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モラトリアム

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リーブランド家はとても広くて、これが、本物の貴族のおうち!?となった。

「おかえり、アンジェラ。パーティーはどうだった」

アンジェラ様に少し似た目をしたイケオジが階段から降りてくる。

「婚約破棄されて、王子の廃嫡が決まって、その原因の方がこのマリーさんですわ。仕事が決まるまで数日預かる予定なので客間をお貸ししたいのですけど」
「……ちょっと情報量が多すぎるが、うん、アンジェラがいいなら好きにするといい。私になにかできることはあるか?」
「数日以内に婚約解消の書類が来るので、それに判を押すことと、もしかしたら第二王子をそのまま婚約者に、という話が来るかもしれないのでその場合、報告をお願いするくらいですわ。では、お父様、おやすみなさい」
「わかった。おやすみ」

リーブランド家の使用人に風呂に放り込まれ、磨かれて出ると、客間の準備ができていると部屋に案内された。ここも広くてきれいで、布団もふかふかだった。あー、幸せ。

朝はメイドさんに起こされ、服を着せられ、おいしくて温かいご飯。本を読んだり、散歩しているうちに昼食ができ、それを食べたらまた自由時間。3時ごろにお茶をし、豪勢な夕食を食べる。こうして貴族らしい貴族は作られていくのだと思いながら、数日の貴族生活を満喫した。

高望みせずに金がある子爵あたりを狙っておけばよかったのかもしれないという考えが時々頭をよぎったが、たらればを考えてもしょうがないので、娼館で金持ちの妾でも目指そうと思い直していた。

「明日の朝、あなたを引き取りに知り合いが来ますわ」
「わかりました。ありがとうございます」

その夜はやっぱり少し不安でよく眠れなかった。

朝、メイドに起こされて、質素なワンピースに着替えさせられ、玄関に向かう。

そこにはいかにも水商売あがりの派手な美人が立っていた。

「あなたがマリー?」
「はい、そうです!」
「うん、素朴な魅力が人気出そうね。私はリリー・タッカー。マダムとかオーナーとかリリーさんとかなんでも好きに呼んで。敬意のない呼び方は許さないけどね」
「はい、リリーさん、よろしくお願いいたします」
「いいこ。じゃあ、アンジェラ、今回はいい契約をありがとう。また会いましょう」
「はい。マリーさんも、活躍を楽しみにしていますわ」
「アンジェラ様、ありがとうございました」
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