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2章 のんびり

25話 視察団

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「周りの領主様たちも味方に付けたのですか?」


タバサ様のお話を聞き、統括者の了承以外に周りの領主を取り込んだと聞かされ、街がかなりあわただしくなるのが予想できたんだ。
タバサ様は、主導権を取ったと喜んでるけど、僕はとても心配です。


「あらアオ君、あまり嬉しそうじゃないわね?」
「あのタバサ様、宿の数とか足りますか?」
「あっ!?」


気付かなかったと、タバサ様は青くなり始め、時期をずらす様に提案しました。
最初だから、恐らく大人数にはならないと、タバサ様は予想してるけど、相手の出方が僕の想像通りなら、まずい事になると指摘です。


「つまり、こちらの不手際にしたい訳ですわね」
「はい、その程度の手腕だったとか言われ、次の会議前に統括者様に告げ口をされかねません」
「確かに、気に入らなかったらやりますわね」


ワタクシならやるとか怖い事を言っているタバサ様に、藁に囲まれた場所を作ることを提案します。
そこなら力の断片を見せられるし、向こうも警戒する事間違いなしです。


「それは良いですわね」
「はい、準備は出来てるので、タバサ様たちが発つ時、一緒に連れて行ってください」
「それは楽しみ、一体どんな品なのですかしら?」


連れて行くという言葉に気付かず、藁の壁でも持って来ると思ったのか、僕が藁人形を出すとタバサ様は悲鳴を上げてしまった。
騎士さんたちも剣を抜き警戒したけど、僕は直ぐに止めたんだよ。


「な、なんですのよそのモンスターは」
「これはモンスターではなく人形です」
「「「「「に、人形???」」」」」
「はい、僕の指示通りに動いてくれて、とても強いんですよ」


藁人形たちの功績をお話して、タバサ様たちは驚いてしまいました。
でも、藁人形で壁を作り守りを固めると説明すると、頼もしいと喜んでくれたんだ。


「ちょっと待ってくださいタバサ様」
「なんですのよアンジー」
「危険です、こんな訳の分からないモノに守らせるなんて」
「そんな事はありませんわよアンジー」


騎士さんに注意するタバサ様は、僕が使うからとか、なんの説得にならない事を言い始めたよ。
でも、それを聞いた騎士さんは、確かにとか納得しちゃったんだ。


「良いのかな?」
「いいのよアオ、あれは一言だけど、とても深い内容が詰まっているわ」
「そうかなぁ~」


ミドリも村長も頷いていて、僕は良く分からず、首を傾げて考えてしまいます。
そんな考え中も、タバサ様の歓迎会をする話に変わり中断する事になり、何を出そうか村長に聞かれたよ。


「この村の事が分かる様にしたいだろアオ?」
「そうですね、そうすると・・・やっぱり、それぞれの料理とかが良いですね」
「そうだな、後加工品も良いと思うぞ」


村長は、お酒を所望しているようで、それも出す予定なのは伝えました。
ミドリがホドホドにと肘を突いて来るので、大量には出さない考えです。


「す、凄いわね」


宴会の準備が始まると、タバサ様の驚きの顔が普通に見れました。
騎士さんたちも、タバサ様の近くを離れないけど、信じられないのは同じみたいです。


「ここでのお祭りは、大体こんな物ですよタバサ様」
「こんなに料理が並ぶとか、貴族のパーティーみたいよアオ君」
「それは嬉しいです。自分で好きな品を小分けにして食べるので、タバサ様もどうぞ」


説明を聞いたタバサ様は、騎士の1人(アンジーさん)に指示を出して料理を取りに向かって貰ったよ。
アンジーさんが騎士のリーダーの様で、アンジーさんが戻ると、他の騎士さんたちも順番に料理を取りに動いたんだ。


「美味いっ!!」
「ほんとに・・・初めての料理ばかりですわね」
「酒もですよタバサ様」


タバサ様も気に入ってくれたようで、手が止まりません。
騎士さんたちは、お仕事なのでホドホドだし、お酒なんて1杯だけだから、お持ち帰りの品を渡すことを思いついたんだ。


「お土産と言えば、やっぱり良い箱に入った品だよね」


お酒のお店とかにある木箱に入った日本酒を出し、騎士さんたちに手渡すしたら、どうして?って顔されます。
公務外で飲んでくださいと伝えると、何だか顔を赤くしていました。


「どうしました?」
「いや・・・とてもありがたい」
「た、楽しみに頂くわね」
「気に入ったら、次は買ってください」


勿論買うと言ってくれるけど、タバサ様の騎士さんたちだから、機会のある時に忘れずに渡そうと考えてる。
それに、他にも沢山あるんだし、楽しんでほしいと料理も勧めたよ。


「すまない、タバサ様の護衛があるから、食べ過ぎる訳にはいかないんだ」
「そうでしたか・・・では、旅の途中でも食べれる品を用意しますね」


タバサ様にも頼まれ、僕は喜んで準備する事を伝えます。
でもね、僕はそこである事を提案する事にして、その内容を聞いてタバサ様たちは唖然としたよ。


「皆さんの驚きも分かります、ですが戦いが広がるなら必要になると思うんです」
「で、でもねアオ君、軍の食料ってその都度国が集めるんだぞ」
「それは分かってますよアンジーさん、僕が言ってるのは、その時間を短縮しようという話です」


非常食も作れる僕にとって、長旅にこそ力を発揮すると熱弁し、タバサ様に提案したんだ。
唸るタバサ様に、どれほどの品なのかもまずは試して貰おうと、帰る時に使ってもらうお願いをしました。


「味も美味しいですし、きっと気に入って貰えます」
「アオ君の話が真実なら、ほんとにすごい事ですけど、ちょっと信じられませんわ」
「最初はそうですよね、ですので少しずつ試してください」


そうすれば、きっと気に入って貰えると、僕はニコニコが止まりません。
お土産も一緒に用意して、タバサ様たちが出立する時間には、藁人形たちも整列して大人数になったね。


「これは、大所帯だなアオ」
「待機収納から出さないといけないので、こんな物ですよ村長」
「いったいどれくらいいるんだ?」


村長の質問に、僕は素直に答えます。
藁人形【小】10000体
藁人形【中】1000体
藁人形【大】100体


「そ、それは凄いわけだな」
「更にですね【特大】というのも作れる様になりました」
「なっ!?」


今回は数が出来てないから出さないけど、20m級の藁人形なのが分かっています。
遠くの村にはそいつを行かせていて、そろそろ帰って来るから、ちょっとワクワクしているんですよ。


「そんな凄いのもいるのか?」
「はい、戻ってきたらお見せしますね」
「ああ・・・楽しみだ」


中が宿泊施設にもなってて、ワンルームだけどとっても居心地は良かったんだ。
きっと、子供たちもゆったり出来てると想像し、出立するタバサ様に手を振ります。


「それにしてもアオ、あの数に指示出しとか良く出来るわね」
「出来る訳ないでしょミドリ、あの子たちにはロボット大原則3箇条を指示しただけだよ」
「「ロボット大原則3箇条?」」


村長も分からないようだけど、分からなくて当然ですから、僕は説明に入ります。
指示を出さずに大原則に沿って行動し、命を取らない代わりに処罰を待つんだ。


「ほう、なるほどな」
「なので、街ではきっと活躍しますよ」


【人間に危害を加えてはならない】【人間の命令に従がわなければならない】【自己を守らなければならない】は、どこかの映画で見たけど、とても良い法則です。
【悪い奴には容赦するな】と、僕の秘密の指示もあるけどがんばれっと、僕は藁人形にも手を振ります。
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