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3章 1年2学期

99話 いつもと違う休みの風景

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「ケリーお嬢様、いかがですか?」


朝食の味を聞いて来るブランネ、わたくしはとても美味しいと返してベーコンを一口食べましたわ。


「このベーコンも美味しいですわ、いつもと違う気がしますわね」
「さすがケリーお嬢様、今日は特別な物なんですよ」


ブランネが少し興奮して説明してきますが、どうやらアレシャスからの贈り物だそうですわよ。
それを聞き、料理に視線が向かない人はいませんわ。


「ね、ねぇブランネ、これってなんの肉ですの?」
「普通に猛牛の肉ですよお嬢様」
「そ、そうですのね」


意外にも普通の答えにホッとしたわたくしでしたが、それは大間違いでしたのよ。
味が良かったのはそれのせいで、なんと塩が特殊なモノが使われていたのですわ。


「カブト岩塩・・・ほんとですの?」
「嘘なんてつきませんよお嬢様、塩が良く染み込み、味がとても良くなっています」
「そ、そうですわね、とても美味しいですわ」


朝から疲れたくないわたくしは、もう考えるのを止めて食事を進めたのですわ。
それが例え、カブトムカデという5つ星モンスターの背中で取れる、高級な岩塩であってもです。


「それは良かったです、この卵もすごく濃厚で、これがまた凄い素材で」
「そそそ、それよりもブランネ、今日の予定を教えてくださいまし」


朝からこれ以上驚きたくなかったわたくしは、話を逸らす事にしましたの。
ブランネは予定を話てくれましたけど、いったい何の卵だったのか、美味しいスクランブルエッグを食べて唸ってしまいます。


「今日はイサベラ様たちとお買い物です」
「この味の濃さ、確実にコッコウではありませんわよね」
「ケリーお嬢様?」


そう言えば、今日はお買い物の予定だったと、悩んでいた気持ちが吹き飛びましたわ。
楽しいお買い物の為にも食事を進め、イサベラたちが来るまでお茶を飲みます。


「このお茶、いつもと違いますわね」
「さすがケリーお嬢様ですね、これは品種改良をしたダンジョン産の茶葉です」


止める間もなかったですが、それほど驚く事ではなかったので、ホッとしたわたくしですわ。
お茶請けもアレシャスに貰った品で、クッキーと言うそうですわ。


「なんにしても、美味しいですし良いですわ」
「そうですね、アレシャス様と仲良くなったおかげで、秘密の品が貰い放題です」
「秘密と言いますと、あの使用人たちの中で話題のあれですわね」


1学期の最初の頃から起きた謎で、何処からか使用人の部屋に届けられる美味な品です。
あれもアレシャスだったのかと思いましたけど、考えれば分かる事でしたわね。


「ケリー様、お待たせしました」
「買い物に行きましょ~う」
「マリアルははしゃぎすぎ。アタシは・・・出来ればアレシャスの装備が見たいかな」


アレシャスを誘うのは良い案だったので、わたくしたちは男子寮に向かい、寮長にアレシャスを呼んでもらいましたわ。
少しして現れた彼は、笑顔がとても生き生きしていましたわ。


「おはよう、どうしたのかな?」
「アレシャス買い物行こうよ」
「そ、それと装備を見せて」


遅れてしまったわたくしは、暇ならと付け足してお誘いしましたわ。
アレシャスにも用事があるはずなので、無理しない様にと遠慮したのですわ。


「今日は予定が無いから行けるよ、シャンティも一緒だけど良いのかな?」
「全然気にしませんわよ、むしろいてもらった方が良いですわ。じゃ、じゃあ行きますわよ」


正門の馬車に乗り、わたくしたちは王都の貴族区にあるお店に向かいましたの。
言うまでもなく、馬車の中ではライラに装備を見せて、マリアルにはクレープを渡してくれましたわ。


「これもすごい、ブルードラゴンの鱗だわ」
「こっちも美味しいよ、アレシャスお代わり」
「ちょっとふたりとも、もう少し遠慮しなさいよ」


イサベラが止めて来れますが、わたくしはお茶を飲み微笑ましいと思って見ていましたの。
そう言っているイサベラも、お茶がとても気に入っていて、それ以上は言わずひ楽しんでいますわ。


「このお茶も美味しい。この茶はどこで売ってるんだアレシャス」
「それはねイザベラ、まだどこにもないよ。淹れるのが上手くなったねシャンティ」
「ありがとうございます」


メイドを褒めるのは、わたくしもする事ですけど、アレシャスはメイドを撫でてしまっています。
これがまた嬉しそうな笑顔をしてて、撫でる側も撫でられてる方もですから、わたくしもイサベラも止められないのですわ。


「茶葉の出所を聞きたいんだが」
「あれは入れないわよイサベラ」
「そうですね」


とても落ち込むイサベラですが、それはクレープを食べれないマリアルや、装備を変えられ落ち込むライラと同じに見えましたわ。
わたくしだけ無いのですけど、アレシャスに求めるのはさすがにまずいのですわ。


「わたくしは宝石が好きなのです。流石に宝石を求めるなんて、結婚相手くらいですわよね」


わたくしの求めている物は、それだけ取得できないモノなのですわ。
服を見て、イサベラたちに合う宝石を想像するだけでも、わたくしは楽しいのですわよ。


「ケリーは服は見ないの?」
「わたくしは良いのです。あなたこそ、メイドは良いのですかアレシャス」


離れた席で見ていたわたくしに声を掛け、隣に座ってきましたが、アレシャスもメイドに服を選んでいたのですわ。


「そうだけど、僕とは違ってケリーは女性でしょ?」
「そうですけど、わたくしは見てる方が好きなのですわよ」
「そうなんだね、まぁ楽しいなら良いけどさ」


アレシャスはメイドに視線を動かしたのですが、どことなく暗い顔をします。
何か理由があるのかとジッと見てしまい、アレシャスの呟きを聞いてしまったのですわ。


「い、今なんて言いましたのアレシャス」
「え?」
「あなた今、あのドレスには青い宝石の付いたネックレスが合うと言いましたわよね?」


わたくしも思っていた事で、アレシャスは頷いてきましたわ。
他にもイサベラたちには何が合うのかと聞いてみると、アレシャスはしっかりと答えてきました。


「やっぱり赤ですわよねぇ~」
「そうだね、イサベラには赤が合うだろうね。他には紫とかかな?」
「そうですわねぇ~」
「ちょっと付けてもらう?」


えっ!?っと、わたくしは振り向き、立ち上がるアレシャスを追うように視線を動かしたのです。
イサベラは一言二言アレシャスと話すと、ネックレスを受け取り首に付けましたの。そして、わたくしの前に立ち見せてくれましたわ。


「け、ケリー様・・・どうでしょうか?」
「え、ええ・・・とても綺麗で、似合っていますわ」
「ほ、ほんとですか!?」


イサベラは驚いている感じで、アレシャスの方を振り向いて走って行きます。
どうしてそんなに急ぐのかと、わたくしは不思議でしたが、それは次に来たマリアルがサークレットを頭に乗せて来て分かったのですわ。


「ケリー様、どうですかね」
「ええ、似合っていますわよマリアル」
「えへへ~じゃあ次も付けてきますね」
「え!?」


どういう事?っと思う前に、ライラが黄色い宝石の付いたネックレスを付けてきましたの。
流石のわたくしも状況が分かりました。アレシャスは、わたくしを楽しませてくれているのですわ。


「ちょっと待ってくださいまし」
「どうしましたケリー様?」
「イサベラが似合い過ぎてるからじゃない?・・・もしかして、マリアル似合わなかったですか?」
「ジッとしてれば似合ってるわよマリアル。あなたは素材は良いからね」


ライラが指摘した事で、マリアルはニッコリしていますけど、わたくしが言いたいのはそんな事ではありませんわよ。
今、少し離れて3人と同じ様に宝石を付けているメイドの傍で、ニコニコ~っとしている男が問題なのですわ。


「そのアクセサリーはアレシャスが用意したのですわよね?」
「そうですね、ケリー様に見せる様にと、まだまだこの鞄に入っています」
「収納鞄なのは分かりますわ。でも、そちらのアクセサリーの造形は見た事がありませんのよ」


わたくしが知らない造りのアクセサリーがあるはずないのです。
わたくしは、趣味で沢山のモノを見てきましたから断言できますわ。


「ちょっと、あの男を呼んで来てください」
「「「わ、わかりました!」」」


3人は飛び上がって急いでアレシャスの元に走ります。ですがわたくしは怒っているわけではありませんのよ。
何処にあの素晴らしい品が売っているのか、それが知りたいのですわ。


「ケリー様、連れてきました」
「ケリーどうしたの?もしかしてつまらなかった?」
「アレシャス、とても楽しかったですわ。ですけど、先ほどの品は一体どこで手に入りますの」
「ああ~それは売ってないんだよ」


どうして!!っと思う前に、わたくしは馬車での事を思い出したのです。
つまりはアレシャスが作ったという事で、わたくしの欲しい物が出来た瞬間でしたわ。
帰りの馬車では、わたくしも楽しくアクセサリーを見る事が出来て、更にわたくしに似合いそうなネックレスをプレゼントされましたの。


「い、良いのですかアレシャス」
「今日誘ってくれたから、そのお礼だよケリー」


また誘ってと言ってくれたのも嬉しかったですけど、わたくしはネックレスに夢中でしたわ。
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