もしも学校の椅子がトイレの椅子だったら

五月萌

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97 誕生日

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誕生日当日。
今日、9月の22日は僕の誕生日だ。誰にも気づかれなかった去年とは理由が違う。きっと何人かは覚えていてくれるはず、と僕は学校にウキウキしながら着く。

「たい」

いちが教室のドア越しに僕の出方を伺っている。

「ん?」

僕は教室のドアを開けた。

「「「たい、ハピバー!!!」」」

珠緒、いち、竹刀が声を上げた。

パーン! パーン!

下に構えていた純と黄色がクラッカーを鳴らした。ガスの匂いとともに紙テープが僕の顔に張り付いた。

「おお! ありがとう」
「プレゼントはロッカーの中を見てな」

モンはにこにこで話しかける。
僕は早速、迷わずにロッカーを開いた。中には大きめな箱が入っていた。フタを開けてみると……白い顔をした赤髪の怖い人形が風船のように飛び出てきた。
ボヨヨ~ン!

「わあああああ!」
「「「ははは!!!」」」
「誰だ、僕のロッカーにびっくり箱入れたの!?」
「ごめんね、その箱の中身よく見てみてよ」

いちは合掌しながら言う。

「ん? これは?」

箱の中身をよく見てみると、お菓子や包んであるプレゼントやらが入っているようだ。
手袋、潰れたケーキ、プ◯キュアの下敷き、ポケ◯ンパン、グラビアアイドルの写真集……。
僕は静かにロッカーの中に押し戻した。

「えっと、たい、嫌だった?」
「いや、嬉しいよ。帰り、どう持ち帰ろうか考えてただけ!」
「そっか!」
「いちは手袋?」
「よく分かったね、もうすぐ先生来るよ」

いちは下半身裸になって椅子に座った。
その時、ドアが開く。

「「「葉阿戸だ、おはよう!」」」
「おはよ」

葉阿戸は不機嫌そうに答える。ひざ掛けを腰に巻き、着替える。

「葉阿戸……?」
「ん? 何?」
「明日姉さんでもないな、どうしたんだよ、いきなり不良みたいに」

キンコンカンコーン
チャイムが僕の質問をかき消した。
がらら

「おはようー! 今日は日本史探求の抜き打ち小テストがあるー。今日の休みはいつものメンバーねー。それじゃあ、衣類を集めてきてくれー」

橋本の声で1番後ろの人が皆動く。

「抜き打ちとかないわー」
「オレも勉強してない」

純は満と話し込む。

「それではー、気を緩めるなよー」
「「「はーい」」」

全員の声を受けて、橋本は居なくなった。
葉阿戸が力を失ったかのように机にうつ伏せになる。

「葉阿戸?」
「やめたほうがいいよ、多分うちの予想では昨日寝れてないから」

いちは僕に助言する。

「うん、そういう時はどうすれば?」
「1時間目、古典か。宮内の授業は大体自習になるだろう? 葉阿戸様はおねむのようだ、起こすなよ」
「モン、あんた」
「あ、ほら来るよ」

いちの言った瞬間、扉が開いた。

「はいぃ、授業を始めてくらはいぃ」
「深呼吸、礼!」
「「「お願いします」」」
「それじゃぁ、自習ぅ!」

宮内はポケットから文庫本を取り出して読み始めた。本にはカバーがしてあるがR18の本だろう。

「日本史探究のテストはどこが範囲だ?」
「p42からp78までだろう?」

やまびこのように遠くから純の声が聞こえた。

「サンキュ!」

皆は日本史探究の勉強をし始めた。
カリカリとペンが交錯する音だけがこの狭い世界を占めている。
僕も眠たくなってきた。
ブリブリ。
誰かがうんこした。
僕は匂いにとてもじゃないが耐えられない。目はこれでもかと大きく見開く。
この教室内の空気を汚したのは斜め前の席の黄色だった。
僕は消臭スプレーを渡らせた。


キンコンカンコーン

「はい、それでは授業を終わりにしますぅ!」
「深呼吸、礼!」
「「「ありがとうございました」」」
「次は? 数学? 葉阿戸、寝てたら当てられるよ? 起きて! 満! 葉阿戸を起こして」

僕は葉阿戸の斜め前の席に座る満に頼む。

「起こしてくださいだろ?」
「ぐぬぬ。起こしてください」
「葉阿戸さん、起きてください。……全然起きないな。……こうなったら、握りっペ!」

満はプスゥと放屁すると、それを握り、葉阿戸に食らわせた。

「んー? 臭い! ゲホゲホ!」
「葉阿戸、次数学だよ?」
「あれ俺、いつの間に学校にいたんだろう?」
「寝ぼけてないで」
「2時限目か、数学?」
「そうだよ」
「あー、起こしてくれてありがとう」
「ま、いいぜ」

満は後ろを向きながら、鼻の穴を大きくしているようだ。
キンコンカンコーン
がらら。

「数学の授業を始める」
「深呼吸、礼!」
「「「お願いします」」」

数学の授業は緊張感を生みながら進んでいく。

「この問題はー、前田、分かるか?」

数学の先生の質問に結は戸惑って、どもっていると、襟足の長い黄色がノートを結に見せている。

「X=2 Y=1」
「はー、違う。日余、分かるか?」

先生はため息勝ちに葉阿戸に流れる。
僕は(あの2人、絶対これから気まずいだろう)と思った。

「X=1 Y=4」

とばっちりを浴びた葉阿戸だったが、鮮やかに問題を解く。

「うん、合ってる、よく勉強したな」

数学の先生は葉阿戸を褒める。そして、その放物線を黒板に書き始め、面積の問題を僕らに解かせた。

キンコンカンコーン

「では、復習しておくように」
「深呼吸、礼!」
「「「ありがとうございました」」」

先生が居なくなると葉阿戸の隣の席の珠緒が葉阿戸に確認を取る。

「次の日本史探究、抜き打ちテストだってよ」
「そっか」
「そっかって? それだけ? 勉強してるの?」

僕が会話に混ざる。

「俺、中学の時に高校の日本史探究勉強してたから」
「まじか! でも中学の頃ってだいぶ前だけど、大丈夫そ?」
「余裕、余裕、大余裕」
「何も言えねえ」

僕は自分の日本史探究の勉強に戻った。
キンコンカンコーン
がらら。

「授業を始めますー」
「「「お願いしますー」」」

全員が机に教材をしまった。

「はいー。抜き打ちテストの時間だー、カンニングはするなよー」

橋本がテスト用紙と答案用紙を配った。

「始めー!」

橋本の合図で、皆は問題を解き始めた。
戦国武将の名前を書いていく。色々なものを発明した先人の名前を書く欄もあった。
さすがの僕でもわからない人がたくさんいる。

キンコンカンコーン

「やめー! 後ろから答案用紙を回してこいー! 次は体育なのでトランクスを返すー」

橋本はテストの解答用紙が集まると、そのままトランクスを配った。
皆は橋本の指示に従う。

「それじゃー」

ウウィイイイン。
僕らの足が自由になった。
体育は体育祭に向けて、リレーの練習となった。
僕はアンカーを務める。
(この光景をいつまでも覚えているな)
そう思いながら駆け出した。



そして時間は経ち、放課後。

「たい、誕生日おめでとう」
「ありがと! 葉阿戸」

僕は葉阿戸と一緒に喫茶店に入っていた。
ミルフィーユを葉阿戸が買ってくれた。ちなみに、学校のロッカーに入っていたケーキ(洲瑠夜と竹刀の手作りケーキ)はすでに腹の中だ。普通に美味しかった。

「仲直りを祝って」
「「乾杯!!」」

僕らはコーラで乾杯した。
少し下にグラスを当てる。葉阿戸は先輩でもないが人生の先輩として敬った。
葉阿戸の調子はいつもと変わらない。
僕の胸騒ぎは杞憂だったに違いない。

「美味い」

ミルフィーユは甘くてとろけそうなくらい美味しかった。

「俺からのプレゼントな」

葉阿戸は四角い厚みのあるケースを手に取った。箱を僕に向けて半分になるように開く。
僕は驚いて見ていた。
(指輪?)
それは、腕時計だった。
「Gージョックの腕時計だ。高くなかった?」
「高いとか関係無しに長持ちするものをと! ロレッグスにしようか迷ったんだけど。一応、お揃いの黒いのにしてみた」
「そうなんだ? 僕は葉阿戸とお揃いがいい」
「右手貸して?」
「いいよ! 自分でつけれるから。葉阿戸目立ってるんだって輝きを消して」
「分かったよ。はい」

葉阿戸は腕時計を僕によこすと、テーブルの上に両肘をつけその上に顔をのせた。
僕は右手に腕時計をつける。

「どう? 似合うかな?」
「うん、かっこいい」
「へへへ! ありがとう。明日、皆に自慢しよう」
「自慢かーやめといたほうが、モン含めハート隊にのされそうだから」
「大丈夫だよ。僕そんな弱くないし」
「じゃあそろそろ数学の勉強を教えてもらおうか」
「ん! 三角関数からな」

僕は頭をフル回転させながら数学を葉阿戸に教えた。

そして、帰る頃、これから待っている行事のことを思い出した。

「葉阿戸、体育祭、頑張ろう」
「走るの得意だから、任せとけ」

これから、私立御手洗高校の体育祭が始まる――。
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