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1章 誕生

1話 気づいたら転生

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僕ご気づくとの目の前は真っ暗で、光が見えて来ると声が聞こえて来ました。


「生まれましたよ奥さん、元気な男の子です」


白衣を着た男性は、満面の笑顔で僕を抱き抱え女性に見せます。ベッドに寝ていたその女性は、息を整え喜ぶかと思いましたが、どことなく心配そうな顔をしています。


「先生声がきこえないわ、その子は平気なの?」
「心配しなくても平気ですよ奥さん。こう言った場合はこうするんです、ほりゃっ!」


白衣の男性は、僕を逆さに持ちお尻を叩いて来た。
女性は良くある事だと知り見守っていましたが、大きな声が聞けると期待していて止めようともしない。


「おぎゃー!(いてぇー!)」


大声て叫んだ僕だけど、叩かれたのは赤子になった僕で、これは生まれ変わりをしていたんだ。


「おぎゃーおぎゃー(なんだよこれ、何なんだよ)」


元気な声(悲鳴)を上げ、僕は泣き出して止まらない。精神は25歳の大人なのに、体が言う事を聞かなくて、僕はこれでもかと泣きましたよ。


「どうです奥さん」
「ありがとう先生」


女性は産声が聞けたと安堵していました。だけど、ここで一人だけ状況がわかっていない者がいて、泣きながらも状況を理解しようと必死でした。そう、それは僕だよ。


「おぎゃーおぎゃー(僕はどうなってこうなったんだよ)」
「いい鳴き声だ、この子は丈夫に育つでしょう」


僕の心境を理解せず、白衣の男性はそう言って赤ん坊になってる僕に布を巻き女性に手渡しました。女性は安堵した表情で赤ん坊を抱き抱え笑顔になったんだ。
彼女の顔はとてもげっそりしてて、体力の限界だったのが見て取れた。それだけの出産が今ここで起きたんだ。


「ああ、あたしの坊や」
「あぶぶ?(坊やってどう言うことだよ?)」


そう、ここで僕の意識がはっきりと覚醒し理解した。
体も自由に動かせるようになって来て、お尻がひりひりと痛かったからさすろうとしたけど、手が届かなかったよ。


「あらあら、もう泣いてはくれないの?ずいぶん大人しいのね」
「あぶぶ、あぶ?(この女性、なにを言ってるんだ?)」


僕はそう思って辺りを見回し、ちょっとまずい雰囲気を感じたよ。


「あぶあぶぅ。んきゃきゃたい(木の壁にテーブルも布団もボロボロだ。ぜんぜん見覚えがないのは当たり前だけど)」


僕が覚えているのは、ネットで注文した旅行のチケットを玄関で受け取った所までで、あの時は上機嫌で喜んでいたんだ。


「あぶあぶぶ?あぅ~(嬉しくて死んじゃったのかな?まさかね)」
「んふふ、かわいいわ」
「よかったですね奥さん、では念のために血を一滴取らせてもらいます」
「あうう(いてて)」


白衣の男性が僕の指に針を刺し、血を銀色の板に垂らしました。僕はそれでも泣くことはなく、じっと板をみていたよ。


「これでよし、結果は後日になります、お疲れさまでした奥さん」
「ええ、ありがとう先生、でも不思議な子、ほんとに泣かないわ」


あの銀色のプレートは何だったのかな?それにここはどこなんだろう?っと、僕は赤ん坊の体で思っていました。
僕の最後の記憶には、まだ先があったと思い返してみます。船の旅行中で楽しい日々を過ごしていた、そしてその船が難破して・・・。


「あうっ!!きゃきゃい(そうだっ!!海に沈んだんだ)」


僕は思い出してショックを受けたよ。そしてこれは、僕が好きなラノベと同じで、生まれ変わっても前世の記憶がそのままと言う状態だ。


「あうぅ、たたいたい・・・あぶぶぅ~(そして、この人が母親・・・きれいな人だけど、周りをみる限り裕福ではないね)」


家を見るとかなりボロイと分かる、木の家はすきま風がたまに吹いているし、平民かそれ以下かもしれません。


「あぶぶ、あぶ(これはチート能力に期待しないとまずいね)」
「あらあら、泣かないのに良くおしゃべりする子ね、早くママと呼んでちょうだいね」


母親がそう言っているのも理解できた僕は、チートに期待しつつ眠りについた。赤ん坊の体はあまり長いこと起きていられないようだったよ。


「[はぁ~それにしても退屈だよ]」


次の日から僕は、喋らないで頭の中で考えることにしました。だって僕が喋っていると母親が来てしまうんだよ。「おしめでもご飯でもないのね」とか言って笑ってお世話をしてくれる。
それに母さんは、針の仕事をしてて忙しいんだ。用もないのに迷惑をかけてるみたいで、僕は凄く嫌なんだ。


「[ステータスを見れないから、チートを持ってるかも分からない、魔力は少し感じられるけど、使うのは危険だよね]」


そう言った訳で、僕は毎日ぼーっと過ごしたんだ。でも、それは一週間しか持たなかった。
この世界の常識で、とても幸運な出来事と言われる事態が起きた。
その日はいつもと変わらない、良い天気の日だったよ。朝早くに家のドアをドンドンと叩かれて母さんが扉を開けた、そこには僕の知ってる人たちが立っていたんだ。


「あら先生?それにケビンも一緒なのね、どうしたの?」


そう、僕が産まれた時のお医者さんと父親がいたんだ。僕の父親の名前はケビンっと言って、母親はマイナと言です。
つぎはぎだらけの服を着て、ケビンは炭坑で働いてるらしく、ほとんど家にいません。それに給料も安く、母親も内職の様な針仕事をしてるんだ。
父親のケビンが帰ってきた日は、母さんが嬉しそうにしてて、ケビンの休日を知った。その日は2人のイチャイチャが見れて、2人は愛し合ってる良い夫婦なんだと幸せを感じました。


「それがなマイナ、うちのアレシャスにはダンジョンヒューマンになる素質があるらしい」
「え!?」
「これを見てください奥さん」


母さんがすごく驚き、何処か悲しさに溢れた表情でした。僕は見ても分からなかったけど、ダンジョンヒューマンなんてもっと分からなかった。


「[ダンジョンは分かるけど、それとヒューマンってどう繋がるの?]」


そう思っていると、お医者さんが銀のプレートを母親に見せたんだ。


「そ、そんな!?」
「[確かあれは銀のプレートだったはず、真ん中だけ金色に変わってるけど、もしかしてそれが検査だったのかな?]」


母親であるマイナは、暗かった表情を更に青ざめさせました。対してお医者さんとケビンは笑顔です。
何でこんなに違うのか、それは僕のわからないダンジョンヒューマンが関係してます。一体なんなんだよっと、3人の話に耳を傾けます。


「しばらくしたら使いが来るでしょう、詳しくはそのお方に聞いて下さい。いや~めでたいですな、ハハハハ」


お医者さんは笑って家から離れて行きました。ケビンは家に入りドアを閉めると、母さんがいつもの様にケビンに抱きつきました。でもいつもと違うのは母さんで、僕はその表情をジッと見てたよ。


「マイナ、これで生活には困らないぞ、良かったな」

「ねぇケビン、私は心配よ、あの子がかわいそうだわ」


二人のそんな会話が聞こえ、僕は何故そんな違いが出るのだろうと不思議でした。でも、それから2人は小声で話す様になり僕には聞こえなかった。


「[言い争いはないみたいだけど、本当にどうなってるんだろう]」


そんな疑問を持っていた僕だけど、次に母さんを見た時、何か大変な事になってると理解します。
だってあの幸せそうだった女性は、もうそこにはいなかったんだ。
それから、母さんと父さんは仕事をしなくても良くなり、僕たちの生活は裕福になった。だけど幸せだったかと言うと、そんな事はありません。
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