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プロローグ

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『……という訳で、遠野 優良さん。貴方には転生してもらいます。異論も異議も不服申し立ても認めませんし、クーリングオフも効きません』
「はい?」

 目覚めて数秒でそんな事を言われても全く、1ミクロンも理解が出来ないし、何のことだかサッパリ分からない。新手の詐欺の1種だろうか。転生詐欺とか新しすぎて流行らないし流行らせない。
 ていうか本当に詐欺だとしてもオレにはそんなめぼしい物は何も無いから無意味なんだが。

『あれ、起きてませんねこれ。おーきーてーくーだーさーいー』
「ちょっ、やめっ、起きてる、起きてるから止めてっ」

 オレの目の前に立つ真っ白な衣を身に付けた人はオレの肩を掴むと、予想以上に強く激しく前後に揺らす。本気で脳が揺れて気持ち悪くなってきた。

「おえっ……気持ち悪……ちょっと貴女力強すぎません?」
『手加減が難しいですねー。じゃ起きたところでもう一回説明を……』
「いや聴いてたから。突拍子が無さすぎて意味が分からなかっただけだから」

 いきなり何の前触れも無しに言われても大体の人は困惑するしまだ夢みてんのかってなるから。オレみたいな反応が一般的かつ普通の反応だから。

『おかしいですねー……こんな感じの説明で皆さん「おk把握」って言って喜んで転生していくんですけど……』
「頭がおかしいと思うのです」

 なんでそんなコンビニ行ってくる的なノリで転生していけるのかが理解出来ないししたくもない。する気もない。それよりもこの人……ていうか神様? さも当たり前のようにネットスラング使いこなしてるんですが。

『まあ、簡単に言うと貴方は死んじゃったので転生する気があるならパパッと異世界に行っちゃってください、という訳なのですー』
「えらく軽いノリで転生させる神様が居たもんだ……」

 輪廻転生に真っ向から喧嘩売ってるよねこの人……じゃなくてこの神様?

『私はそういう神様ですしおすしー……』
「あ、はい。じゃあ折角のチャンスだから転生でお願いします」
『はーい、じゃあいってらっしゃーい』

 女神様が右手を挙げると、オレの足元がパカッと開いて、真っ暗闇に落ちていく。
 不思議と恐怖は無かった。むしろ未知への探究心やら何やらで心は自然と躍っているようだった。何だかんだ言って自分も楽しみだったんだ。





「それでもこれは無いと思うんだ」

 真っ暗闇を落ちていたと思ったら、突然視界が真っ白に染まって次の瞬間にはオレは大空に投げ出されていた。はいはいテンプレテンプレ。
 しかしテンプレとはいえ、このままだと本気で地面しかねない。転生数十秒で死亡とかシュール過ぎて笑えない。残念、君の冒険はここで終わってしまった! とかは一切シャレにもならない。

 普通の人間に翼は無いし空を飛ぶ術はない。それはオレも例外じゃない。つまりはここでバッドエンドだ。
 もう一度言おう。オレの冒険はここで終わってしまった。


「……あら?」

 諦めてサヨナラバイバイするその瞬間を待った……のだが、いつまで経っても何も起きない。あれ? と首を傾げ、恐る恐る目を開けてみるとオレの身体は地面から数センチ浮いていた。
 浮遊能力でも貰ったのかとビックリしてたら、頭上から何かの鳴き声したので上を向いた。

 するとそこには、オレの服を脚で掴み、浮いている金色の鳥がいた。わーお神々しい。しかもやったねオレ生きてた。
 鳥はオレが見ていることを確認すると、服を離してオレの前に降りてくる。

「……?」

 何もんだこの鳥はって思ったオレはその鳥をまじまじと見つめて観察してみる。するとオレは黄金色の羽根に同化するように黄金色の鞄が取り付けられているのを見つけた。分かりづらくて流し見してたら見逃してたレベルだ。

 オレは鳥からその鞄を取り外し、中身を拝見すると1枚の手紙と数枚の硬貨が入っていて、その手紙を読んでみる事にした。

「なになに……うわぁ……」

 悍ましい程にB4サイズの紙にビッシリとほぼ隙間なく文字が書かれていて、少し紙を目から遠ざけたら黒くて読めないくらいだ。
 なんとか苦労して読み進め、漸く解読に成功した。
 物凄く長ったらしい事が書かれてたが、要約すると『貴方に力を挙げました。どんな力かは後々分かります』と、『お金とか必要な物は一緒に送っておきました』『過ごし方が思いつかないのなら冒険者なんかがオススメですよ!』だそうだ。転生特典くらい教えてくれとわりかし本気で思うんだが。お金は有難いから良いけど。
 
そして最後の冒険者の部分がめっちゃ押されてた。重要な事だから2回言いましたよレベルじゃないくらいに押されてた。押されすぎて裏があるんじゃないかなと思うレベルで押されてた。 
 敢えて冒険者以外の道を行こうかとも数秒くらい考えたが思いつかないので辞めた。

「と言うことは……お前が使いってヤツか」
 
 鳥にそう問いかけてみると、使いらしき鳥はコクンと首を縦に振った。人の言葉は理解出来るのね。そりゃ曲がりなりにも神の使いなんだから出来るわな、何言ってるんだろうかオレは。

「ていうか何時までも鳥って言うの面倒いからお前の名前フェニクスな」

 神の使いに名前付けるとかアウトな気もするが、呼びにくいから仕方があるまい。
 名前が安直な気もするが気にしない。ネーミングセンスを期待しないで。
 
「というわけでフェニクス、取り敢えず街まで連れてってくんない?」

 周囲をちらっと見てみたが、人っこ一人居ないうえに目に見える範囲に人里の影形もなし。折角だからこのフェニクスに街まで運んでもらおう。
 
決して歩くのが面倒いとかそんな理由じゃない。絶対にない。
 
「んじゃ宜しく」

 フェニクスはやれやれと言わんばかりに息を吐き、身体を屈めてくれた。オレは背中に颯爽と飛び移り、フェニクスはそれを確認すると翼を大きく広げて空を飛んだ。

 ぐんぐんと地上が遠くなり、風を切りながら空を飛ぶ○○の背中から下を見下ろして街を探す。視力が上がってるようで高い所からも地上がよく見える。
 やがて規模が凄いデカイ街を見つけたオレは、フェニクスに下に降りるようにと指示を出す。
 指示を受けた○○はぐんと急降下し、地面スレスレで勢いを殺して着地した。余裕の着地だ、年季が違いますよ。

 着地に成功して一安心し、背中から降りる。降りるように指示した場所は街より少し離れた森の中なので、見つかることはそうそう無いはず。例え見つかってもその場のノリと機転でどうにかなるってぼくしんじてる。

「あんがとなフェニクス」

 労うように肩をぽんぽんと叩くと表情を少しだけ綻ばせたフェニクス。どうやら喜んでくれたようだ。
 そんなフェニクスはオレが肩を叩くのを止めると御役御免だと言わんばかりに翼を大きく広げ、高速で飛び立ってしまった。まあ何時でも呼べるから良いか。

 チラリと後ろを見る。空から見えた街は近くで見るとまた更に大きく見える。これからの事を思い、顔を綻ばせながらオレは街に向けて歩き出す。

 ……街って言ったな、スマンがアレは嘘だ。
 だって中心にデッカイ城がそびえ立ってやがった。明らかに国の中心都市っぽいぞこれ。どうしようめんどくさい。
 
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