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2章

28話 羊さんの勉強部屋

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オラがジャガイモを植えている丁度同じ時、羊の頭をかぶった人型モンスターのダンジョンでは、同じ様な事が起きてただ。魔族の大臣に、出来たばかりの素材を納品して確認をしていただな。
目元が被り物で見えないメローナシープルは、大臣の査定をじっと待っていただ、このダンジョンでも変化が起きていただが、それは大臣には黙っているだよ。


「こ、今月の羊毛ですボートル様」

「キシシ、よくやったぞメローナシープルよ、ではまた来月来るから刈り取っておくのだぞ」


魔族大臣の1人、紫の肌をした一つ目のボートルは、装備の為にメローナシープルの毛を収集し帰って行っただ。でもその量が倍になり、メローナシープルたちは疲労していただよ。
ボートルは、羊毛を加工し装備にする作業を魔王様に任されてる魔族だ、だども要求がどんどん増えて来ていただな。


「今に見てなさいメル、もうお前の好きにはさせないメル」


オラと同じで、ダンジョンが変化したメローナシープルは立ち上がり、黒い笑顔を見せてただ。ダンジョンを進み、部下たちの作業を強い眼差しで見ただよ。
部下たちはボートルに渡さなかった毛を糸にし、それを更に服に変えていただ。


「メローナ様、あいつは行きましたか?」


小さな丸い羊が作業を止め、メローナシープルに笑顔で聞いただ、その部下の頭を撫でながら、メローナシープルは予定通りと答え、作業の進捗を聞いて黒い笑顔を見せただ。


「品質も落とさず良い出来メルか、何よりメルね」

「はいメローナさま、これもミノーズ殿のおかげです。知力をあげるとは、すばらしい事だったのですね」

「そうメルね、でもメナたちの頑張りもあってこそメル、毛を育て刈り取りの作業もあるのに、勉強もやらなければいけないメル、それはとても大変だメル」


ここは毛を育て刈り取るだけのダンジョンだっただな。だどもそれはボートルの野望を知ってから変わっただよ。
ミノース殿と同じミノムシモンスターのミノーズ殿から、調査するように指示を受け、ミノーズ殿の睨んだ通りの結果が見つかっただ、ボートルは加工した服や防具を敵側に流していただよ。
それからメローナシープルたちは、ミノーズ殿の指揮の元で動いているだ。


「あいつを倒す為ですから平気です、それに・・・それほど大変でもないですよ」


メナが劇的に変化したダンジョン生活を思いウットリしているだ。食事は美味しい干し草が用意され、身体はお風呂で清潔に洗浄されるだ。そしてベッドはフカフカで睡眠も十分に取れ、ブラッシングやマッサージもしてくれるだよ。
メローナシープルも質の良い毛を作る為、ダンジョンが変化したと言ってるだ、オラも見習わないといけない事だな。


「でも、今までみたいに自由な時間はないメル、みんな規則的な生活をしてるメル」


本来のメローナシープルたちの種族は、のんびりとしているのが普通だ。だども今は決まった時間に起床し、食事を取って作業をこなしてまた寝るの繰り返しだ。それでは自由が無いとメローナシープルは心配そうだ。


「そうでもないですよメローナ様、むしろ今の方がみんな生き生きしてます。休みが楽しみとか、毛の手入れを仲間として楽しいと、幸せを感じる報告を聞いていますよ」


報告をしてるメルも、メローナシープルとブラッシングをしている時が一番幸せだと、潤んだ目をしてメローナシープルにおねだりを始めただ。メローナシープルもそれに答え、後でしようと約束をしただな。


「ありがとうございます、それと今度のお休みは、お出かけの予定ですよね」


メルがまた潤んだ目を始めただ。これは一緒に行きたいという無言の訴えだっただよ。
メローナシープルは、直ぐにそれを“理解分し、護衛として一緒に行きましょうと、またしても約束をしただな。メルも喜び、作業に向かっただ。
時間が経過すると作業が終わり、みんなで次の部屋に移動を始めただ、そこには小さなミノムシが待っていただ、みんなそのモンスターに向かい、礼をして座っただな。


「みなさん、遅れる事なく規則正しい集まり嬉しく思います・・・それでは、最初の授業は歴史を話しましょう」


ミノーズ殿が大陸の形が変わった歴史を語りだしただ、みんな静かに聞き頷くだ。ミノーズ殿は話しを進め、大陸で生活の違いが出て来たと話しただな。
オラたちは、まだまだ順応していないと言ってるだな。


「どうしてそう思うメ~?」

「メメンさん、それは簡単ですよ、皆さんは肉体が強いせいで、工夫をしていません、だから今危機に陥っているのです」


人族たちは、特に工夫をしていると、資料を魔法で黒板に貼り付けていくと、それをみんなが見て「おお~」と声を出しただな。
紙には今自分たちが使っている、とても変わった道具の数々が載っていただよ。そしてそれは、最初の形で次もその次もあると言っただ、みんなそれを聞いてすごいと声を揃えただな。


「使っていて分かりますね、凄く便利なのですよ、それをもっと良くしています」


ミノーズ殿がそこでメローナシープルを見ただ、ボートルを怪しんだのはそれが原因だっただよ。
メローナシープルたちの毛は、服や防具に生産されてるだ、だども倍となると作るのに時間が掛かり過ぎるだ。それなのに毎月来て回収して行っただ、効率を上げなければ、必要とされない量だと疑問を持たせただよ。


「皆さんが使っている道具で基礎を磨き、次の道具を扱える様になりましょう。その為には、毎日の反復が大切なのですよ、楽しくお仕事をして行きましょうね」


ミノーズ殿に良い返事をして、皆が勉強を進めただ。次の授業は道具の構造で、点検や修理も出来なくてはダメだとミノーズ殿が説明しただよ。
そして新しい道具との比較もしているだな。


「糸にする道具は同じような構造です、でも部品が精密になりだすのです。より繊維を細かくして紡ぐ事が出来て、より良いものになります、それは布にする機械の方も同じに見えますね」


ミノーズ殿が絵を細い棒で差して説明を進め、皆が頷いて理解を深めて行くだ。
部品の種類が増え動力も足ふみから、魔石を使った動力に変わっていっただな。


「自動化と言うのもいいかもしれませんね、ですが扱う者は必要です。そして仲間を大切にしましょう、1人でも時間を掛ければ出来るでしょう、しかし協力すればそれは何倍の力にもなるのです」


魔族は仲間を大切にするだ、それなのにボートルは人族と裏で取引をしてる。仲間の魔族と協力しないで人族を取った、それは私利私欲に走る裏切りだっただ。
ミノーズ殿は、そこでやってはいけない事だと強調させただ、棒で黒板をバシバシと叩き興奮しただな。


「少し熱くなってしまいましたね、次の計算の授業に移りましょうか」


ちょっとテレながらもその他の授業を進め、みんな協力しながら問題を解いたり、分からない所は協力して理解を深めていくだ。
ミノーズ殿はそれを見て嬉しそうな笑顔を見せただよ。
そして2日後、メローナシープルの休暇の日は来ただな。


「じゃあ、ミノーズ殿行ってきますメル」

「頼みましたよメローナさん」


休暇と言う物なのに、お互い真剣な顔をして告げただ。それだけの作戦が待っていると、メローナシープルたちの表情は語っただな。
見送ってくれたミノーズ殿に背を向け、部屋を出てもその表情は続いただ。


「ほんとに頼みましたよメローナさん、相手は先をいってる者たちです。それを越えるには味方が必要・・・ですが今ならば、まだ失敗しても勉強になり取り返せます。どうか、良い方向に向かう事をお祈りしていますよ」


ミノーズ殿の作戦は順調に進んでいるだ。だどもそれは暴力で止められると終わってしまう弱い者だっただよ。
だからこそ、強く屈強な味方を探しにいっただよ。
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