上 下
36 / 72
2章

37話 ビックリする数値

しおりを挟む
私たちは無事に街に着き、宿を取ってみんなでステータスを見ました。そこで驚きの数値を見ているんです。


《ステータス》
【名前】サリー
【年齢】14歳
【種族】ヒューマン
【職業】剣士
【レベル】15
【HP】8000+2万
【MP】2000+2万
【力】8000+2万
【防御】4000+2万
【素早さ】4000+2万
【魔法抵抗】4000+2万
【魔法】
なし
【スキル】
剣技レベル2
【ユニークスキル】
シュンの加護
【称号】
狭間からの帰還者


「どど、どうなってるのよこれ!?サリー!」

「わ、私に聞かないでよミサ、これのおかげでしょ」


シュンさんのお守りを手放すとプラスの数値が無くなるの。リースとパーチェが鑑定で教えてくれたのだけど、お守りは気休めではなかったのよ。
でもミサは、それだけじゃないって言ってきた、私もそれは分かってるわ。


「レベルが10も上がってるのは変でしょ、それにプラスの方じゃない、基本の数値もおかしいわ」


頷きながら、私はその先を口に出します。
基本ステータスは、レベルが1つ上がると100から25上がるんです。得意な物は100で苦手な物は25なので、明らかに数値が合いません。


「ユニークスキルにある【シュンさんの加護】これのおかげだと思うわ」

「それしか考えられない、でも加護を授ける事が出来るって・・・神様でもない限り不可能なんじゃないの?」


簡単な加護の場合、精霊や教会でも貰えることはあります。だからそれくらいの感覚で授けてくれただけ、神様ではないとミサに答えたの。


「神官みたいなんじゃないかな?すごい人なのよ」


シュンさんが何者なのか分からないけど、改めてすごいと思いました。ミサも反論したいみたいだけど、それよりもお守りを貰えたのが嬉しいみたい、両手で握りしめているの。


「2万も数値が上がるなんて、このお守り普通の付与装備じゃないよ、ほんとにシュンさんってすごいわ」


リサの顔は凄いよりも、恋心が勝ってる感じに見えます。みんなもそうだけど、気持ちはわかります。
2万の数値は、200レベルに上がらないとその数値にはなりません。しかもそんな数値まで上がった人は聞いた事がなくて、伝説の勇者でも100レベルだと言われています。
このままでは、みんなの想いが爆発して、宿で借りた部屋の扉を開けたら、大好きなシュンさんの家に行ってしまうわ。
早速シュンさんの為に動こうと、私は声を掛けみんなの想いを吹き飛ばしたの、更にダメ押しの気合いの声出しをしたわ。
昼食の店に向かいながら、今後どうしようかとみんなに聞きました。


「やっぱり、開拓村を受けるのが良いよ、そうでしょみんな」


ミサの押しは開拓地のクエストで、冒険者ギルドが領主と力を合わせ、新たな場所に村を作ると言う政策です。でも危険だし大変なので誰も受けず残っているのよ。
私たちが受ければきっと成功します。みんなは賛成みたい、家を建てれば誰にも気づかれず、私たちだけでシュンさんの所に行けるからよ。


「ちょっと待ってミサ、開拓村って行くのは私たちだけなのよ、適当な討伐クエストに向かって、その村に種を渡していった方が広がりは早いわ」

「え~でもさぁ、植えた事のない種じゃ成功しないかもよ、途中で様子も見れないじゃん」


失敗する確率が高いと私もそこで気づきました。シュンさんと連絡を取れる私たちがいないとダメなのも分かるわ。
でも、こちらでの種の成長速度も確認したい、それなら数をこなし、色々な場所で使った方がいいのよ。
対策として同行者を募るしかない、でもそれは成功しないのが分かっています。今は冒険者が少ないですから、変な奴らしか残ってないのよ、だから連れて行きたくないわ。


「じゃあどうするのよサリー」

「う~ん・・・報酬を割り増しすると変なのが更に増えるし、かといってこのままじゃダメなのよね」


腕を組み考えたけど結論は出ません。お店に入っても結局まとまらず、食事が来たので食べています。
美味しくないっと、みんなの声が揃ってしまったわ。


「やっぱさぁ~一度戻ってシュンさんに知恵を借りようよ」

「知恵を借りるにも方向性は決めたいわ、開拓地の事をギルドに聞いてみましょ」


開拓地に行くのが一番、ここまでは決めました。問題はあるけど、少しでもシュンさんに良い報告をしたいんです。


「おらっ!邪魔だガキども」


普通の味の食事を進めていると、入り口付近で男の大きな声が響きました。店の人たちが注目したんですけど、そこには倒れてる子供たちがいたんです。その子を支えてる子たちが男性を睨んでいます。


「何だガキども」

「お、オイラたちは見てただけじゃないか!!何がいけないんだ」


どうやら窓から子供たちが店の中を見ていたみたい、あの男はそれが気に入らなくて蹴ったのよ。それも、わざわざ店に入る様にして注目させたのよ、嫌がらせにも限度があるわ。


「いるだけでも目障りなんだよ、きたねぇ孤児ども、さっさとどこかに行きやがれ」

「うぅ~・・・ネネ、行こう」


倒れてる子に肩を貸して、子供たちがフラフラと店を出て行きました。店の誰もが見てるだけ、子供たちを心配する人はいないわ。
男たちは怖いし暴力に出てくる。子供たちを助けても自分が不幸になると見て見ぬふりね。
男もそれは分かっているわ、店を見回し嫌な笑みを浮かべて席に着きました。
私たちはそれを見て、助ける人が誰なのか分かって店を出たわ、見て見ぬふりをする大人なんて最低よね。


「平気かネネ」

「うん、ごめんねアンソ」


店の横道で子供たちが座り込んでました。私は子供たちに声を掛け、怪我を治していいか聞いたの。子供たちは怯えていたけど、アンソと呼ばれてた男の子は、お金は出せないと言ってきたわ。
質問に答えればお金は要らない、出来るだけ笑顔で伝えると、男の子は不安がりながら了承してくれたわ、パーチェにお願いして先に回復してもらったの、戸惑ってた子供たちだけど、元気になっていく女の子を見ても笑顔が出てきたわ。


「出来た、もう大丈夫」


回復した女の子が立ち上がると、みんなはホッとしてます。そのタイミングでミサがさっきの店で買ったパンを出したわ、子供たちは見るだけで動かないけど、食べたそうなのは目で分かるわ。
お腹が空いてると話が出来ない、だから食べなさいとリサが差し出すけど、それでも受け取らないのを見て、リサは子供たちの胸にパンを押し付けて離したわ、落ちそうなパンを子供はキャッチしてくれた、もうそれはあなた達の物だとリサは得意げね。


「いいから食べなさいよ、話しが出来ないでしょ」

「か、金は出せないからな、絶対だぞ!!」

「だから要らないってば、アタシたちはねあなた達に聞きたいの、ここを離れて一緒に村を開拓しない?」


子供の数もそうだし、仕事が出来るかも問題だわ。でもそれよりも重要な事だと、リサも私たちも決めた事よ。
この子たちを見捨てるなんて出来ないの、私たちも弱かったから分かるのよ。


「本気かよあんたら、オレたちはガキだぞ、仕事なんて出来る事は限られてる」

「なんの問題もないわ、そうよねサリー」

「ええ、畑が耕せれば良いわ、食事もしっかり取れるし、今よりは良いはずよ。他にもいるなら呼んで構わないから、私たちは子供でもしっかりと働く人手が欲しいの」


意見してくれた男の子は「それ位なら」と答えてくれたわ、それなら問題ないって、私は男の子のボサボサした頭を撫でました。
素直な子供たちなら、変な大人よりも頼りになる、力が弱くてもシュンさんに頼めば何とかなるだろうし、シュンさんだってきっとこうしたわよね。


「じゃあ早速クエストを受けに行きましょ」


子供たちとは、他に仲間がいるらしく途中で別れました。明日買い出し等をするから朝に宿に集まる様に言ったの、もちろん食料は買って渡したわ、信じてもらう為にもね。
冒険者ギルドに着き、受付で開拓地のクエストを受けると、かなり驚かれたわ。


「ぶ、ブロンズクラスで地方に行くのですか?・・・ほんとに?」

「ええそうよ、ランクアップはしばらくできないけど、成功すれば貢献度はかなりの物でしょ?」


成功して戻ってくれば、その時点で2つ上のスチールになれるわ。内容次第でその上のミスリルだって夢じゃない。数年か数十年掛かるんだもの当然よね。


「決意は固いのですね・・・分かりました受理します。詳細はギルドカードに登録しましたので、後ほど確認してください。開拓に必要な追加の道具は、10日後に届くと思います」


必要物資は受理されてから準備されるそうです。私は了承してギルドの待合所でみんなとカードの確認に入ったわ。
内容は小指大陸の第2関節地、山の多い土地で名前はまだなく、モンスターも多数いる事が分かっているわ。


「平地が多いから、その土地に村を作りたいか・・・家も何も無いって事よね?」

「そうねミサ、しばらくはテント暮らしは覚悟しなくちゃだわ」


シュンさんの家に戻るのでその心配はありません。でも子供たちだけ残して行くわけにいかないのよ。
子供たちならシュンさんも許してくれるかもしれないけど、出来るだけ迷惑を掛けたくないの。ミサもそれが分かってるみたい、がっかりしてるわ。


「おいおい!良い女が4人もいるじゃねぇか、奢るから飲みに行こうぜ」


話を済ませ宿に戻ろうとした時、男が3人私たちのテーブルに近づいてきたわ、私たちは5人なのに4人と言ってるから誰かが対象から外れてる。ミサはトルトルだと思って指をさして笑ったけど、トルトルはミサじゃないの?とか言ってわね。
その間にテーブルまで来た男たちは、嫌な笑みを浮かべてる。私はお断りって答えたてやったわ、そしたら男の1人が肩に手を置いてきたわよ。


「そんな事言うなって、ブロンズクラスの新人を指導してやろうってんだ、スチールクラスの先輩がな」


良く聞くと男の声に聞き覚えがあって、顔を見たら食事屋でネネを蹴った奴だった。
私は「断ってるでしょ」っと肩の手を払って睨んでやったわよ。


「て、てめぇ優しくしてやれば生意気だな、ちょっと教育してやる」


男が拳を振り上げ、私の顔を攻撃しようとしてるみたい、弱そうでゆっくりに見えるから、私はどうしたものかと考えてます。痛いのは嫌だけど避けても更に暴れそうだもの。
私はシュンさんが使っていた、アイキドウという拳法をマネることにしたわ。座ったままで男の拳に少し手を添え、こいつの仲間の顔に軌道を合わせたの、見事に拳は仲間に当たったわ。


「いってぇーな、ザルン何しやがる!」

「す、すまんジェクサ、手元が狂った」


男たちが言い争いをしてる内に、私たちは立ち上がり退散しようとしたけど、そうはさせないと男たちが先回りしてきたわ。


「やってくれたな女、こうなったら強引に連れてくぜ」


結局こうなったかと、ため息を付きます。
男たちは武器も抜いてしまい、職員が男たちを注意してくれたけど、黙ってろと剣を見てびらかし始めたわ、職員はそれを見て離れていったわね。
これで私たちが悪くないって分かるし、こいつらは処罰もされるわ、もう良いかとみんなに合図よ。


「どうした小娘ども、武器を抜きな!!教育してやるぜ」


余裕を見せてる男に、私たちはため息を付きます。こんな奴らの相手をしてる暇はないのよ、早く宿に戻ってシュンさんの家に帰りたいの。


「サリー誰が相手する?アタシがやっても良いわよ、あいつらムカつく」


ミサが指を鳴らして張り切り始めたけど、やり過ぎになりそうなので、私が相手をするって前に出ます。男たちは私だけで相手をすると分かり笑ってる。
忠告をしても良いけど面倒なので、あの男の顔面に拳を当てて吹っ飛ばしてやったわ。左右の2人は、いきなり間合いを詰めた私を見て、焦って距離を取ろうと下がったの。


「な、何をしやがった」

「食らえ!」


1人は質問だけで震えだし、もう一人は愚策にも剣を振り上げて来た。振り下ろす前に男の顎に拳を当てたから、男は一回転して倒れちゃった、もう一人は怖くて動いてないわね。


「あなた、こいつら邪魔だから運びなさい」

「はは、はいっ!!」


残った男を睨み、倒した奴らの後始末を任せて私たちはギルドを出たわ。ミサとトルトルは「これだから男は嫌い」とか言ってるの、私も同意見です。


「やっぱりシュンさんとは違うね」

「そうよ!ウチが認めたんだから当然よ」


話がシュンさんになり、みんなで楽しく話しながら宿に向かいました。
あんな奴らの事なんて、楽しい話題の前では頭から飛んでいくほど些細な事だったんですよ。
しおりを挟む

処理中です...