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三日目 ―夢の終わり―
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時間は過ぎる。
夢は覚める。
それは当たり前のこと。
真面目に生き、教師らしい規範を旨に抑圧してきた自分が解放されるというのは、こんなに喜びに満ちるのだと賢人は生まれて初めて知った。
被虐嗜好が指の先まで満たされる充足感は、とうとう賢人に最後までセーフティワードを言わせなかった。
もともと被虐趣味があったとは言え、やりたい事とやりたくない事、出来る事と出来ない事がある。
相手が本気で嫌がる行為は強制しない、それがこのリビドーの鍵を受け取るときに決められた、絶対に破ってならない決まり事だ。
プレイを中断するセーフティワードは、殆どM側が言う場合が多い。体に負担が掛かるのはM側なのだから当たり前だろう。
確かにハードプレイで体の負担は大きかったが、相手の加減の仕方は絶妙で、限界ぎりぎりのところを責める手管に賢人は悶えるばかりだった。
アナルバイブを尻尾代わりに首輪を付けて庭を散歩し、テーブルの上では卵形ローターを産卵するみたいに産んで見せた。
生徒の前では厳しくも穏やかな教師の顔で授業をしていたくせに、勉強の時間だと目の前に出された一桁の足し算も不正解になる始末だ。
なにしろ答えは分かっても回答欄に答えを書き写すのは、アナルに極太のマジックを咥えて腰をうねらせねて数字を書かなくてならず、回答欄から文字がはみ出て不正解にされたのだ。
答えを間違うたびに正解の数字のぶんだけ尻を叩かれ、そのたびに教師としてもプライドも粉微塵にされて泣きじゃくった。
閉ざされた二人だけの空間は、賢人にとって本当の自分を知る最高の舞台だった。
滅多に使わなかった寝室のベッドの上、拘束されることも体にラクガキされることもなく、賢人と男はゆるやかに抱き合っていた。
「大丈夫? やり過ぎたかな?」
よく聞けば男の声は耳に優しい甘い声だ。こんな声を聞いたのは、ここに来てから初めてかもしれない。
「いいえ――最高でした。その……新しい扉が開いた感じです」
「そう? でもそれは俺も同じかな。君があんまり可愛くて、ついつい虐め過ぎちゃったくらい」
言いながら男は賢人の唇に触れるだけのキスをしてくる。
あと数時間でこの閉ざされた世界の鍵は開き、そしてまた非現実世界を隠して施錠してしまうのだ。
――現実に戻る時間が迫っている。
羽毛で撫でるような柔らかく甘い声の持ち主が、賢人に君臨していた男と同じ相手とは思えない。
そう言えば出会ってから三日間、お互い名前も知らなかった。
名前を言うくらいはルール違反ではないが、直接に互いの素性を探るのは許されないルールだ。
ここは現実と切り離された場所だからこそ、現実の臭いを持ち込んではならないと固く約束させられている。
甘い顔の男はプレイ中は酷くサディスティックだったのに、プレイ以外では世話焼きで優しい好青年だった。
最もこれは彼に限らず、Sと言うのはプレイ以外では紳士的で甲斐甲斐しいタイプが多いのだが。
だから彼が優しいのはきちんとSMプレイを楽しむ男のありがちな態度であって、自分が特別な訳ではないと賢人は理解している。
濃厚な刺激と開放的だった三日間。
男の優しく触れる体温に微睡む視線の先には、初日に来ていたスーツがクリーニングされた状態で置いてある。
清潔で糊が効いたスーツを着込み、ネクタイをしっかり締めて賢人は日常へと戻っていく。
非日常の世界も、解放されるのも、ここまでだ。
それが寂しいと思うのは賢人だけだろう。
※※※※※※※※※※※※※※※
次で終わります
夢は覚める。
それは当たり前のこと。
真面目に生き、教師らしい規範を旨に抑圧してきた自分が解放されるというのは、こんなに喜びに満ちるのだと賢人は生まれて初めて知った。
被虐嗜好が指の先まで満たされる充足感は、とうとう賢人に最後までセーフティワードを言わせなかった。
もともと被虐趣味があったとは言え、やりたい事とやりたくない事、出来る事と出来ない事がある。
相手が本気で嫌がる行為は強制しない、それがこのリビドーの鍵を受け取るときに決められた、絶対に破ってならない決まり事だ。
プレイを中断するセーフティワードは、殆どM側が言う場合が多い。体に負担が掛かるのはM側なのだから当たり前だろう。
確かにハードプレイで体の負担は大きかったが、相手の加減の仕方は絶妙で、限界ぎりぎりのところを責める手管に賢人は悶えるばかりだった。
アナルバイブを尻尾代わりに首輪を付けて庭を散歩し、テーブルの上では卵形ローターを産卵するみたいに産んで見せた。
生徒の前では厳しくも穏やかな教師の顔で授業をしていたくせに、勉強の時間だと目の前に出された一桁の足し算も不正解になる始末だ。
なにしろ答えは分かっても回答欄に答えを書き写すのは、アナルに極太のマジックを咥えて腰をうねらせねて数字を書かなくてならず、回答欄から文字がはみ出て不正解にされたのだ。
答えを間違うたびに正解の数字のぶんだけ尻を叩かれ、そのたびに教師としてもプライドも粉微塵にされて泣きじゃくった。
閉ざされた二人だけの空間は、賢人にとって本当の自分を知る最高の舞台だった。
滅多に使わなかった寝室のベッドの上、拘束されることも体にラクガキされることもなく、賢人と男はゆるやかに抱き合っていた。
「大丈夫? やり過ぎたかな?」
よく聞けば男の声は耳に優しい甘い声だ。こんな声を聞いたのは、ここに来てから初めてかもしれない。
「いいえ――最高でした。その……新しい扉が開いた感じです」
「そう? でもそれは俺も同じかな。君があんまり可愛くて、ついつい虐め過ぎちゃったくらい」
言いながら男は賢人の唇に触れるだけのキスをしてくる。
あと数時間でこの閉ざされた世界の鍵は開き、そしてまた非現実世界を隠して施錠してしまうのだ。
――現実に戻る時間が迫っている。
羽毛で撫でるような柔らかく甘い声の持ち主が、賢人に君臨していた男と同じ相手とは思えない。
そう言えば出会ってから三日間、お互い名前も知らなかった。
名前を言うくらいはルール違反ではないが、直接に互いの素性を探るのは許されないルールだ。
ここは現実と切り離された場所だからこそ、現実の臭いを持ち込んではならないと固く約束させられている。
甘い顔の男はプレイ中は酷くサディスティックだったのに、プレイ以外では世話焼きで優しい好青年だった。
最もこれは彼に限らず、Sと言うのはプレイ以外では紳士的で甲斐甲斐しいタイプが多いのだが。
だから彼が優しいのはきちんとSMプレイを楽しむ男のありがちな態度であって、自分が特別な訳ではないと賢人は理解している。
濃厚な刺激と開放的だった三日間。
男の優しく触れる体温に微睡む視線の先には、初日に来ていたスーツがクリーニングされた状態で置いてある。
清潔で糊が効いたスーツを着込み、ネクタイをしっかり締めて賢人は日常へと戻っていく。
非日常の世界も、解放されるのも、ここまでだ。
それが寂しいと思うのは賢人だけだろう。
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