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1章
17話 魔王の窮地
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「魔王様、ジャンガルが打ち取られました」
紫色の悪魔は、背中の翼を使って舞い降りて跪きます。玉座に座っている少女はその男の報告を聞き、椅子から身を乗り出し、信じられないと言った表情を見せます。
紫の男が跪いたままで返事を待っているので、真実なんだと分かり、少女は椅子に座り直して落ち着きます。
でも、心内は大変な状態で、組んでいた足を下ろし、手を肘掛けに置いて指をトントンさせ、落ち着かない様子で天井を見て祈り始めました。
「ジャンガルもいったか・・・これで我ら魔族側の領土である、デビルズフィンガー大陸の中指大陸と人差し指大陸に続き、薬指大陸もヒューマンに占領されてしまったのじゃ。獣人や精霊族が協力しているとはいえ、かなり深刻じゃなサビールよ」
「はい魔王様、奴らは指先側から占領するのではなく、大陸の根本から進軍しています。手の平領土に進軍するのも時間の問題です、今のうちに親指大陸のギャギャン様と、小指大陸のガガーランド様を招集いたしましょう、そうすれば手の平領土を守る、ドラゴニス様が迎え撃てます」
この世界は、魔王たち魔族が占領している悪魔の手を模した、長細い形の大陸と、ヒューマンの手の形をした、幅の広い大陸とが向かい合っています。
大昔は、大陸同士が手を組んだ形だったとされ、1つの大きな大陸でした。それが地核変動の影響を受け、今の様に別れ、限られた資源を取り合い、少ない土地をめぐって争いが絶えないと、小さな魔王は悲しそうな顔をして話します。
「ワシたちが何をしたというのじゃ、領地を取り合う前にやることがあるじゃろう、もっと民の事を考えるべきじゃ」
「魔王様、奴らは今勢いがあります、奴らを蹴散らし、魔族の力を今こそ思い知らせてやりましょう」
サビールが顔だけを上げ魔王に進言します。しかし魔王は頭を縦には振らず、今は残った領地を守るべきだと告げたんです。ですが、それだけでは敵の進軍を止められない、魔王もそれは分かっています。サビールの気持ちも分かると、取られた領地の一つに、魔王軍最強の軍を出撃させることを指示しました。
ドラゴン族のドラゴニスが遂に出ると、サビールが喜び、その勢いのまま玉座の間から出ると、魔王は頭を抱えて悩みます。
「結局、わらわも同じじゃな・・・争う事しか出来んのじゃろう、サビールの言うようにワシたちには強力な力がある、しかし守っているだけでは、命を落とした将軍たちと同じ末路じゃ。争いはまた争いを生むのが分かっておるのに、わらわはまたしても、そんな指示を出してしまったのじゃ・・・それではいかんのじゃよ」
どうすれば良いのかと悩み、お互いを認め合える、そんな関係になるべきだと思っています。ですがそれは不可能だとも思っているんです。
玉座から立ち上がった魔王は、窓の外を眺め悲しい表情を浮かべます。外には枯れた大地が広がっていて、お世辞にも綺麗とは言えなかったからです。
この地を緑溢れる地にしたい、そんな夢を持っていて、でも現実は程遠いと、落ち込んでため息しか出ません。
「向こうには勢いがある、それを止め冷静にさせるには、一度完膚なきまでに倒すしかないのかもしれん・・・双方ともに被害は甚大じゃろうが、それが一番の早道か」
今まで散々考えを巡らせ、出ている答えを口にして迷います。その作戦とは、お互いの被害が大きく、そうなった場合、戦いの傷が癒えても心には残ってしまいます。それはいつか爆発し結局は元に戻る、魔王はそれが分かっているから他の手を考え、それは見つからいで苦悩してるんです。
「言い伝えの様に、神が降臨してくれればいいのじゃが・・・ダメじゃな、神などに祈っていては、ワシに出来る事は策を練る事じゃ、限界まで絞り尽くさねばな・・・まずは失った軍の再編じゃ」
魔王は、結局これが優先とため息を付きます。玉座に座り、軍備の補強に対する指示書を書きます。そして係りの者を呼び、有能そうな者がいないか聞き、そこで耳寄りな情報を聞きます。
「ほう、有能な者がいるとな」
「はい魔王様、1つはスライムクイーンの保有しているダンジョンで、占領された中指大陸にあります。隣接していたヒューマンの街を落としているんです」
生き残りのダンジョン保有者、生きていて嬉しいと、魔王は表情を明るくします。しかし援軍は難しく、合流も出来ないと冷静になりました。
占領された土地で頑張っている者がいるのに、自分は何をしてるんだと、魔王は自身に怒りを向け、なんとか援軍を送るぞっと、気持ちを切り替え意思を強めます。
「もう1つはヒューマンの大陸で、小指と薬指の間の手の平大地です。その者はウサギクイーン、なんとヒューマンたちと協力しているようです」
どちらも勢力を上げていると報告を聞きました。魔王は、それを希望の光だと思い、気持ちが更に高揚します。方法は真逆ですが、兆しが見えたと目を輝かせます。
「戦力増強の為にも、その者たちと接触したいモノじゃな」
「恐れながら魔王様、今の情勢では支援はおろか、連絡も取れません。この情報も空から偵察し、たまたま発見したのです」
かなり不確かだと、係りの者は付け足し頭を下げます。
魔王は、些細な事でも報告するようにと伝えていたので、その程度のモノでも構わないと続けさせます。ですがその報告は、魔王にとって些細な事ではありませんでした。
「ドラゴニスの進軍先を変更じゃ、サビールにそう伝えるのじゃ」
「は、はい!」
係りの者が魔王の手紙を受け取り、急ぎ足で部屋を出ました。それを見送り、魔王は運命の歯車が回り始めたと感じます。
「勇者が召喚され、我らは敗北続きじゃった。じゃが!!それも終わりを迎えるかもしれん、わらわが今まで大陸で作っていた物資、それを今こそ解き放つ時じゃ」
魔王は守る為に生産を優先していました。補給路を確保し、敵の勢いが無くなった時、それを迎え撃つ準備をしていたんです。
勇者のいる部隊は、それを知らずに進んで行き、無防備な占領地を広げていた、それが今終わりを迎えようとしています。
紫色の悪魔は、背中の翼を使って舞い降りて跪きます。玉座に座っている少女はその男の報告を聞き、椅子から身を乗り出し、信じられないと言った表情を見せます。
紫の男が跪いたままで返事を待っているので、真実なんだと分かり、少女は椅子に座り直して落ち着きます。
でも、心内は大変な状態で、組んでいた足を下ろし、手を肘掛けに置いて指をトントンさせ、落ち着かない様子で天井を見て祈り始めました。
「ジャンガルもいったか・・・これで我ら魔族側の領土である、デビルズフィンガー大陸の中指大陸と人差し指大陸に続き、薬指大陸もヒューマンに占領されてしまったのじゃ。獣人や精霊族が協力しているとはいえ、かなり深刻じゃなサビールよ」
「はい魔王様、奴らは指先側から占領するのではなく、大陸の根本から進軍しています。手の平領土に進軍するのも時間の問題です、今のうちに親指大陸のギャギャン様と、小指大陸のガガーランド様を招集いたしましょう、そうすれば手の平領土を守る、ドラゴニス様が迎え撃てます」
この世界は、魔王たち魔族が占領している悪魔の手を模した、長細い形の大陸と、ヒューマンの手の形をした、幅の広い大陸とが向かい合っています。
大昔は、大陸同士が手を組んだ形だったとされ、1つの大きな大陸でした。それが地核変動の影響を受け、今の様に別れ、限られた資源を取り合い、少ない土地をめぐって争いが絶えないと、小さな魔王は悲しそうな顔をして話します。
「ワシたちが何をしたというのじゃ、領地を取り合う前にやることがあるじゃろう、もっと民の事を考えるべきじゃ」
「魔王様、奴らは今勢いがあります、奴らを蹴散らし、魔族の力を今こそ思い知らせてやりましょう」
サビールが顔だけを上げ魔王に進言します。しかし魔王は頭を縦には振らず、今は残った領地を守るべきだと告げたんです。ですが、それだけでは敵の進軍を止められない、魔王もそれは分かっています。サビールの気持ちも分かると、取られた領地の一つに、魔王軍最強の軍を出撃させることを指示しました。
ドラゴン族のドラゴニスが遂に出ると、サビールが喜び、その勢いのまま玉座の間から出ると、魔王は頭を抱えて悩みます。
「結局、わらわも同じじゃな・・・争う事しか出来んのじゃろう、サビールの言うようにワシたちには強力な力がある、しかし守っているだけでは、命を落とした将軍たちと同じ末路じゃ。争いはまた争いを生むのが分かっておるのに、わらわはまたしても、そんな指示を出してしまったのじゃ・・・それではいかんのじゃよ」
どうすれば良いのかと悩み、お互いを認め合える、そんな関係になるべきだと思っています。ですがそれは不可能だとも思っているんです。
玉座から立ち上がった魔王は、窓の外を眺め悲しい表情を浮かべます。外には枯れた大地が広がっていて、お世辞にも綺麗とは言えなかったからです。
この地を緑溢れる地にしたい、そんな夢を持っていて、でも現実は程遠いと、落ち込んでため息しか出ません。
「向こうには勢いがある、それを止め冷静にさせるには、一度完膚なきまでに倒すしかないのかもしれん・・・双方ともに被害は甚大じゃろうが、それが一番の早道か」
今まで散々考えを巡らせ、出ている答えを口にして迷います。その作戦とは、お互いの被害が大きく、そうなった場合、戦いの傷が癒えても心には残ってしまいます。それはいつか爆発し結局は元に戻る、魔王はそれが分かっているから他の手を考え、それは見つからいで苦悩してるんです。
「言い伝えの様に、神が降臨してくれればいいのじゃが・・・ダメじゃな、神などに祈っていては、ワシに出来る事は策を練る事じゃ、限界まで絞り尽くさねばな・・・まずは失った軍の再編じゃ」
魔王は、結局これが優先とため息を付きます。玉座に座り、軍備の補強に対する指示書を書きます。そして係りの者を呼び、有能そうな者がいないか聞き、そこで耳寄りな情報を聞きます。
「ほう、有能な者がいるとな」
「はい魔王様、1つはスライムクイーンの保有しているダンジョンで、占領された中指大陸にあります。隣接していたヒューマンの街を落としているんです」
生き残りのダンジョン保有者、生きていて嬉しいと、魔王は表情を明るくします。しかし援軍は難しく、合流も出来ないと冷静になりました。
占領された土地で頑張っている者がいるのに、自分は何をしてるんだと、魔王は自身に怒りを向け、なんとか援軍を送るぞっと、気持ちを切り替え意思を強めます。
「もう1つはヒューマンの大陸で、小指と薬指の間の手の平大地です。その者はウサギクイーン、なんとヒューマンたちと協力しているようです」
どちらも勢力を上げていると報告を聞きました。魔王は、それを希望の光だと思い、気持ちが更に高揚します。方法は真逆ですが、兆しが見えたと目を輝かせます。
「戦力増強の為にも、その者たちと接触したいモノじゃな」
「恐れながら魔王様、今の情勢では支援はおろか、連絡も取れません。この情報も空から偵察し、たまたま発見したのです」
かなり不確かだと、係りの者は付け足し頭を下げます。
魔王は、些細な事でも報告するようにと伝えていたので、その程度のモノでも構わないと続けさせます。ですがその報告は、魔王にとって些細な事ではありませんでした。
「ドラゴニスの進軍先を変更じゃ、サビールにそう伝えるのじゃ」
「は、はい!」
係りの者が魔王の手紙を受け取り、急ぎ足で部屋を出ました。それを見送り、魔王は運命の歯車が回り始めたと感じます。
「勇者が召喚され、我らは敗北続きじゃった。じゃが!!それも終わりを迎えるかもしれん、わらわが今まで大陸で作っていた物資、それを今こそ解き放つ時じゃ」
魔王は守る為に生産を優先していました。補給路を確保し、敵の勢いが無くなった時、それを迎え撃つ準備をしていたんです。
勇者のいる部隊は、それを知らずに進んで行き、無防備な占領地を広げていた、それが今終わりを迎えようとしています。
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