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3章 1年1学期後半
69話 あたいの思い
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「はぁ~あたいって・・・どうして、あいつの前だといつもあんな感じになっちゃうのかな」
朝食を作りながらため息を付いてしまうあたいは、学園の方を見て落ち込んだの。
あいつは学園が忙しくて最近こっちに来れてないのよ。
「べ、別にあいつの顔がみたいとかじゃないわよ、ちょっと寂しいってだけ」
手を激しく動かし誰も聞いてないのに誤魔化したけど、結局彼の前と話すのは仕事の事で、つまらないと思われてるかもしれないんです。
ダンジョンの報告とか、ドロップ品を売った分配の話をするだけなのよ。
「でもなぁ~シャンティが来てるから、報告はそれで済んでるんだよねぇ~・・・会いたいなぁ~」
顔を合わせると怒っちゃうけど、それでも会いたくなるの。もしかしたら、あたいが怒るから来るのがイヤなのかもしれない。
炙り鳥の卵を焼きながらあたいは考えます。いつも近くにいるシャンティは笑顔がかわいいし、子供たちだってあいつと仲が良いわ。
「冒険者のシーラたちは大人で綺麗だし、ムクロスなんて主君とか言って、忠誠を誓うとかカッコ付けてる」
あたいだけが、今でもあいつに悪い態度を取っているの。
人数分の目玉焼きをお皿に移し、オークベーコンとソーセージも焼いて盛りつけ、どうしようとため息を付きながらテーブルに並べたわ。
「この食事だって、毎日食べれるのはあいつのおかげだし、感謝してる・・・でもでも!あいつの顔を見ると、どうしても顔が熱くなって普通に話せないのよ」
ポタージュスープをお皿に注ぎ、黒パンを2つずつ席に置いては同じ答えを出したわ。
お代わり用のパンをテーブルの真ん中に置くと、食事の支度が終わりあいつの顔が浮かんで来た。
「思うだけで顔が熱くなっちゃうからダメなのよねあたいは」
顔が熱くなってきたから、手で顔を抑えてしまったわ。
この悩みは生活に余裕が出来る様になって分かってきたの。レベルを上げたり、モンスターを倒すのに精一杯だった頃は、なんとなくしか分からなかった。
「でも・・・あいつの戦ってる姿、キラキラしてかっこいいのよねぇ」
「私も見てみたいわね、そのかっこいい顔」
「あたしは、そんなことを言いながら食事を用意してる、ティアちゃんの方が凄いと思うけど」
「ん、普通は焦がす」
「あのあの、怒った顔もかわいいですよティアちゃん」
誰も聞いていないと思っていたあたいは、声のする方を急いで向いて驚いてしまったわ。なんとシーラさんたちがいつの間にかイスに座っていて、あたいをニヤニヤして見ていたのよ。
まだ集まるには早いのにどうしてって顔してしまったから、シーラさんたちが更にニヤケいるわね。もう少ししないと誰も食堂にはこないはずだったのよ。
「あ、あの・・・いつからいましたか?」
「えっとね、【あいつの前じゃいつもあんな感じになっちゃう】の辺りからよ」
それを聞いて、顔がこれでもかって程に真っ赤になったわ、最初からずっと聞かれていたんですよ。
心の声も漏れていたのか、シーラさんたちは順番にあたいの喋った事を口にして来た。学園が忙しいとか、シャンティは笑顔がかわいいとか、もうほんとに逃げたくなったわね。
「いるなら言ってくださいよ!どうして黙ってるんですか」
「いや~あたしは呼んだ方がいいかなぁ~って思ったんだけど、シーラがね」
「ちょっとロジーナ!私のせいにしないでよ、私が声を掛けようとしたらあなたが止めたんでしょ。赤くなって照れてるティアちゃんが可愛いとか言ってさ」
シーラさんは、あたいの事を可愛いとか言って来て、あたいはもう顔から火が出そうです。
今まで隠していたのに、全部知られちゃった、もう恥ずかしくて死にそうよ。
「まあまあいいじゃんシーラ、それよりティアちゃん、いつからアレシャス君の事が好きなのかなぁ?」
聞きたいなぁ~っとロジーナさんがニヤけたままて聞いて来ます。
ちょっとイヤな目に、これは遊ばれてると感じましたね。
「やめてくださいロジーナさん、あたいはただ助けてもらったのに自分の態度が悪いから、それを直したいって思ってるだけです」
「またまたぁ~戦ってる姿が格好良かったんでしょ?」
「よしなさいロジーナ!ティアちゃんは本気なんだからね」
ロジーナさんがグイグイ来ているのを、シーラさんがゲンコツで止めてくれました。
あたいはホッとしたんですけど、その後もまだ話は続くようです。
「あのあの、相手は貴族ですよ、それも男性です」
「ん、男性貴族は別の生き物、結婚の概念が違う別世界」
アーロさんとネムさんにそう言われ、あたいは耳を下げてしょげました。男性貴族は女性貴族としか結婚はしません。
っというか、結婚はあの人たちにとって子供を作る言葉で、あたいたちの様に一緒に暮らすとか、家族になるとは違うんです。
「自分でも分かってるんです、叶わない恋だって」
「そうかなぁ?あたしは行けそうな気がするんだけど」
「「「「え!?」」」」
あたいを含めた全員が驚き、頭をさすっているロジーナさんに注目したの。そんなことあるはずないんですよ、でもあたいは聞いてしまいました。
「ど、どうしてそう思うんですかロジーナさん」
「アレシャス君の行動よ、普通の男性貴族とは違うでしょ?」
人差し指を立ててロジーナさんが言って来て、そしてあたいはアレシャスの行動を思い返し、確かに普通とは違うと思いました。貴族はあたいたちが困っていても助けてくれませんし、というか見てません。
「あのあの、どう違うのかアーロは分かりません」
「貴族は平民と話さない」
「そうそれよネム!」
ネムさんを指差してロジーナさんが声を上げ、あたいが思っていたこととは少し違いました。でも、貴族は使用人を介してしか話さないそうで、いつも無表情だから態度に出ないと話してくれました。
「あたしね、ちょっと大きな商会の3女なのよ。子供の頃に貴族と会ったことがあるんだけど、凄く怖かった・・・だからここの子供たちが、アレシャス君の事を楽しそうに話しているのを聞いて、ああ違うんだなぁって思ってたのよ」
ロジーナさんの話を聞き、あたいもみんなと一緒に頷いてしまったわ。確かに馬車で移動しているところを見るだけでも、凄く怖いと思った事があったんです。
だから、最初にあいつが貴族だって分からなかった。服は良い物を着てたから、どこかのお金持ち位にしか思えなかったの。
「あのあの、じゃあティアちゃんの思いは伝わるのかな?」
お金持ちってだけなら妾でも良かったのに、そう思っているとアーロさんが言い出したの。あたいはまた顔が赤くなってくのが分かったけど、その答えを期待した。
「それは・・・う~ん、わかんない」
「ん、別世界の話、それとこれは違う。ここに来るのだって何か考えがあるはず、利益優先自分優先の生き物」
ネムさんの答えを聞いてロジーナさんが頷いて「妾くらいなら」とか言ってます。でもそれを聞いてアーロさんが思いが伝わったとは言わないって反論したの。
あたいはそれでも良いと思ってしまったわ、それだけあいつを好きなのかな。
「アーロもネムも言ってることは正しいんだけど、アレシャス君ってなにか違う気がするのよ、だからいけるんじゃないかとも思うの。でもねぇ・・・貴族なのよねぇ」
貴族は別の世界で生きる人で、身分以外も考え方があたいたちとは違うんです。だからアイツが他と違うといっても分からない、それが分かった瞬間です。
「と、兎に角食事にしましょ、そろそろ子供たちが入ってくるわ」
シーラさんに肩をぽんぽん叩かれ、あたいは席に着きました。この思いは叶わない、それは分かっていたけど、こうやって考えるとほんとに落ち込みます。
しゅんとしたあたいに、追い打ちを掛けるように食事の後直ぐにシャンティが来て、明日から頻繁にアレシャスが来ることを聞きました。
朝食を作りながらため息を付いてしまうあたいは、学園の方を見て落ち込んだの。
あいつは学園が忙しくて最近こっちに来れてないのよ。
「べ、別にあいつの顔がみたいとかじゃないわよ、ちょっと寂しいってだけ」
手を激しく動かし誰も聞いてないのに誤魔化したけど、結局彼の前と話すのは仕事の事で、つまらないと思われてるかもしれないんです。
ダンジョンの報告とか、ドロップ品を売った分配の話をするだけなのよ。
「でもなぁ~シャンティが来てるから、報告はそれで済んでるんだよねぇ~・・・会いたいなぁ~」
顔を合わせると怒っちゃうけど、それでも会いたくなるの。もしかしたら、あたいが怒るから来るのがイヤなのかもしれない。
炙り鳥の卵を焼きながらあたいは考えます。いつも近くにいるシャンティは笑顔がかわいいし、子供たちだってあいつと仲が良いわ。
「冒険者のシーラたちは大人で綺麗だし、ムクロスなんて主君とか言って、忠誠を誓うとかカッコ付けてる」
あたいだけが、今でもあいつに悪い態度を取っているの。
人数分の目玉焼きをお皿に移し、オークベーコンとソーセージも焼いて盛りつけ、どうしようとため息を付きながらテーブルに並べたわ。
「この食事だって、毎日食べれるのはあいつのおかげだし、感謝してる・・・でもでも!あいつの顔を見ると、どうしても顔が熱くなって普通に話せないのよ」
ポタージュスープをお皿に注ぎ、黒パンを2つずつ席に置いては同じ答えを出したわ。
お代わり用のパンをテーブルの真ん中に置くと、食事の支度が終わりあいつの顔が浮かんで来た。
「思うだけで顔が熱くなっちゃうからダメなのよねあたいは」
顔が熱くなってきたから、手で顔を抑えてしまったわ。
この悩みは生活に余裕が出来る様になって分かってきたの。レベルを上げたり、モンスターを倒すのに精一杯だった頃は、なんとなくしか分からなかった。
「でも・・・あいつの戦ってる姿、キラキラしてかっこいいのよねぇ」
「私も見てみたいわね、そのかっこいい顔」
「あたしは、そんなことを言いながら食事を用意してる、ティアちゃんの方が凄いと思うけど」
「ん、普通は焦がす」
「あのあの、怒った顔もかわいいですよティアちゃん」
誰も聞いていないと思っていたあたいは、声のする方を急いで向いて驚いてしまったわ。なんとシーラさんたちがいつの間にかイスに座っていて、あたいをニヤニヤして見ていたのよ。
まだ集まるには早いのにどうしてって顔してしまったから、シーラさんたちが更にニヤケいるわね。もう少ししないと誰も食堂にはこないはずだったのよ。
「あ、あの・・・いつからいましたか?」
「えっとね、【あいつの前じゃいつもあんな感じになっちゃう】の辺りからよ」
それを聞いて、顔がこれでもかって程に真っ赤になったわ、最初からずっと聞かれていたんですよ。
心の声も漏れていたのか、シーラさんたちは順番にあたいの喋った事を口にして来た。学園が忙しいとか、シャンティは笑顔がかわいいとか、もうほんとに逃げたくなったわね。
「いるなら言ってくださいよ!どうして黙ってるんですか」
「いや~あたしは呼んだ方がいいかなぁ~って思ったんだけど、シーラがね」
「ちょっとロジーナ!私のせいにしないでよ、私が声を掛けようとしたらあなたが止めたんでしょ。赤くなって照れてるティアちゃんが可愛いとか言ってさ」
シーラさんは、あたいの事を可愛いとか言って来て、あたいはもう顔から火が出そうです。
今まで隠していたのに、全部知られちゃった、もう恥ずかしくて死にそうよ。
「まあまあいいじゃんシーラ、それよりティアちゃん、いつからアレシャス君の事が好きなのかなぁ?」
聞きたいなぁ~っとロジーナさんがニヤけたままて聞いて来ます。
ちょっとイヤな目に、これは遊ばれてると感じましたね。
「やめてくださいロジーナさん、あたいはただ助けてもらったのに自分の態度が悪いから、それを直したいって思ってるだけです」
「またまたぁ~戦ってる姿が格好良かったんでしょ?」
「よしなさいロジーナ!ティアちゃんは本気なんだからね」
ロジーナさんがグイグイ来ているのを、シーラさんがゲンコツで止めてくれました。
あたいはホッとしたんですけど、その後もまだ話は続くようです。
「あのあの、相手は貴族ですよ、それも男性です」
「ん、男性貴族は別の生き物、結婚の概念が違う別世界」
アーロさんとネムさんにそう言われ、あたいは耳を下げてしょげました。男性貴族は女性貴族としか結婚はしません。
っというか、結婚はあの人たちにとって子供を作る言葉で、あたいたちの様に一緒に暮らすとか、家族になるとは違うんです。
「自分でも分かってるんです、叶わない恋だって」
「そうかなぁ?あたしは行けそうな気がするんだけど」
「「「「え!?」」」」
あたいを含めた全員が驚き、頭をさすっているロジーナさんに注目したの。そんなことあるはずないんですよ、でもあたいは聞いてしまいました。
「ど、どうしてそう思うんですかロジーナさん」
「アレシャス君の行動よ、普通の男性貴族とは違うでしょ?」
人差し指を立ててロジーナさんが言って来て、そしてあたいはアレシャスの行動を思い返し、確かに普通とは違うと思いました。貴族はあたいたちが困っていても助けてくれませんし、というか見てません。
「あのあの、どう違うのかアーロは分かりません」
「貴族は平民と話さない」
「そうそれよネム!」
ネムさんを指差してロジーナさんが声を上げ、あたいが思っていたこととは少し違いました。でも、貴族は使用人を介してしか話さないそうで、いつも無表情だから態度に出ないと話してくれました。
「あたしね、ちょっと大きな商会の3女なのよ。子供の頃に貴族と会ったことがあるんだけど、凄く怖かった・・・だからここの子供たちが、アレシャス君の事を楽しそうに話しているのを聞いて、ああ違うんだなぁって思ってたのよ」
ロジーナさんの話を聞き、あたいもみんなと一緒に頷いてしまったわ。確かに馬車で移動しているところを見るだけでも、凄く怖いと思った事があったんです。
だから、最初にあいつが貴族だって分からなかった。服は良い物を着てたから、どこかのお金持ち位にしか思えなかったの。
「あのあの、じゃあティアちゃんの思いは伝わるのかな?」
お金持ちってだけなら妾でも良かったのに、そう思っているとアーロさんが言い出したの。あたいはまた顔が赤くなってくのが分かったけど、その答えを期待した。
「それは・・・う~ん、わかんない」
「ん、別世界の話、それとこれは違う。ここに来るのだって何か考えがあるはず、利益優先自分優先の生き物」
ネムさんの答えを聞いてロジーナさんが頷いて「妾くらいなら」とか言ってます。でもそれを聞いてアーロさんが思いが伝わったとは言わないって反論したの。
あたいはそれでも良いと思ってしまったわ、それだけあいつを好きなのかな。
「アーロもネムも言ってることは正しいんだけど、アレシャス君ってなにか違う気がするのよ、だからいけるんじゃないかとも思うの。でもねぇ・・・貴族なのよねぇ」
貴族は別の世界で生きる人で、身分以外も考え方があたいたちとは違うんです。だからアイツが他と違うといっても分からない、それが分かった瞬間です。
「と、兎に角食事にしましょ、そろそろ子供たちが入ってくるわ」
シーラさんに肩をぽんぽん叩かれ、あたいは席に着きました。この思いは叶わない、それは分かっていたけど、こうやって考えるとほんとに落ち込みます。
しゅんとしたあたいに、追い打ちを掛けるように食事の後直ぐにシャンティが来て、明日から頻繁にアレシャスが来ることを聞きました。
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