もしも学校の椅子がトイレの椅子だったら

五月萌

文字の大きさ
41 / 133

41 新たな家族

しおりを挟む
夕日が照らす中、僕は足の短い生き物になっていた。
 (ここはどこだろう)

『誰か! ここはどこですか?』
「ワン! くううん?」

僕は言葉がうまく発声できないどころか、犬の吠える声に変わる。不意に知っている匂いがする。

「ワン!」

目の前の家から求めていた人がいた。

「ミックスだ! こんなとこでどうしたの? 迷い犬? 捨て犬?」

僕の眼前に葉阿戸がいた。よく見るとここは日余と書かれた表札の前だ。車がないので物寂しい。外から見ると広くて豪華な家だ。3階までありそうな高さで、茶色い壁の天窓のある家だ。
僕は段ボールの中にいた。
(これは生まれ変わりなのだろうか? 僕は死んだのか?)

『葉阿戸! 気づいてくれ!』
「キャン! キャン!」
「何かご飯……ちょうどいい、あれがある。君、俺の家来る?」

葉阿戸に抱きかかえられて、自然と家に立ち入ることが出来た。
やはり、中は広い。
葉阿戸は僕の手足をアルコールティッシュで拭く。
僕は降ろされて、家の中を走り回ることが出来た。流石に階段を登るのは怖かった。
そして、ドックフードと鰹節が皿にのせられて出てきた。次に水もだ。
僕はドッグフードをバクバクと食べた。とても美味しく感じられた。

『なんでドッグフードが家にあるの?』
「ワンワンワン、クーーーン?」

声は伝わらなかった。

「よしよし、名前はどうしようかな」
『僕はたいだよ』
「ワンワン」
「なんかこの犬、たいに似てるな」

少し探ってみると姿見があった。
(何だこの間抜けそうな犬は)
黒色と白色の混ざったシーズーのような、トイプードルのような、雑種だ。目がでかく、顎はしゃくれている。汚れている小さな子犬だ。

「ヤキにしよう。たいとセットでたい焼きだ。ちょっとヤギっぽいし。おいで、ヤキ」
「ウー、ワン! ワン」

僕は身体が葉阿戸に引き寄せられて抗えない。

「身体、洗ってやる! 一緒にお風呂入ろう♡」

葉阿戸は上の階に行ったかと思うと、自分の寝間着と下着とタオルを持って2階から降りてきた。

『裸、見せてくれるの?』
「クーン」

僕は葉阿戸の裸を見るのに罪悪感を覚えるも、声は届かず葉阿戸から逃げようとするが、足の速さで負けて捕まってしまった。
風呂も広かった。ジャグジーがついている風呂だ。

「ところで、ヤキ、君はオスだよな。タマタマついてるよな?」

葉阿戸は引き締まった体をしていた。
僕は尻を触られる。びっくりして、葉阿戸に噛みつく。あまがみだった。

「良かった、オスで♡」

葉阿戸はたじろぎもせずにシャワーをつける。
僕は温かくなったシャワーを浴びせられた。
(誰かに体を洗ってもらうのはいつぶりだろうか?)

「ヤキ、俺さ、昔、ガキの頃、犬買ってたんだ。リョウタって柴犬。13年生きて、厨房の時に死んじゃってな、だから」

葉阿戸がそんな話している時、僕は葉阿戸の股間を見て驚く。

『葉阿戸! 勝手に見てごめん』
「くうん」
「嬉しくもあるというか。全然話聞いてないね。ヤキ、どこ見てんのよ! 君さ、なんかやっぱり、たいに似てるよ、そうだ明日たいに見せてみよう」

葉阿戸は僕をタオルで拭く。
僕はブルブルと身体の水分を水しぶきにして飛ばした。

「俺の助けはいらないのか」

葉阿戸は体を洗ったり、髪を洗ったりしている。
僕は隅っこでうずくまっていた。
葉阿戸は寝間着に着替えると、僕を持ち上げて、2階に運んだ。そこで大きな段ボールの中に入れられた。
僕は写真もとられた気もするが、眠くなって寝てしまった。





「は!」

僕は人間の姿に戻っていた。
(何だったんだ今の、明晰夢?)
「葉阿戸から着信だ」

僕は時間を見る、18時9分だ。

『もしもし? 葉阿戸、あんた』
『あ、たい、体調大丈夫?』
『ミックス犬を拾ったんでしょ! しかも名前はヤキ!』
『……君、俺の家に盗聴器でもつけてるん?』
『信じられないかもしれないけど、今、犬の中に入ってたんだ』
『え? それ、マジ?』
『今寝てるでしょ?』
『起きちゃったよ、たいが大声出すから』
『僕、葉阿戸と一緒に風呂入っちゃった』
『絶対嘘だろ、何勝手に妄想してんだよ』
『葉阿戸の葉阿戸、見ちゃった』
『あー、だからたいのようなアホみたいな顔してたんだ。納得』
『親はまだ帰ってきてないんだろ、いいのか?』
『前に犬を飼ってたんだ、俺の家の前の段ボールにいい人に拾われて下さいって書いてあるから多分大丈夫』
『”リョウタ”だろ』
『君さ、俺の大事なところ見てただで済むと思ってるの?』
『それはごめんて、不可抗力だって。僕だって犬の明晰夢、視ると思わなくて』
『明日また話そう』
『はい』
『眠ったときに犬の中に入ったら、3回、まわってお手からワンしろよ』
『頭いいな!』
『うん、じゃあまた明日』
『おう』

その後、僕は温かい風呂にはいる。
(葉阿戸に洗ってもらえた時気持ちよかったな)

「たいちゃん、お風呂ー!?」

母がいつの間にか帰ってきていた。

「そうだけど、何?」
「鮭焼いたんだけど」
「食う!」

僕は風呂から出て、ドライヤーで髪を乾かした。

「たいちゃん、熱あるんじゃないの? 早くご飯食べて寝なさいよ?」
「分かったって」

僕は赤くなった頬を鏡で見た。食事を済ませ、歯を磨いて、再び眠りについた。
そして、身体が幽体離脱するように世界がぐるぐる回る。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...