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2章

31話 狭間でバーベキュー

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「ねぇシュン、もういいかな?」


ミーシャにもう少しだと言いながら、肉を裏返してもう少し焼く。
今日はミーシャとの約束通り、バーベキューを楽しんだ後、行事として3日に一度は外で食事をしているんだ。炭で焼くと美味しいとは聞いていたが、ほんとにそう感じる、ミーシャも美味しいと喜んでくれた。
焼けた肉をミーシャの皿に乗せ、自分の分も乗せていき、2人同時に口に入れた、とても美味しいと2人でニコニコだ。


「さてミーシャ、肉ばかりだとダメだぞ、野菜のカボチャが焼けてる」

「え~肉が良いよシュン」


ミーシャは野菜が嫌いではない、しかし肉が美味しいからそっちを優先して食べていた。だが皿に乗せてやるとちゃんと食べる、良い子だと頭を撫でて自分も食べた。
バーベキューをするようになって2ヶ月、ダンジョンの依頼も1つだけだった。鍛冶屋のダンジョンを作りたいと言う物で、鉱石が取れるダンジョンにして、モグラのモンスターを設置した。
それ以降は無くなったので、今日も暇を持て余し外で食事をしてたんだ。だが今日は少し変化が起きた、鎧を着た女性5人がヨロヨロと現れたぞ。


「シュン、あの人達・・・ヒューマンだよ」


人間とは言わないのか?と、自分にしがみついているミーシャに聞くと、頷くだけはしているが凄く怖がっている。そんなに怖い人達なのだろうかと、自分は女性たちを見た。
大きな剣を杖代わりにして歩き、疲労は表情で分かった。
戦う意思はない、先頭の赤髪の女性は、剣を鞘に入れたままだし、見るからに振れるのかと疑問だ、鎧は5人のうち一番丈夫そうな全身鎧で鉄に見える。
他の4人は、皮の鎧を着た軽装の女性が2人、布のローブ姿の女性が2人だ、武器は短剣とナックルガード、ローブの女性たちは木の杖を持っている。


「緑に青に白とピンク・・・みんな髪の色が違うな」


5人とも結構な美人だと思いつつ、近づいてくるので警戒した。しかし女性たちの視線は料理に向いていて【グゥゥ~】という音が止むことは無い。
だからなんとなく分かったよ。彼女たちはお腹を空かせ、匂いに釣られここまできたんだろう。ミーシャも来れたのだから、ここに来れないわけではない。


「あ、あのすみません・・・出来れば、食料を分けていただけませんか?」

「ちょっちょっとサリー!?」


先頭の女性がお願いしてきたが、短剣を持っていた緑髪の女性が止めている。小声で何か話しているから警戒しているんだろう。
見た感じ悪い子たちではなさそうだ、年齢的にはミーシャと同じ位だな。


「そちらが危害を加えないと約束してくれるなら良いぞ、だが武器は置いてくれるかな?自分たちも持ってないだろ」


トングを左右に振って見せアピールした。それ以外の刃物といえば、調理台に包丁が置いてあるくらいだ、焼く物は全部切り分けてあるから、手に取る事はない。
女性たちは分かってくれたようで、武器を地面に置きだした。だがミーシャと同様に全員が警戒をしている。やはり向こうの人は警戒心が強いんだろう。


「お、美味しい!?」


焼き上がった料理を紙皿に乗せ、テーブルに並べていく。女性たちはフォークを使って一口食べて感想を口にし、その後は無言で食べ進めたよ。
吾郎たちとバーベキューをする為に買った、長テーブルと椅子だったが役に立ったな。
ミーシャは怖いのか、自分から離れずにいる、食事は摂っているがさっきとは違い、全然楽しそうにはしていない。


「この人数じゃ量が足りないな、刃物を使うが襲ってこないでくれよ」


勢いよく食べ始めた女性たちに一言告げ、ミーシャと一緒に食材を切り出した。
ミーシャはすごく嫌そうだ、それを言わないのは、自分に遠慮しての事だ、彼女たちに許可を出したからだな。


「ごめんなミーシャ、いやだよな」

「シュンが良いなら平気・・・でも怖いから、離れないでね」


顔を横腹に押し付け、スリスリと寄り添ってきた、震えているのが分かったから撫でておいたよ。
彼女たちを招いたのは失敗だったかもしれない。切り分けを済ませ、焼きながら異世界の旅は出来ないなと思ったよ。
それが分かっただけでも、女性たちに許可を出して正解だったと、前向きに思う事にした。女性たちは焼き終わるまでパンやスープを食し、少しは落ち着いたみたいだ。


「追加持ってきたぞ」

「ありがとうございます、遅くなりましたが私はサリーと言います。紅の聖剣と言う冒険者PTのリーダーをしていて、ランクはブロンズクラスです」


クラスを口にした時、サリーはすごく自信がなさそうだった。恐らくそれほど腕の立つ者ではないんだろう。
彼女の様な目をしている人は何人も見て来た、自分も自信がなかったから分かるぞ。今は評価されているが、自分の作っていた物は、全然ダメだと言われてきたんだ。


「アタシはミサよ、こっちの小さいのはドワーフのトルトルね」

「小さいって言わないでよミサ!ウチはこれでも成人なんだからね」


ミーシャよりも背の低い子が怒り、短剣を持っていた軽装の子につかみかかりだした。
小さいってのは、彼女にとってコンプレックスなんだろう、サリーがやめる様に言うと止めたが睨み合いは続く、他のふたりはやれやれって感じだ。
日常茶飯事なのかもしれないと、自分も思う事にし気にしてない2人に視線を向けた。2人はどちらもエルフだが種類は違うそうだ、白髪の方がリースでピンク髪がパーチェと名乗った、どちらも沢山食べるが無口だよ。


「森で迷ってここに来た?」


ミーシャと向かいに座り、彼女たちの事情を聞いておく、他にも来てしまうのは困るからその対策としてだ、これ以上ミーシャを怖がらせたくない。
少し話して、彼女たちは悪い奴ではないのは感じた、しかしそうでない可能性も出て来るかもしれない、それは許せることではないよ。


「そうなんです、オーク討伐のクエストを受けて、ウォークの森に入ったんですけど、色々失敗がありまして、帰り道が分からなくなってしまったんです」


サリーの話では、霧に包まれていたから場所は分からないそうだ。そしてミーシャの言っていた森ではない、もしかしたら入り口は多数あるのかもしれない。
動物は入って来ている、それ以外の条件があるかもなと考えたよ。


「それじゃ・・・この後戻れないのか?」

「はい・・・それにお礼も渡せるものが無くて、食料を分けてもらったのにすみません」


素直に謝ってくれた顔は、自分にとって安心する顔だった。この子たちは信用できる、そう思ってミーシャに伝えたんだ。
ミーシャもどうやら分かっている様で顔色は良い、向かい合った時に比べ全然表情が違う、落ち着いて食事を取るようになっている。


「こちらも情報を貰っている、報酬の件は気にしないでくれ、それよりも景色を見てどう思うかな?」


自分の家もどうだろうか?ここから見える景色は森の中にないのは分かる、それを確認してもらった。
さっきまでの彼女たちは余裕がなかった、しかし今はお腹も満たされ、休憩も出来たから状況が分かるだろう。


「ここって・・・ウォークの森じゃない?」

「ここは森じゃない」

「そう、途中で森の匂いが無くなった」


エルフ二人の片言を聞いたメンバーは「もっと早く言って」と怒ったよ。
自分もそう思う、だからミーシャの時も思ったんだ、ここは森じゃないってな。


「リースにパーチェ、何か感じなかったの?」


サリーがエルフ二人に聞くと答えが返って来た。なんと転移をしたと言うんだ、そこでまた「何で言わないの!」と騒ぎになったよ。
サリーまで戸惑い騒いでしまっているから収集が付かない、仕方ないと新たにお茶を入れて落ち着いて貰ったよ。


「すみませんシュンさん、取り乱しました」

「サリーたちの心境を考えれば分かるよ。それでエルフのおふたり、戻る事は出来そうなのか?」


そこが重要だと自分は聞いてみた。ふたりは簡単に頷いてお茶を飲み、危険が無いと思ったから言わなかったと付け足した為、また怒られてしまった。
2人は小さな声で、面倒だからと言っていたが、聞かなかったことにした、それを言ったらまた話が進まないからな。


「それならゆっくりすると良い、家の中には風呂もあるしな、2階は使わせられないし、1階の奥は掃除しないと使えない、でも布団を敷けばリビングで寝れるだろう」

「で、でもご迷惑を・・・すみませんお願いします」


サリーは断ろうとしたが、他のメンバーがサリーに目で訴え、それに勝てず考えを直ぐに変えたんだ。
リーダーって大変だなっと、追加のお茶を注いでねぎらった、明日はお菓子とかも用意してやろうと思ったぞ。
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