上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー

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2章 1年1学期前半

24話 僕たちの6日間攻略その3

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「我が主、もうダメです!撤退を」
「ピエール!!」


僕がタイダルスイリュウの大きな口に食べられる直前、ピエールが手を引っ張って助けてくれた。でも代わりにパクリと行かれましたよ。
僕はそのままの勢いで撤退用の門に飛び込む事が出来て、からくもダンジョンを脱出したんだ。


「くそ~また負けた」


いきなりすみませんが、僕たちはあれから何度もタイダルスイリュウに挑み、その度に負けて撤退を繰り返しています。


「え~第6回タイダルスイリュウ討伐会議を始めます。でもその前にピエール、さっきは助けてくれてありがとう、それと身代わりにしてごめん」


ダンジョンから戻って来て、僕たちは生活ダンジョンの大会議室でピエールに謝り感謝の言葉を伝え、みんなにも同じ様に繰り返しました。
僕の身代わりではないにしろ、タイダルスイリュウに食べられ胃液でベトベトになったり、大きな尻尾で粉みじんにされた者もいたんだ。


「なにをおっしゃるのですか我が主、我は当然の事をしたまでです」


そう言ってくれるけど、あれはトラウマになるほどだと、ラビットマンたちがヒソヒソ言ってる。
食べられる事も同じくらい恐怖で、中でも火龍たちはかみ砕かれているからか、とても縮こまっているよ。


「我が主を守れた事、拙者は光栄に思います。それで今後はどうされるのですか?」


ピエールがいなければ、僕はタイダルスイリュウに食べられて死んでいました。事前に出しているとは言え、毎回門に逃げれるのは皆のおかげで、これで6回目の反省会になっているんだ。


「もう3日だからね、どうしようか?」


既に神龍6体を倒そうと言う目標は断念しました。だからこいつだけは倒したいと僕は必死なんだよ。
今度の相手は水中戦がどうしても必須で、海のように広い水の中での戦闘が主軸となり、当然僕たちの動きが遅くてかなり苦戦しています。


「やっぱり水が1番の敵だね、火龍隊とニャンコ隊は水が嫌いだし、ゴーレムたちなんて、水に濡れると動けなくなるのが痛い」
「やはり無理があるのではウサ?」
「そうピョンそうピョン。空気を吸える道具があっても、動きがどうしても遅いピョン、水と一緒に飲み込まれておしまいピョン」


みんな1000m級のネッシーに恐怖を感じているようで、思い出してぶるぶる震えています。
僕も自分の身体よりも大きな、ギョロっとしたあの目に見られるとかなり怖いと思ってしまう。


「泳いで移動してるから、どうしても敵の方が早いのもなぁ~」


問題として、僕たちの対処が何手も遅れてしまっている事にあります。
そこを解決しないと戦いにもならない、そんな結論が出ているんだ。


「やっぱり、船がいるかな?」
「それだけではないでゴザルよ主君、剣速も水の中では鈍るでゴザルから、強い武技は必須でゴザルな」


鬼神のイエロー君が自分の刀を抜いて言ってきます。僕もそれは思っていて、スイリュウはあまり堅いモンスターではないのに、僕たちは斬る事が出来てないんだ。
水中なのでどうしても水の抵抗が高く、武器の威力が半減しているんですよ。


「何処も問題だらけか・・・これは、ちょっと無理かな」


リビング隊と火龍隊に空から攻めて貰う手も使い、前回は相手に大きな雄叫びを上げさせる大ダメージを与えた。
でもそこからはボロボロで、僕たちはあきらめムードです。


「水の中でも空気を吸える道具を作って、勝てると思ったんだけどなぁ~」


同じ神龍の麒麟の体力を考え、ここまでボロボロにされている今の状態では勝てないかもっと考えてしまう。


「雷属性の武器も水の中じゃ、僕たちが感電して自爆してるし、せめて水から出せれば」


時間はまだ昼なので、もう一度挑戦は出来ます。ここは諦めて次のダンジョンに行くべきかもしれません。
その為には、まずこの落ち込んでしまっている空気を変えないといけません。


「みんな暗いよ、昼食を摂って気持ちを切り替えようか」
「あのぉ~ちょっとよろしおすぇ」


昼食だ!?っと、みんなが喜んだその時、今の空気にそぐわないおっとりした声が掛かり、みんなの視線は一気にそちらに向きました。
声の主は、フォックスウーマンのコンコンで、彼女は隣の研究室の扉を少し開けこちらを覗いて来ていた。僕たちはどんな用事なのかと、期待しましたよ。


「何かなコンコン」


彼女は研究者のリーダーをしている人型のモンスターで、フォックスウーマンの名の通り、とがった長い耳にスラッとした体格をしてます。
大きなフサフサの尻尾が特徴で、獣人と言っても分からないくらいです。


「食後の後でも良いんよ?」
「いや今聞くよ、みんなも聞いてあげて」


彼女以外にも、他に4体が研究室にいて、白衣がとても似合っているきれいなモンスターたちで、前のメンバーから更に増えた15体が研究チームで頑張っています。


「ますたぁあのなぁ、ウチたちなぁ何度もますたぁたちが戻ってきているのを見て、ちょこっと研究してみたんよぉ。それでなぁ変わった事が出来るようになったんよぉ」


コンコンがゆっくり歩いてきて、ゴレムスの胸にある核に触ると、ゴレムスの体が形を変えました。
僕はそれを見てあの映画を思い描き、金属のゴーレムも欲しいとワクワクしてました。


「これって、船だよね」
「そうやますたぁゴーレムはんの核にな、あるプログラムを流し入れたんよぉ、そんで形を変えることが出来る様になったんやな。船に戦車、ますたぁの使っている銃の大きなやつにもなれるで」


コンコンはそう言って操縦する者が必要なのと、動力にエレメンタルたちがいないと動かせないとか補足を入れました。僕はそれを聞き、いけるんじゃないかと思いましたよ。


「いや、これなら絶対行けるっ!スゴいよコンコンありがとう」


僕はうれしさのあまりコンコンに抱きつき、フワフワの耳を撫で回したよ。みんなはそれを見て、僕に撫でられたくて抱きついてギュウギュウになってしまいます。
でもそれは嫌ではなく、嬉しい気持ちになってみんなを撫でたんだ。みんなの気持ちも一つになり、これできっと倒せると僕は確信を持ったよ。


「良いかいみんな、作戦を説明するよ」


みんなに揉みくちゃにされた状態で、僕はみんなに説明を始めます。今回は役割分担が複雑で、1つ1つの解説とタイミングが大切だとみんなに熱く語った。


「今回失敗した時は、僕たちは全滅よりも辛い物を受ける。それは分かるね」


全滅はいつも起きるかもしれない危険があるけど、今回はそれ以上に新たな武器と作戦でいきます。
それが失敗する事は、ほんとの意味でのみんなの力が負けた事になり、それは完全敗北が決まるんだ。


「まずは潜水艦ゴーレム3体と船ゴーレム2体でスイリュウに向かう、操縦者はコボルト隊でお願い」
「「「「「ワンワン!」」」」」


良い返事を聞いたので、向かってからの話に入り、コンコンたちが作れるオリハルコン製の強化ワイヤーの網を3隻で持ち罠を張る事を知らせます。


「潜水艦2隻で魚雷を使ってスイリュウをその罠に誘導して、網に掛かったら火龍に空高く持ち上げて貰う、頼むよ」
「ガウ、水に入らないのであれば任せろガウ」
「うん、頼んだよ。残ったメンバーは雷系で攻撃の準備、そこで全てを出し切るよ」


説明を済ませた僕はドヤ顔を決め、みんなに勝てるでしょ?っと自信満々です。そんな中、数名は悩んでいるので、何か意見が出るかもとちょっと期待しちゃったね。


「なるほど、水の中で使えなかった相手の弱点を突くのですね」
「そうだよピエール、空を飛べない僕たちをリザードマン(ウイングバージョン)とリビング武器たちに乗せてもらって待ちかまえる。これなら十分ダメージが当てられる」


エレメンタルたちも空を飛べますが、ゴーレムの動力と武器である魚雷を魔法で作りだす為、今いる20体全てを使う事になる。
だけどご安心、麒麟で僕の最強の武器は雷属性ですからね、感電しなければ使えるんですよ。


「じゃあ、ご飯を食べたら行こうか」
「「「「「おおぉーー」」」」」


早速スイリュウと対戦するぞと、僕たちはご飯を勢いよく食べ、門を通り海の様な水のフロアに来ました。
高い崖から見ても水平線が見えるそのフロアは、スタート地点以外の全てが水で覆われ、50キロ先にまで及んでいます。


「さぁタイダルスイリュウはこの先5キロの地点にいる、みんな行くよっ!!」
「「「「「おおぉぉーー!!」」」」」


掛け声で気合を入れ、僕たちは作戦通りの位置に着きます。
目的の場所までは、変形したゴーレムたちに乗り、5キロ手前の地点で攻撃班と誘導班に別れて作戦が始まった。


「おお!?魚雷を嫌がって移動して来た」
「良い調子ウサ」


そこからは面白いくらい順調に誘導が出来て、火龍の持ち上げまで進み、タイダルスイリュウに総攻撃を加える戦いが始まった。


「我が主、今ですよ!」
「任せてピエール、武技『雷神斬』」


僕は上級武技を使いタイダルスイリュウにとどめを刺しました。超級でなかったのは属性攻撃を上げるためで、超級のはまだ覚えてないんですよ。
それでも消滅していくのを見て、属性の弱点は突くべきだと実感しました。


「やったでゴザルな主君」
「そうだねイエロー君、この調子で次も行くよ」


こうして僕たちは、やっとの思いでタイダルスイリュウを倒す事が出来た。残る神龍は風と火と氷と地の龍で、今回は時間的に後1体、最後まで頑張ろうと声掛けをして、僕たちは戻って行きました。
お祝いの席でドロップ品の使い道を検討し、最後は地の龍に挑もうと決まり、準備が始まったんだよ。
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