孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ

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27話 服屋

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 おお…思った通り、箱庭にもう1つの空間が出来た。

 といっても、この箱庭は家だけ置いてある状態だ。

 本当に休むためだけの場所。

 もう少し何か、あってもいいんじゃないか…と、思わなくはないが、安全に寝る場所を確保出来ただけでも、よしとするか。

 「ご先祖様ー? どうかしたのかにゃ?」

 路地裏にいる、俺を表から顔を出し、覗いているネロに、何でもないと首を振る。

 (ああ、寝る場所を見つけただけだ)

 「にゃ? そこら辺の宿じゃ駄目なのかにゃ?」

 (安全じゃないだろ)

 「そうなのかにゃ?」

 そうなんだよ!!

 (そんな事より、お前の服とか買いに行くぞ!)

 「それならお店知ってるにゃ!」

 はぁ? お前つい前まで奴隷だっただろうが…いつ知ったんだ?

 俺は鼻歌を奏でるネロの後ろをついて行くのだった。


 暫くすると…。

 「ここにゃ! 受付のお姉さんが、服を買うならここがいいって教えてくれたのにゃ!」

 あ~ネロは布1枚しか着てないからな…。

 早速入っていったネロを、追いかけるように入店すると…。

 「にゃぁぁああ!!」

 俺の眼の前にはとんでもない光景が映っていた。

 ゴツいおっさんが、化粧をし…クネクネしながらネロの肩に、大きな手を置いてる姿が…。

 なんだあの変態は…。

 俺はネロを見捨て、外に出ようとすると…。

 「ご先祖様ー! 助けてにゃー!!」

 「あら~ん? またか・わ・い・いお客様いらっしゃ~い!」

 クソ! ネロめ俺に声をかけるじゃねえ!!

 気づかれただろうが!

 だが、まぁいい! 今ならまだ間に合ーー!

 「お姉様ぁ~! たっだいまぁー!! お姉様ぁが欲しいって言ってた、東の国の絹って物、やっと手に入れたわよん!! あら! 可愛い猫ちゃん!! こっちおいでぇ~!」

 店に入ってきたのは、似たような奴がもう1人…。

 止めろ! こっち来るんじゃねえ!!

 「あら? 消えちゃった? 猫ちゃん! どこにいっちゃたの~? お願い出てきて~」

 俺は姿を箱庭に、移し…ネロを捕まえている、変態に金貨1枚まで、と脳に送り店から出た。

 後ろから、ネロの悲鳴が聞こえたような気がするが…未熟なのが悪い。

 甘んじて受け入れろ。

 「にゃ~~~!!」


 €€€€€


 「ううぅぅぅ! 酷いにゃ! 酷いにゃ! ご先祖様がネロを置いて、自分だけ逃げるなんて酷いにゃ~!」

 (知らん。捕まったお前が悪い)

 変態2人に見送られ、店から出てきたネロは、左手に大きめな布袋を抱え…布1枚だったネロの服装は、動きやすそうな短パンに、変な文字が書かれたシャツに変わっていた。

 健康そうな足に、つい噛みつきたくなる衝動に襲われる。

 「にゃ! 今、ご先祖様が怖い事考えたような気がしたにゃ!」

 そう言って、物陰に隠れるネロを見て、勘が鋭いなと…思わずにいられなかった。

 (次は武具屋に行くぞ)

 「わ、分かったにゃ」

 前を歩くネロが、たまに後ろ振り向くながら…武具屋を目指して足を進めた。
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