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1章 生き甲斐

8話 ギルドハウス取得

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「アレシュさん、やっと会えました」


俺はそんなに会いたくなかったと、正直な気持ちをそのまま伝えたが、女性はそんな事構いもしないで名乗って来た。
別に聞いてなかったんだが、グラフィと言う女性は今とても困ってるとか言ってきたんだ。


「あなたも知ってるでしょう、あの人たちの我儘っぷりを」
「さぁそんな事は知らないな」
「そんなはずはありません、あなたは5年も一緒だったんですからね」
「だから何だ、俺にはもう関係ない」


勝手に追い出したのはそちらだし、そもそも良く俺の前に顔を出せたなと言ってやった。
冤罪をでっち上げたクセにと言いながら、ミニャルたちに会えたから、俺としてはプラスなのは頭の中だけで思っていて、この女には怒りが収まらなかった。


「その事に関しては謝罪します」
「謝罪なんて求めてない、俺は関わりたくないと言ってるんだよお嬢ちゃん」
「ワタシたちも頼れる人がいないんです、どうかお願いします」
「聞こえなかったのかお嬢ちゃん、関わりたくないと言っている」


あまりに身勝手な話で、俺は受付にそのまま進もうとしたが、グラフィがそれを遮って来た。
力づくでどかしても良いのだが、罠にはめる様な相手だから止めて睨みつけたんだ。


「報酬は言い値で良いです、ですからどうかお願いします」
「ちょっとお前、あまりしつこいと怒るにゃよ」
「あなたは?」
「アタシはアレシュの仲間にゃ」


ミニャルたちが俺の前に集まってくれて、それを見てグラフィは新しいPTに入った事を理解した。
しかし、ミニャルたちが獣人だったからか、グラフィは金で買ったPTと勘違いした様で、ニヤリとしてミニャルたちにある提案をして来た。


「1人大金貨10枚渡します、だからあなたたちからも言ってください」
「「「「「大金貨10枚?」」」」」
「そうですよ、あなたたちでは一生かけても稼げないでしょう」
「おいお前、俺の仲間を侮辱する気か?」


ミニャルたちを下に見た提案に、お嬢ちゃん呼びを止めてグラフィの目の前に移動し、次に何か言ったら殺す勢いで怒りをぶつけた。
前に立っていたミニャルたちを一瞬で追い抜いた事で、ミニャルたちもびっくりしていたが、グラフィはもっと驚いていたよ。


「そ、そんなに怒らなくても・・・ワタシはただ」
「ただなんだ?自分たちの利益の為に他人を陥れ、困ったら誰でも利用しようとするクズが、これ以上何を言うんだ?」
「あの、その」


最初から敵だったが、こいつらのおかげでミニャルたちに会えたから、ほんの少しだけ譲歩しようと頭の片隅に思っていたが、そんな考えも吹き飛んでしまった。
焦りだして口ごもるグラフィの肩を掴み、突き飛ばさない程度に横にどかした俺は、そのまま受付に進んだよ。


「アレシュさん」
「ミーナ、騒がせてすまないな」
「いえ・・・アレシュさんでも怒るんですね」
「仲間を侮辱されたんだ、当然だろう」


ミニャルたちも俺の後ろに続いていたので、俺は笑顔でみんなを見て、大切である事が分かるように大きめの声で宣言した。
それを聞き、少し離れた位置に立っていたグラフィは、とんでもない事をしたのが分かったのか、青い顔をしていたよ。


「にゃはは、あいつすっごい顔してるにゃ」
「良い気味みゃ」
「反省すると良いみー」
「そうにーよ」
「べ~だ」


みんなも納得の表情を見せたグラフィは、さすがにこれ以上何かを言う事は無く、ギルドを出て行った。
これで終わりであれば良いが、きっと何かしてくると思っている俺は、次の手を考えながらミーナと話を始めた。


「それで、良いギルドハウスはあったか?」
「それは勿論ですよアレシュさん、この街で残ってる一番の屋敷を用意しました」
「それは良かった、早速見に行くか」
「はい、行きましょう」


受付から出てきたミーナは、とても元気よく先頭を歩き始め、俺たちはその後を普通に付いて行った。
あの騒ぎがあった為、ギルドの中ではずっと見られていたが、これで他の変な奴らは近づいてこないから安心したんだ。


「同時に、獣人のPTは声を掛けやすくなったよな」


1つのPTがこちらを見ているのは分かったから、近いうちに来るかもしれないと思ったよ。
そんな俺は、ミーナの説明に適当に相槌を打っていた為、ギルドハウスに到着してビビってしまった。


「こ、ここって」
「そうですよアレシュさん、勇者様たちをこの国に引き留める為、領主様が大金を掛けて増築した屋敷です」
「「「「「え!」」」」」


ミーナは胸を張ってやり切った感を出して来たが、ミニャルたちはドン引きしていた。
以前下見していて俺は知っていたが、まさかその屋敷を勧めるとは思わなかったので、本当に良いのかと聞いてしまったよ。


「どうせ残っていますし、他のクランでは月の家賃は払えませんよ」
「払えないって、6つ星の【ブレバース】なら払えるだろう」
「それはそうですけど、もう持ってますからね」


それもそうかと、俺は中を見る事無く契約を決めた。
ミニャルたちは、月の支払いがいくらなのかを気にしていたが、大金貨10枚なので全然払えると教えたよ。


「あいつの言っていた額と同じにゃね」
「きっと、この街で一番高い物を基準にしたんですよ」
「まったく、嫌味にしか聞こえないが、そんなところも勘に触ったな」


印象が最悪なのに、助けてとか言われてもそんな気が起きる訳もなく、ミニャルたちまで侮辱したから致命的だった。
ミーナもそれには賛成してくれて、情報を与えなくて良かったと怒っていたよ。


「今後も来ると思うけど、専属職員になったワタシに任せてねアレシュさん」
「その事なんだが、ちょっと俺に考えがあるんだ」
「考えって、またどこかに圧力でも掛けるの?」


人聞きの悪い事を言われてしまったが、勇者PTでは良くやっていたことで、金がどんどん飛んで行った。
しかし、今回はいたって簡単で、俺の年齢を変えるだけと説明したが、みんなに首を傾げられたよ。


「年齢って」
「アレシュ、年齢なんて変えられないにゃよ」
「それが出来るんだよなぁ」


魔法カードの中にそれはあり、みんなに見せると驚かれた。
若返りの魔法【ワールドタイム】と言う魔法で、その場で使って15歳まで若返って見せたんだ。


「どうだ?」
「「「「「か、可愛い!!」」」」」


ミーナまで声を揃えたが、俺は若い頃良く言われていたから、童顔なのは分かっていた。
だからこそ、あいつらをダマせると説明し、今後の作戦を話したんだ。


「若返った俺は、隠れて作った子供で、父親は逃げてしまった事にするんだ」
「なるほど、そうすれば知らなくても不思議じゃないし、顔が似ていても変じゃないわね」
「そういう事だ、ミニャルたちは、逃げた俺の最後のお願いとして、弟子でもある息子を守るように言われた事にすればいいだろう」
「「「「「た、確かに」」」」」


これで完璧っと、俺はニッコリとしたんだが、みんなが顔を赤くしてテレてしまったんだ。
童顔だと破壊力があるのか、ちょっと控えようと言う考えはあったが、若返った事で俺の身体にも変化が起きてしまったんだ。


「どうしよう、みんなが可愛く見える」


聞こえない様、後ろを向いてボソッと言ったが、こんなに可愛かったかとドキドキしてしまった。
そんな中、ミーナは大人の女性として見え、これは早期にお手伝いさんを入れないと大変だと思ったよ。
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