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1章 開店

7杯目 3レベル

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「1レベルの者が1時間、ダンジョンに滞在すれば100Pって訳だな」


前回で何となく分かっていたが、30分毎にしかポイントは入らない。
全て切り捨てとかかなりきついが、それよりもレベルが上がらない方が問題だ。


「オーロラ、ポイントがどれくらい必要なんだ?」
「1万ですね、11レベルからは5万ですわ」
「そうか・・・しばらく上がらないわけだな」


ニャースラたちの滞在時間を増やして貰う訳にもいかないし、後2日はこのままと言う事が決まった。
そこは諦め、大人数来客に向けての対策として、オーロラの補佐が出来るモンスターを召喚しようと考えた。


「何かいないかな」
「マスターそれでしたら、このお部屋ではない普通のモノが必要ですわ」
「普通のって、この部屋って何か特別な部屋だったのか?」


この部屋は、どうやらダンジョンコアを祭り上げている部屋らしく、ダンジョンの最下層に位置する特別なモノと説明された。
ここには、1体召喚のモンスターしか入れないとオーロラが教えてくれて、地下2階を500P消費して作り、岩通路を伸ばして500Pの小部屋を作る様に言われたから、俺は言われるがままに作ったら、ダンジョンコアルームがその部屋と交換され、俺たちは地下2階に一瞬で移動した。


「凄いな、どんな仕組みだ?」
「そこは分かりませんが、マスターのコアを守る為、一番奥にこの部屋は存在しなければならないのですわ」
「なるほどな、じゃあさっきの部屋をもっと広げて、俺の新しい店にすれば言い訳か」


その通りっと、オーロラがニッコリトして来て、ダンジョンコアルームの機材をアイテムボックスにしまい、俺たちは1階に戻ったんだ。
ラーメンを台座に捧げるのが面倒になったが、そこはオーロラに謝っておいた。


「とんでもございませんわマスター」
「すまないな、どうしても俺は食べたいんだ」
「マスターを支えるのがワタクシの使命です、何なりと言ってください」


相変わらずオーロラは頼りになるので、少しでも楽になる様に予定通りモンスターの選定だ。
新たな部屋を1000Pで広くし、機材を置いてから簡単な作業が出来るモンスターを探したよ。


「簡単と言いますと、どれくらいですかマスター」
「そうだなぁ~・・・コップを置いたり、食器の片付けとかだな」
「それでしたら、大抵のモンスターが出来ますわ」


オーロラが指示を出せば出来る様になるらしく、同時にダンジョンに入って来た侵入者を攻撃しない様にも命令するらしい。
そこで俺の決めたモンスターは、天井に張り付く事の出来る【エビルプラント】だ。


「2本のツタでコップとかを持てるし、等間隔に天井に陣取って貰えば移動もいらない」
「なるほど、歩くのに邪魔にもならないわけですねマスター」
「そう言う事だ、1体召喚だと50P掛かるが、10体召喚は250Pで済むから安上がりだ」


20個のテーブルの天井に1体ずつ位置してもらい、バケツリレーが出来る様に等間隔で40体を配置したら、ポイントの残りが750Pになってしまった。
出来るなら、調理の手伝いも増やしたかったんだが、全然足りなかった。


「オーロラの推してるゴーストは、10体召喚で1万Pだけど、オーロラが指示すれば出来るのか?」
「はい、ワタクシの下位種族ですので、しっかりとお仕事は出来ますわ」
「じゃあ、ポイントは溜めないとな」


優先順位的にも、オーロラの負担を減らしておきたい。
それと言うのも、オーロラは俺と同じで食事も睡眠もいらないからだ。


「疲れないからと言っても、休むことは必要だ」
「そうなのですか?」
「ああ、ずっと働き詰めだと、良い考えも浮かばない」


そう言うモノかとオーロラは不思議そうだが、甘い物を食べるのも必要だ。
そう言う訳で、バニラアイスを交換し捧げて貰って頭をスッキリさせる事にした。


「これは変わった食べ物ですわね」
「アイスというんだ、冷たくて甘い食べ物だな」


ふたりで食べたんだが、サイドメニューのアイスを選ぶ時、画面をスクロールしてある物を見つけたから俺は首を傾げてしまった。
そこには、加工していない生き物や野菜や魚が交換対象にあったんだ。


「これって、交換したら飼えたり育てる事が出来るって事か?」
「ダンジョンとは違うので確実ではありませんが、きっとそうですわ」
「そうか・・・じゃあ、地下2階に小部屋(500P)を作って、ニワトリを置いてみるか」


そう思ったんだが、部屋を作って俺は手を止めたんだ。
生き物が交換できるとして、エサはどうなるのかと言う問題があり、小部屋ではエサになる草木が設置できなかったんだ。


「そうしますと、5000Pの大部屋(50m四方)か、1万Pの超部屋(500m四方)を使う事になりそうですわね」
「それなら、オーロラの手伝いを増やしてからだな」
「そんなに急がなくても」
「いやいや、オーロラにはラーメンを捧げてもらったりもするわけだから、絶対に必要になるんだ」


そう言うモノかと、オーロラはちょっと申し訳なさそうだったが、注文して出来るまでのあの間隔は減らしたいんだ。
そう言う訳で、ラーメンの調理を開始してもらい、スキルレベルが3に上がった。


「とんこつに中太麺が増えて、ダシが豚骨か」
「スープのとんこつとダシの豚骨は何が違うのですか?」
「全然違うぞオーロラ、ペーストのタレは」


味の深みを上げるためにダシは必要で、そこにタレペーストを入れれば更に味が増す。
俺はラーメンの奥深さを説明したが、オーロラは分からないと言って来たよ。


「説明するよりも食べた方が早い、ちょっと試してみよう」
「はいマスター」
「ついでに、サイドメニューに増えた餃子も出して見よう」


待望の餃子が交換できるようになったんだが、1MPで餃子は1個しか交換できなかった。
普通5個から6個乗った一皿が標準だから、店で出すにはそれなりのMPが消費されるんだ。


「ラーメンも、麺・タレ・ダシで3MPだからなぁ」
「どんぶりとおハシもですわよマスター」
「そうだったな」


消費が更に増えた事で、早くレベルアップが望まれた。
明日ニャースラが来たら、宣伝をもっとしてもらおうと、肉料理の餃子を沢山交換したよ。


「しかし、餃子も麺と同じで調理が必要なんだな」


餃子は、交換した時点で包まれた状態で出て来て、後は焼くだけとなっていた。
オーロラの仕事がまた増えてしまったが、本人はとても喜んでいて、俺に捧げる事を誇りに思っている様だ。


「何かお礼をしたいな」
「お礼だなんて、マスターに奉仕するのは使命ですわ」
「そう言うが、働いたら報酬が貰えるのは当然だろう」


俺に出来る事は少ないのだから何かさせてくれと、オーロラの手を咄嗟に掴んだら、通り抜けずに触る事が出来たんだ。
オーロラは赤くなって、モンスターは触れると教えてくれたが、オーロラの手が暖かかったのが嬉しくて、俺はしばらく握っていたんだ。


「人のぬくもりって大切だったんだな」
「マスター?」
「オーロラ、頭を撫でていいか」
「ふぇっ!?」


女性の頭を撫でるのはとても申し訳ないが、他の部分を触るのは問題と思っての提案だ。
オーロラが了承してくれて、俺はゆっくり手を乗せようとしたんだが、ダンジョンに誰かが入って来る気配を感じて止めたよ。
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