もしも学校の椅子がトイレの椅子だったら

五月萌

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現在時刻は22時過ぎ。
僕は家に帰ると母が心配そうにしていた。

「たいちゃん、どこ行ってたの?」
「なんでもない、散歩だよ」
「普通の人はこんな夜に散歩なんてしません」
「だったら僕は、普通じゃない、規格外かもな」

僕は別段言いたくない言葉が天邪鬼に勝手に出てきた。最後の声は聞こえるか聞こえないかのような、蚊のなくような声だった。母の横をすり抜け2階に上がっていく。
コートをハンガーにかけて、ベッドに寝転んだ。

「茂丸、今頃寝てるのかな?」

僕は起きようとしたが、眠気に負けて重いまぶたを好きにさせた。
(明日話そう。明日――)

夢を見ることも犬の中にはいることもなかった。




「おはよう、たいちゃん、警察の人が来てるんだけど」

母の声に僕はどきりとする。

「おはよう、警察?」

頭が重たく感じる。

「おはようございます。たいさんのお陰で、検挙そして、逮捕に尽力をあげて、無事捕まえることが出来ました。申し遅れました刑務所所長の水神誠みなかみまことと言います。昨晩はありがとうございました」
「昨晩何があったんですか?」
「日余殿宅に侵入、加害を加えた不届き者の一派を逮捕することに一役買ってくださったのです」
「不良行為をしてたんじゃ?」
「母さん、僕のことそんな目で見てたの?」
「真逆です。彼の明晰夢のお陰で、先程も申し上げた通り、暴力団の逮捕に至ったのです」
「明晰夢? たいちゃんが?」
「お知りでないと? 新聞は読まないのですか?」
「たいちゃ……息子は読むけど、夫婦では読んでおりません。そうだ、前にみなと家に行った帰りも夢がどうのこうの言って、旦那とこそこそ活躍していたようで」
「湊? 風子ちゃんの時か!」
「警察本部でもぜひ、お力を借りたい案件が山ほどあって、連れてきてくださったらと提案があるのですが。もちろん任意で」
「僕を解剖する気ですか?」
「致しません。誓って暴力を加えたり、不当な取り調べを行ったりしません」
「僕は好きで夢を見るわけではないので、協力は出来ないです。僕の名前を広めないでください」
「それは仕方ありません。ですがもしまた何か気になる点がございましたら、私共に電話でもメールでも構いませんのでお力添えをよろしくお願いいたします、名刺です」

誠は誠意をこもったお辞儀で、名刺を僕に渡してくるので、仕方無く受け取った。

「それでは、失礼いたします」

僕は壁の時計を見る。7時38分を指している。
モタモタしてると遅刻になってしまう。
僕は髭を剃り、顔を洗う。朝食をささっといただき、リュックに必要なものをいれる。そして弁当を受け取り、家を出た。向かい風で、髪がボサボサになる。遅刻5分前、教室へたどり着いた。

「おはよう、たい」
「おはよう、茂丸!」
「髪、ボサボサだな」
「ちょっと向かい風でな。っていうか、あんたに聞きたいことがあるんだけど」
「昨日のことだろ?」
「やはり、関係してたか」
「暴れすぎて後ろの左足脱臼してるんだわ」
「茂丸、葉阿戸を救ってくれてありがとう」
「礼には及ばん。結局3人とも病院の世話になるんだな」
「奇跡的に皆軽傷ですんだから運がいいな。運と言えばあの人形だ。ちなみに、明日神社の境内の中にあの人形入れても平気なのか?」
「何箇所かまわってもうんともすんとも言わないよ」

キンコンカンコーン

僕は担任が来る予感がした。急いでトランクスとズボンを脱いで席に座った。
がらら

「皆おはようー、月曜日からテストー、今日も欠席はいつものメンツなー。昼休み、日余さんのご両親がいらっしゃるようだー、蟻音ー、何をしたのか知らないがー、退学になっても先生は知らないからなー、留年になったら面倒見てやってもいいぞー、以上ー」
「ちょっ、先生、待ってくだ」

がらら

先生は無慈悲な態度で教室から出ていった。

「蟻音、何やったんだよ? 日余さん、総資産、いくらあると思ってるんだよ」

満の顔は焦燥に溢れていた。

「大したことはしてないよ」
「俺のことは呼ばないんだな」
「茂丸だと気づかなかったんじゃないのか? あの犬」

がらら

和矢が入室した。
1時限目は英語の授業だった。今までの復習を一通り教えてくれた。テスト範囲も詳細に黒板に書かれた。
2限目は保健の授業だ。少なからずさり気なく入っていた保健は養護教諭が習わせてくれた。皆、大好き、保健の授業だ。
3時限目は現代文の授業だ。いちのお陰で何を言っているのかがわかるようになってきた。期末テストの範囲もバッチリだ。
4限目は生物の授業だ。担任がトランクスを渡してどこかに行った。その8人の科学選択の男子もいなくなった。生物はマークシートなので先生の目を盗みながら用語を暗記する。

そうして待ちに待った昼休みの始まりを告げるチャイムがなった。

僕は重い足取りで職員室まで出向いた。

「蟻音ー、よくやったなー、校長室に行くぞー」
「おー」

僕は行くぞーという掛け声に呼応してしまう。

「何か言ったか?」
「いえ、別に」

校長室まで歩いて3分だ。

「「失礼します」」

校長室に星と研戸がいた。

「こんにちは、たい君」

星は僕の顔を見るやいなやきらりと光る白い歯を見せて、笑った。

「こんにちは、星さん、研戸さん。あの、犬の調子どうですか?」
「足をひきづってて、今、動物病院に入院しているの。だからここに2人揃ってきたわけだけど」
「たい君、君、妙な夢を視るようじゃないですか。ぜひ警察官を目指してほしいです」
「失礼ですが、研戸さんって刑事なんですか?」
「ええ、そうです。私は県警捜査3課の日余です。空き巣、ひったくり、すりなどの窃盗事件の捜査を担当している者です。以後お見知りおきを。どうぞ」

研戸は名刺を出して両手で渡してきたので、しぶしぶ僕は受け取った。

「葉阿戸もたい君に言われたんだから、素直にパパに頼めばいいのに」
「心配させたくなかったんじゃないですか?」
「反抗期で、あんな格好して。中学の頃はもっと男らしかったんですけどね」
「パパ、その話はしない、好きにしろって言ったじゃない」
「……ごほん、ともかく、葉阿戸を助けてくれてありがとうございました」
「ありがとうね、たい君」

日余夫妻は僕に優しく言うと、微笑みかけた。葉阿戸に似ていた。

「いえ、別に、怪我させちゃったし」
「軽傷ですんでよかったですよ」
「入院はするんですか?」
「今日病院に泊まって、明日帰るのよ」
「すぐに帰れて良かったですね」
「あの子には、医師か警察を目指してほしいからね」
「ママ、そういう事言わないで。そういうわけでこれはささやかなるプレゼントです」

研戸は大きめな四角い、包みを渡した。後ろに賞味期限が書かれてある。どうやらクッキーのようだ。それもお高い。

「皆さんで召し上がって下さい」
「ありがとうございます」
「お昼食べた? 時間大丈夫? そろそろ退散しますか」
「はい、それでは。失礼しました」
僕は頭を下げると校長室を出た。
(茂丸も喜ぶだろうな)

「蟻音ー、俺は鼻が高いぞー、来年のクラス替え、お前の友達たくさんいるクラスにしてやるからなー」
「ありがとうございます」

僕は鼻歌交じりに階段を登った。
ビー!
教室に入るなり、屁をこく。

「おい、ご飯食べれないんだけど」と茂丸。

「ごめんごめん」

謝りながらクッキーを開封した。
12枚ほどのクッキーだ。
僕は先に弁当を食べることにした。
(今日もキャラ弁かな)
お弁当箱を開ける。
中身は僕の好きなバッ○ばつ◯君のキャラ弁だった。
僕は写真を撮ると茂丸に小突かれる。

「可愛い弁当だな、おい。後5分しかないぞ」
「いいよ、後クッキーやるよ」

僕は黒色と白色の混ざったクッキーを渡した。

「あざます」
「いちー、クッキー食べる?」
「それは洲瑠夜に対しての挑戦か? それとも冒涜か」

竹刀がいちの前に立つ。

「竹刀君、さっきもらっただけなんじゃないのかな? どいてよ」
「桃太郎が動物たちを仲間にするために行ったことは?」
「いや普通にクッキー下さいって言えよ。まわりくどいな、ほら」

僕は竹刀にクッキーをあげた。

「え? いいのか?」
「演技臭いな、しっし!」

僕は竹刀に払いのけるジェスチャーをした。
竹刀はクッキーを食べながら廊下に出ていった。
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