荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー

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最終章 平和

63話 忍び寄る策略

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「父上!」

「おお、良く帰って来たアランバレス」


王都では今、捕虜になった者たちが帰ってきて、その者たちを労うパーティーが開かれていた、そしてその中で一番位の高い王子と、国王は抱き合い、喜びをかみしめていた。


「少し痩せたか?体調の悪い者はいないと聞いていたが」

「はい父上、捕虜生活は悲惨な物でした、ぜひ挽回の機会をお与えください」


王子がすぐに跪き進言した、これは戦いにすぐに参加したいと言う物だ、しかし戦争は終わり、次の機会となると、和平のための開拓地遠征しかない、国王は過酷な生活になると分かっているから、王子には行ってほしくなかった。


「息子よ、そなたは帰って来たばかりだ、ここはまず休むことが大事だぞ」

「しかし父上、あの国を野放しにしていては、我が国は危険です、早急に作戦会議を開き、戦いの準備をしなくては」


王子は、和平協定を結んだ事は知っているはずだった、しかしそれを破り、攻めようと言っているのだ、それは捕虜になった半数が秘めていたもので、遠くのテーブルで頷いていた。


「それはダメだ、余は発明王に約束したのだ、和平を結び平和を築くと」


国王が遠くの窓を見てそう言った、その言葉は王都にいた大臣や貴族には、とても重く決意に満ちているように聞こえた、しかし今帰って来た者たちには響かなかった。


「どうしてもダメですか父上」

「お前は疲れているのだ、落ち着いて考えれば平和が一番なのが分かるだろう、今は宴を楽しみ、ゆっくり休むといい」


国王はそう言って、他の者の所にねぎらいに向かった、しかし王子はそれを鋭い目で見ていた。


「やはり父上はダメだ、平和だと、ふざけるな!そもそも発明王とか言う、何処の馬の骨とも分からん奴の力を借りて、そいつの兵器を使ったからこうなったのだ、オレの作戦は完璧だった!」


パーティーの途中で、バルコニーに出た王子が、怒りをあらわにし叫んでいた、もともと交渉は終わり、戦争の準備をして海で戦う予定だった、王子の作戦では負けが決まっていたが、発明王の再交渉の話を聞き、作戦を変え襲撃する事にし、王子はその作戦に相当な自信を持っていた、だが結果は惨敗、捕虜になり屈辱を味わったのだ、そしてそれは、捕虜になっていた者たちも同じだった。


「王子、私めに策が」


1人の貴族は王子の横につき小声で話した、そしてそれを聞いて王子は、表情を変え笑顔になりだした。


「良い作戦だ、それならオレがこの国のトップにもなれる、だがそう簡単に、バイトとか言うやつをおびき出せるのか?」

「はっ私にちょっとしたツテがあります、必ずや王子の期待に答えて見せます」


貴族が跪き王子に成功を誓った、王子はそれを笑顔で受け、バルコニーからパーティーに戻って行った。


「ふぅ~何とか了承を貰えたか」


作戦を提案した貴族は、手すりに手を置いて安堵していた、そしてそれを他の貴族が見て、すぐに声を掛けた。


「ケーニッツ伯爵、平気なのですか、あんな約束をして」

「メクドイア子爵、安心したまえ、成功しなくても、責任はあの使えん王子だ、我らはただ言われただけ、誰にも気付かれん、王妃の時もそうだったろ?」


そう言って伯爵は怪しい笑みを浮かべた、王妃の病気は毒によるものだった、若い国王の重い腰を上げ、北の戦争を早めるために毒を盛ったのだ。


「ですが、あれは発明王が治したと」

「そうだ、おかげでちまちました戦争が続くと思っていた、しかし国王の機転で、発明王の新兵器を使って倒すことが出来た、予定とは違ったが功績は挙げられたな」


ワインを飲みながら喜んでいた、その顔は、誰もが危険と思うような笑みだったが、その場にいた者たちは、互いに見合っていて気付かなかった、ただ一人を除いては。


「悪いが俺は参加しない、辞退させてもらうぞ」

「え、エンタル殿!?」


元聖剣クランのエンタルだ、アーティクルと、ナナガンサーチはパーティーの方にいて、貴族のダンスの誘いを断るのに忙しかった。


「そなたがいないと始まらないのだがなエンタル殿」

「伯爵殿、戦争をするにしてもあの国はやめた方が良い、ここは待つべきだ」


エンタルがそう言ったので、貴族たちは動揺を隠せない、しかしケーニッツ伯爵だけは、その動揺を察知しすぐに答えた。


「最強の冒険者と言われたエンタル殿とは、思えない言葉だ、理由をお聞かせ願えるかな?」

「簡単なことだ、発明王の力を借りたのに勝てなかったからだ、俺はあいつの力を良く知っている、だがそれでも勝てない者はいた、上には上がいるんだよ伯爵、そんな相手が和平を結んでくれた、ここは味方になって、他の奴を蹴散らした方が得策だ」


そう言ってエンタルは伯爵を睨んだ、何か意見を返してみろと言わんばかりだ、今いる貴族は、発明王の兵器で北の国に圧勝し、その勢いで勝てると思っていた、しかし結果は完全なる敗北、力の違いを思い知らされたばかりなのだ。


「だから俺はここを離れる事はしない、次の敵が来るまで牙を磨き、自分の愛する者たちと暮らすのも悪くない、牢獄で一緒にいてそう思うようになった、そう言う事だ」


そう言ってエンタルは、パーティーに戻って行った、貴族たちはエンタルにアーティクルと、ナナガンサーチが泣きついているのをバルコニーで見ていた。


「ふ、ふん!牙をもがれた者は哀れだな、メクドイア子爵殿、まさかとは思うがそなたらは違うよな?」


伯爵がそう言って貴族たちを睨んだ、半分近くがすでに戦う目ではない、しかし伯爵を裏切るわけにはいかず、頷いていた。


「それでこそ我が国の貴族、では私は発明王を遠征隊に入れるように手配する、そなたらは兵を集め、遠征隊に参加させるのだ、遠征隊をそのまま兵団にして、内側から攻めるぞ」

「「「「「はっ」」」」」


こうして裏で作戦が始まった、そしてそれから1週間後、遠征隊が組まれ海を渡った、その数は2万5000人、それが全員兵士からの志願者であった。


「ようやく第一陣が出発か」


国王が自室から、港町に向かう兵の列を見て呟いていた、それを専属メイドが無言で聞いていたが、返事をすることはない。


「父上!そろそろ第二陣遠征隊の選抜会議です」


王子が部屋に入ってきてそう告げていた、その顔はとても明るく、戦いで受けた心の傷は癒えたと見えるほどだった。


「そうか【ゴホゴホッ】今行く」


国王が少しせき込み、王子の後に続いて部屋を出た、そして会議が始まり、第一陣で参加しなかった領地から、均等に兵と平民を送ることになった。


「ではよろしく頼む!?【ゴホッゴホゴホ】」

「「「「「陛下!?」」」」」


急にせき込んだ国王を皆が心配したが、国王本人が手で心配ないと示した為、誰も心配をしなかった、しかし第二陣が出発するころには、国王はベッドから起き上がれないほどになっていた。


「父上平気ですか、オレです」


第二陣の隊長に任命された王子が、国王に挨拶に来たが、すでに国王は、目を開けるのがやっとの状態だった。


「バルバ先生、何とかならないのか」

「王子様、私にはどうすることも出来ません、バイト殿の魔道具を使う事を許してくだされば、原因が分かるはずなのですが」

「それは許さん!あの者は信用できん、オレが負けたのもあの者が原因なのだぞ」


発明王の治療魔道具を、王子が使う事を禁止していた、医者が国王を救おうと進言しても、今の状態では王子の許しがないと、使えない状態だったのだ。


「しかし、このままでは陛下のお命が」

「分かっている!だがあれは試作品と聞いた、そんな不確かなモノを、父上に使うわけにはいかんだろう、今回の遠征では、発明王も一緒という話だから、他国の支援をしないで、発明をさせるつもりだ」

「そ、そうでしたか、では急ぎお願いいたします、このままでは、国王様はもう長くありません」


そう言って一礼して医者が部屋を出た、そしてそれを見て、王子はにやりと笑みを浮かべていた。


「父上、もう直ぐ苦しくなくなります、どうか安らかにお眠りください」


笑いながら国王の隣で呟き、部屋を後にするのだった。
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