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79 女装の休日
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カフェに寄ることになった。
僕は葉阿戸と2人席、茂丸と明日多里少といちは4人席に座った。
「葉阿戸、僕、絶対変な目で見られてるんだけど」
僕の女装は流石に似合っていないし、男だとすぐに分かるほどだ。
「ふふ、楽しいね」
「僕で遊ばないでくれ」
各々好きな飲み物を注文した。
「来年、同じクラスになれるといいね」
「そうだな」
僕は葉阿戸と目があってそらした。
飲み物が届けられる。
「また遊ぼう。それとプリクラありがとう、……今度は2人で撮りたいな」
「ええ!? 葉阿戸どうした? 熱でもあるのか?」
「俺は別にどうもしてないよ」
「何を企んでるんだ?」
「何も? ……嬉しくないか……」
「いや、もう何度でもプリクラ撮ろう。というか今撮る?」
僕はコーヒーを飲み干す。
「いいの? じゃあ」
葉阿戸が自撮り棒を取り出した。
「ってこれ、SNSにあげるの? 僕、女装してるんだけど」
「いやいや、2人の思い出としてとっとく用だよ」
カシャシャシャシャ。
葉阿戸は撮った写真を早速、待ち受けにしている。
「おい、そろそろ、行くか?」
明日多里少は僕を冷たい目で見た。
「あ、はい」
「せっかちだな」
「なんか言ったか? 葉阿戸」
「いや、別に?」
「明日姉さんは今日は特別にかっこいいなと思ってます」
「当たり前だろ、豚野郎!」
「すみません!」
僕は財布を出して、いちと茂丸とで割り勘した。
「ごちそうさまでした」
「ごちー」
「次どこ行く?」
「僕そろそろ帰らないと」
「勉強するつもりだろ」
茂丸は嫌味ったらしく言ってきた。
「そうだけど?」
「うちももうそろそろ、門限があるから」
「ん? じゃあ帰るか。いち君、助手席ね」
「え? 茂丸じゃなくて?」
「君は言うことが聞けないのか?」
「いや、はい、うちで良ければ!」
「よし」
「明日姉さん、茂丸死にそうな顔してますよ」
「ほっとけば治るぞ」
「そんな、かすり傷みたいに」
皆は車に乗り込んだ。
明日多里少はエンジンをかけて発進した。
性格とは違い細やかな運転マナーだ。
僕は自然と眠くなってきた。
「寝ないで、たい、またなにかされたいのか?」
「うー、眠い」
僕は葉阿戸の肩に頭をあずけて眠ってしまった。
「たい、起きろー」
「ん? はっ、わあ、葉阿戸」
葉阿戸の顔が至近距離にあった。
「ごめん、守ってやれなくて」
「え? 何が?」
「顔」
葉阿戸は鏡を見せた。
「ぎゃあああああ」
僕の顔が落書きされて、シールも貼られている。
ウィッグは取られていて、まぶたに目が開いているような落書き、おでこに肉、頬に猫のヒゲ。顔にハートのシールや音符のシールが貼られている。
「でも大丈夫! 明日姉さん、水性ペンだったよね、俺が貸したの!」
「あ、ごめん、間違えて、油性ペンで書いちゃった。ふふふふ」
明日多里少は首を傾けて、さもおかしそうに笑っている。
「わざとだ!」
「あ? 文句あるのか?」
「すみませんでした」
僕は謝ると、明日多里少はそっぽ向いた。
車はちょうど、僕の家の前に止まった。
「じゃあ、ありがとうございました。皆、また明日!」
「ん!」
「じゃあな」
「ばいばい!」
「またねー」
皆を乗せた車は僕を下ろすとさっさと行ってしまった。
僕はシールだけでも剥がし、家に入った後、浴室に直行した。
「まじで落ちないし!」
僕は母の使っている洗顔フォームで落書きを落とそうとしたが、少し薄まっただけだった。しばらくすると、ドアを叩く音がした。
「たいちゃん、どうしたの?」
「あ、なんでもない」
僕は覚悟を決めて浴室から出た。
「たいちゃん、なにか悩みでもある? いじめられてるの?」
「母さん、直球すぎ! なにもないよ、ちょっと遊ばれただけ」
「そう? それならいいけど」
母は安心したように言った。
「明日の調理実習でエプロン使うんだ」
「用意しとくね」
母はそれ以上何も聞いてこなかった。
◇
次の日。
僕は学校で顔のことをからかわれた。
4時間目の授業は調理実習が行われることになった。
お好み焼きを作った。名前の順での作業だ。
竹刀のグループはフライパンから火が出てきて皆がビビっていた。別の班のいちが蓋を締めていた。そのお好み焼きは焦げた何かになった。
「いちの、手料理食べたいな」
竹刀はいちからおこぼれをもらおうと必死だ。
「わかったよ。分けてあげるから、はい!」
いちは自分の作ったお好み焼きを半分、竹刀に与えた。
竹刀はすぐに頬張って、飲み込んだ。
僕は猫舌なので、(相当熱いはずなのに)と思った。
「フーフー」
いちも猫舌のようだ。
「そんな時は俺が食べさせてやろう」
「竹刀君の分はもうないよ、どっかいって」
「そんな事言うなよ、俺が――」
竹刀がいいかけた瞬間、いちはすごい速さでお好み焼きを食べた。
その後、水を飲む。
「味分かったの?」
「全然。ごちそうさまでした」
「可愛そうないち」
「まああいいや、サンキュな? いち。おっと、いい匂いがするな~」
竹刀は茂丸のいるグループに入っていった。
「何だあいつ」と僕。
「もうすぐお昼だってのにな?」
さんぽも何やら不思議そうに見ていた。
その後、お昼休みも終わり、授業も終わった。
僕は葉阿戸と2人席、茂丸と明日多里少といちは4人席に座った。
「葉阿戸、僕、絶対変な目で見られてるんだけど」
僕の女装は流石に似合っていないし、男だとすぐに分かるほどだ。
「ふふ、楽しいね」
「僕で遊ばないでくれ」
各々好きな飲み物を注文した。
「来年、同じクラスになれるといいね」
「そうだな」
僕は葉阿戸と目があってそらした。
飲み物が届けられる。
「また遊ぼう。それとプリクラありがとう、……今度は2人で撮りたいな」
「ええ!? 葉阿戸どうした? 熱でもあるのか?」
「俺は別にどうもしてないよ」
「何を企んでるんだ?」
「何も? ……嬉しくないか……」
「いや、もう何度でもプリクラ撮ろう。というか今撮る?」
僕はコーヒーを飲み干す。
「いいの? じゃあ」
葉阿戸が自撮り棒を取り出した。
「ってこれ、SNSにあげるの? 僕、女装してるんだけど」
「いやいや、2人の思い出としてとっとく用だよ」
カシャシャシャシャ。
葉阿戸は撮った写真を早速、待ち受けにしている。
「おい、そろそろ、行くか?」
明日多里少は僕を冷たい目で見た。
「あ、はい」
「せっかちだな」
「なんか言ったか? 葉阿戸」
「いや、別に?」
「明日姉さんは今日は特別にかっこいいなと思ってます」
「当たり前だろ、豚野郎!」
「すみません!」
僕は財布を出して、いちと茂丸とで割り勘した。
「ごちそうさまでした」
「ごちー」
「次どこ行く?」
「僕そろそろ帰らないと」
「勉強するつもりだろ」
茂丸は嫌味ったらしく言ってきた。
「そうだけど?」
「うちももうそろそろ、門限があるから」
「ん? じゃあ帰るか。いち君、助手席ね」
「え? 茂丸じゃなくて?」
「君は言うことが聞けないのか?」
「いや、はい、うちで良ければ!」
「よし」
「明日姉さん、茂丸死にそうな顔してますよ」
「ほっとけば治るぞ」
「そんな、かすり傷みたいに」
皆は車に乗り込んだ。
明日多里少はエンジンをかけて発進した。
性格とは違い細やかな運転マナーだ。
僕は自然と眠くなってきた。
「寝ないで、たい、またなにかされたいのか?」
「うー、眠い」
僕は葉阿戸の肩に頭をあずけて眠ってしまった。
「たい、起きろー」
「ん? はっ、わあ、葉阿戸」
葉阿戸の顔が至近距離にあった。
「ごめん、守ってやれなくて」
「え? 何が?」
「顔」
葉阿戸は鏡を見せた。
「ぎゃあああああ」
僕の顔が落書きされて、シールも貼られている。
ウィッグは取られていて、まぶたに目が開いているような落書き、おでこに肉、頬に猫のヒゲ。顔にハートのシールや音符のシールが貼られている。
「でも大丈夫! 明日姉さん、水性ペンだったよね、俺が貸したの!」
「あ、ごめん、間違えて、油性ペンで書いちゃった。ふふふふ」
明日多里少は首を傾けて、さもおかしそうに笑っている。
「わざとだ!」
「あ? 文句あるのか?」
「すみませんでした」
僕は謝ると、明日多里少はそっぽ向いた。
車はちょうど、僕の家の前に止まった。
「じゃあ、ありがとうございました。皆、また明日!」
「ん!」
「じゃあな」
「ばいばい!」
「またねー」
皆を乗せた車は僕を下ろすとさっさと行ってしまった。
僕はシールだけでも剥がし、家に入った後、浴室に直行した。
「まじで落ちないし!」
僕は母の使っている洗顔フォームで落書きを落とそうとしたが、少し薄まっただけだった。しばらくすると、ドアを叩く音がした。
「たいちゃん、どうしたの?」
「あ、なんでもない」
僕は覚悟を決めて浴室から出た。
「たいちゃん、なにか悩みでもある? いじめられてるの?」
「母さん、直球すぎ! なにもないよ、ちょっと遊ばれただけ」
「そう? それならいいけど」
母は安心したように言った。
「明日の調理実習でエプロン使うんだ」
「用意しとくね」
母はそれ以上何も聞いてこなかった。
◇
次の日。
僕は学校で顔のことをからかわれた。
4時間目の授業は調理実習が行われることになった。
お好み焼きを作った。名前の順での作業だ。
竹刀のグループはフライパンから火が出てきて皆がビビっていた。別の班のいちが蓋を締めていた。そのお好み焼きは焦げた何かになった。
「いちの、手料理食べたいな」
竹刀はいちからおこぼれをもらおうと必死だ。
「わかったよ。分けてあげるから、はい!」
いちは自分の作ったお好み焼きを半分、竹刀に与えた。
竹刀はすぐに頬張って、飲み込んだ。
僕は猫舌なので、(相当熱いはずなのに)と思った。
「フーフー」
いちも猫舌のようだ。
「そんな時は俺が食べさせてやろう」
「竹刀君の分はもうないよ、どっかいって」
「そんな事言うなよ、俺が――」
竹刀がいいかけた瞬間、いちはすごい速さでお好み焼きを食べた。
その後、水を飲む。
「味分かったの?」
「全然。ごちそうさまでした」
「可愛そうないち」
「まああいいや、サンキュな? いち。おっと、いい匂いがするな~」
竹刀は茂丸のいるグループに入っていった。
「何だあいつ」と僕。
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