、初期の岩通路しか作れませんわよマスター」
「そうなのか?」
「はい、それに幅や高さの設定もされてない様ですわね」


確かにそうだと説明書を見たが、その前にラーメンが食べたいのでお願いした。
作るのは了承してもらえたんだが、自分に名前を付けてくれとか言われたよ。


「必要なのか?」
「はい、1体召喚はそういった仕様なのですわ」
「そうなのか・・・じゃあ、キラキラと虹色に光るから、オーロラだな」


名前を決めると、レイスの身体が一度光を発して、その後に登録が終わったと返事を貰った。
それで何が変わるのかと聞いたんだが、念話などの特殊機能が使えるらしい。


「他にも、普通のモンスターよりも強くなりますし、マスターの代わりに命令も出来ますわ」
「そうなのか・・・今の所、何も使えないな」
「まぁそこは、おいおい使うと言う事でよろしいですわ」


名前も決まった所で、俺は勉強に入ってオーロラにはラーメン作りに入って貰った。
そして、作り方を説明しようとしたんだが、どうやらネームドになったことで作り方が分かるようだったよ。


「それに道具の使い方も分かりますわ」
「凄いなネームド」
「ありがとうございます、マスターがお望みなら敵もバンバン倒しますわよ」
「いや、それは良いよ」


ここに入って来ると言う事は、恐らく腹ペコの者なので、ラーメン好きの同志だ。
そう言いつつ説明書を読んで、道の設定を考えた。


「縦・横・奥行が5m、最大がそれだったんだが・・・これなら、道の半分を使ってカウンター席にも出来そうだな」


ラーメンを作る事が出来るなら、よりおいしい物が欲しくなるわけで、俺はそれを極めるためにダンジョンを使いたくなった。
それと言うのも、ラーメン屋のスキルレベルがあるから、自分が満足する為にあげたくなったんだ。


「室井が言っていたが、スキルは使わないと上がらないらしいからな」


だからこそのお店開業で、ダンジョンのポイントも、侵入者の命を奪うか侵入時間がポイントになるらしい。
説明書を読み色々と分かって来たが、兎に角道を繋げて入り口を作る事を優先したよ。


「じゃあ、伸ばして繋げるか」


画面の左上の端にあるのがこの部屋で、右に一直線に伸ばして10個分の道が伸びた。
その先には光が見えて、外に繋がったのが分かったが、部屋の右側に扉が出現したよ。


「オーロラが分かったのは、部屋に扉が無かったからか」


扉を開けてみると道が伸びていて、その先には光が見えたよ。
器具に触れない俺が扉を開けれた事も驚きだが、ほんとにダンジョンを作っているのが分かり、ちょっと考えてしまった。


「俺って、ほんとに死んだんだな」


死んでもラーメンが食べれるなら良いから前向きに考える事にして、オーロラの塩ラーメンはまだかと思って見てしまった。
その出来栄えだが、どうやら家事が出来ると言うのはほんとなようで、出来上がったスープに茹でた麺を入れる所だった。


「トッピングを乗せまして、出来上がりでございますわ」
「やったぜ、じゃあ玉の所に置いてくれ」
「畏まりましたわマスター」


ダンジョン玉の台座の前にドンブリが置かれると、光と共に消えていき俺の目の前にそのドンブリが召喚され、俺は両手でそれを受け取り触れる事が出来た。
台座の前のドンブリは消えたのは捧げると言う事かと、塩ラーメンを食べ始めたんだ。


「マスターどうですか?」
「う~ん、美味いんだが・・・普通だ」
「そうでしたか、申し訳ございません」
「いや、オーロラのせいじゃない、恐らく俺のスキルの限界なんだろう」


スキルが1レベルならこんな物っと、俺はスープまで飲み干しやっと満足した。
そして、箸とどんぶりは消えていき、捧げられた品が消えてしまうのが分かり、ダンジョンをラーメン屋にするのなら仕様も変えた方が良いだろうと、説明書をもう一度確認だ。
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