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2章 支店

24杯目 初の自作

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「もう少しですよマスター」


ゆっくり集中するようオーロラたちが応援してくれる中、俺は湯切りの道具とサイバシを使い、麺をグルグルと解して茹でていた。
見事に両手で物を持てる様になった俺だが、少しでも気を抜くとすり抜けて落としてしまうから、俺もみんなも気が気ではない。


「よ、よし、麺の湯切りまでは出来た、このままどんぶりに投入するぞ」
「頑張ってあるじぃ~」
「マスター気を散らしてはいけませんよ、ここは慎重にですわ」


さくらは無言で応援してくれるが、正直かなりのプレッシャーだ。
しかし、その期待に応えるようと頑張った俺は、見事に麺を盛り付けて具材の乗せて完成した。


「やった、やったぞみんな」
「おめでとうございますマスター」
「良かったねぇあるじぃ」
「良かったです主様」


さくらは泣いてしまい、ミキがヨシヨシと撫でていたが、俺もみんなにお礼とばかりに撫でて回ったよ。
どうしてか、ご褒美は撫でてほしいとみんなが言って来たからだが、正直助けられてばかりのオレだから、もっと他にも何かしてあげたいと思っていた。


「では、これはマスターが食べれるように捧げてきますわ」
「待ってくれオーロラ」
「どうしました?」


俺の出来る事が増えたという事で、オーロラに小皿を持ってきてもらい、俺の作ったラーメンを人数分に分けて貰った。
俺は皆と一緒に食べたいという俺のお願いで、オーロラが喜んで分けてくれて、俺にも小皿で捧げられたんだ。


「じゃあ、俺の初めての自作ラーメン、食べてくれ」
「「「「はい」」」」


みんなでいただきますと声を揃えて一斉に食べたんだが、品が良いのかとても美味かった。
みんなも美味しいと喜んでくれたが、俺としては手際の悪さを引いてまだまだと感想が出たよ。


「十分だよあるじぃ」
「そうですよ、とっても美味しいです主様」
「ありがとうふたりとも、もっと頑張るよ」


欠点は分かっているから、まずは楽しもうとみんなでその為の訓練方法を食べながら進め、俺はとても楽しかった。
結果が出ている事もそうだが、生きてるって実感がわいてくるんだ。


「体は透明だが、前の世界よりも良いかも知れないな」


ラーメンも食べれてみんなもいる、もう最高と思ったんだが、室井の事がちょっと気になっていた。
同じ様にこちらにいないか考えたが、あいつの場合はどこかで無双しているはずで、そんな情報はまだ入っていない。


「ミキ、何処かで強い奴がいたら教えてくれるか?」
「良いけど、獣人の国にはいないと思うよ」
「そうすると、やはり人種族の国だろうか」


そうかもしれないとミキが応えてくれて、俺もそっちの方が可能性が高い気がした。
王都に行ってるメンバーに伝える様にして、俺はちょっと期待したが、直ぐには分からないので早速訓練の再開だ。


「じゃあ、オーロラ頼むな」
「お任せくださいマスター」
「おう、腰をくすぐってくれ」


コチョコチョと腰をくすぐってもらい、俺はサイバシを持つ練習だ。
笑いを堪え、俺はサイバシが持てずにすり抜けたよ。


「やっぱり、まだまだだな」
「どんどん行きましょう、集中ですよマスター」


ミキとさくらが持ち場に戻って行かず、俺の訓練をニヤニヤして見て来て、暇なのかと思ってしまった。
そのせいもあり、俺は集中力が無くなっていて、すり抜けて成功しない。


「いつもは10回に1回は成功するのになぁ」
「頑張ってよあるじぃ」
「そうですよ、もう少しです」


ミキとさくらが応援して来るが、あれはいかにも楽しんでいるだけで、俺は負けない様に深呼吸だ。
そのかいあって、何とか触る事が出来て持てたんだが、喜びの声を上げたらすり抜けてしまった。


「ああ~落ちちゃったよあるじぃ」
「ミキ、出来る様になっただけでも前進さ」
「あるじぃは偉いね、ボクなら落ち込んじゃうよ」


しょんぼりとして来たミキに、俺は何かあったのかと心配になったんだが、どうやら外の情勢が悪くなって来たらしい。
シカ族とフクロウ族が何やら企んでいるらしく、あれだけ説得したのにと落ち込んでるんだ。


「信用を得られれば、俺たちの屋台が来訪すると言ってあったのにな」
「そうなんですよあるじぃ」
「きっとあの人達は、全部を奪いたいんでしょうね」
「さくらの予想通りだろうな、準備もそうだが、何か他にも必要か?」


皆に意見を聞いたけど、部下のモンスターを沢山増やしたので問題はないと返って来た。
しかし、ネームドがミキとローズだけでは大変と、俺は二人に再度聞いてみた。


「森の広さを考えるとそうだけど、あるじぃのダンジョンには指一本触れさせないよ」
「ミキ、こちらの味方になった集落が一度に襲われたらどうなる?」
「そ、それは・・・ちょっときついかも」
「2つの集落が相手ですよ主様」


さくらが反論して来るが、俺はちょっと嫌な予感がしていて、それだけでは無い気がしていた。
そこで新たなネームドを召喚する事にして、俺はハーピーを部下に決めてハーピークイーンを召喚した。


「君の名前はクインだな」
「旦那様?」
「いや、旦那様ではないぞ、君の召喚主だ」
「じゃあ旦那様で良いの~」


だから違うと言ったんだが、その呼び名が良いとダダをこねられてしまい、俺は渋々了承した。
そして、ハーピーたちも100体召喚して外の見張りを頼んだんだ。


「分かったの旦那様~」
「よろしくなクイン、ミキとローズとも連携してくれ」
「はいなの~よろしくなの~」


オーロラたちが挨拶を交わし今後の説明をしてくれて、ミキと一緒に外に出たが、オーロラは俺の予感の行き先を言い当てて来た。
森の外から何者かが介入して来る、それを見張る為のクインたちと言う訳だ。


「獣人の王都の件ですか?」
「料理を気に入ってくれた姫様がいるらしいが、それを良く思わない奴はいるだろうからな」
「主様はそこが引っかかっていたのですね」
「そうなんださくら、だからみんなを守る為にも増員をしておきたかった」


他の集落の人たちも来店するようになって、俺の店は1日平均100万Pを取得できるようになった。
持っているポイントもそろそろ10億を超えるので、奮発しても良いと相手の動向を探りたいとふたりに伝えたよ。


「なるほどですわね」
「では、敵の強さによってはどれくらいのモンスターを召喚されるのですか?」
「そこなんだよさくら、入り口が狭いから大きなモンスターを出すことが出来ないから、ドラゴンとかは無理なんだ」
「そうしますと、悪魔を召喚するのが良いかも知れませんわ」


オーロラの提案に、インキュバスやサキュバスを提案されて、俺も最悪は呼ぶことを考えた。
そこまでの相手は来ないと思っているが、数で来られると問題だから心配だったんだ。
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