1 / 117
1.ようこそ本の世界へ
しおりを挟む
それは突然の出来事だった。
ドスンっと文字通りの音を立てて尻もちをついた。お尻の痛さに耐えながら立ち上がり、辺りを見回して言葉を失う。
ここは一体……?
どこかの書庫だろうか?
だとしたらかなりの規模の書庫に違いない。私を取り囲むように聳え立っているのは、天井まである大きな本棚の大群だ。見上げるほど高い本棚は無数に並び、その中にはまばらだけれども、高価そうな革張りの本が収納されている。
どうして私はこんな場所にいるのかしら?
本好きとしてはこの書庫を見て回りたい気もするけれど、無闇に知らない場所を歩き回ることに少しだけ恐怖も感じた。何しろここは圧倒されるほどの本棚に囲まれて少々薄暗い。
えーっと……今日もいつものように放課後図書室にいたわよね……
私、松本アリスは事情により放課後はいつも高校の図書室で過ごしている。まぁ事情って言っても、家族とうまくいってないから家に帰りたくないっていうだけのことなんだけど。
読書、中でも恋愛小説好きの私にとって、図書室はひきこもるのに最適の場所だった。読書をしてると、時間なんてあっという間にたってしまう。
そうそう。今日は見慣れない本が机の上に出しっぱなしだったんだっけ。
それは革製の年季が入ったぶ厚い本だった。図書室では見かけない高価そうな装丁が気になって、つい開いてしまったら……ここで尻もちをついていたのよね。
ってことは……信じられないし信じたくはないけれど、私ってば本に吸い込まれちゃったとか?
「まさかね」
そんな小説みたいな事あるわけないじゃない。だいたいそういう魔法みたいな事があるんなら、眩い光とかが本から出てきそうだし。
自分で自分の考えがバカバカしくて、ふふっと小さく笑った。
その笑い声に反応するかのように、分厚い本を閉じるようなトスっという音が、静まり返った部屋の中に響いた。
「誰かいるのかい?」
薄暗い部屋の奥から、低くてゆったりとした声が響いてくる。
ど、ど、どうしよう?
私、おばけとかホラーとかって苦手なのよね。
姿の見えない人物の声に恐怖を感じるが、このまま黙って隠れているのも、それはそれで怖い気もする。
恐る恐る声のした方に歩いていくと、1人の男性が座って本を読んでいるのが目にとまった。
「あの、私……」
話かけようとして、その人の顔に目が釘付けになる。
何、この人……超絶イケメンなんですけど。こんなカッコいい人テレビでも見たことないわ。
固まってしまった私を気にする風もなく、その人は不思議そうな顔をした。
「君は……どうやってここに入って来たんだい? 扉には全て鍵をかけたはずなんだけど」
「私は……えっと……」
気づいたらここにいたって言って、分かってもらえるかしら?
自分でもどうやってここに来たのか分からないので、うまく説明できる自信はない。何と答えようかと頭を働かせていると、男性の読んでいる本に目がとまった。
「あら? その本って……」
「こ、これは」
目の前のイケメンは慌てたように本の表紙を腕で隠した。どうやら私の目から本の題名を隠したかったようだ。
何、今の動作? とっても不審なんですけど……それにそんな隠し方したって遅いのよ。
「それ、『あの日の約束』ですよね?」
だってその本は私が一番好きな本なんだもん。結構古い本なんで、私以外に読んでる人を見るのは初めてだ。
「私もその本大好きで何度も読みましたよ。特に最後のアンドルが嘘をつくところ、何回読んでも泣いちゃいます。それに嘘に気づいたイザベラが気づかないフリをするところもいいんですよね。健気っていうか……」
しまった……大好きな本だからって、知らない人相手につい語ってしまった。しかも相手はこんなイケメンだ。絶対うざがられるに決まってる……
けれど目の前のイケメンは嫌な顔はしていなかった。というより、驚いたような顔で私の事を見つめていた。
「君は……笑わないだね……」
えーっと……今のどこに笑う要素があったかしら?
私は別にお笑いに厳しい人間ってわけじゃないけれど、今の流れで笑わなくて驚かれるというのはどういうことだろう?
戸惑う私に、「そういう意味じゃないよ」と、彼は少し目を細めて切なそうな表情を見せた。
「君はわたしが恋愛小説を読んでいることに気付いたのだろう? 男のくせにこんな物を読んでって、馬鹿にしないのかと聞いたんだよ」
「そんなことで馬鹿にするわけないじゃないですか」
なぜか自分でも驚くほど大きな声が出てしまった。目の前の男性も驚いた様で、元々大きな瞳をさらに大きく見開いている。
「読書に男も女も関係ないじゃないですか。恋愛小説だろうと推理小説だろうと、好きな本を読んで馬鹿にされるなんてあっていいわけありません」
全く失礼にもほどがあるわよ。私が読む本で他人を馬鹿にするような人間に見えたってこと?
腹が立ちながらも、さっきの怪しい行動を思い出す。
もしかしたらこの人は前に馬鹿にされた事があるのかしら? だから読んでいる本の表紙を慌てて隠したのだろうか?
「ありがとう」
男性が嬉しそうな顔をして微笑んだ。その笑顔があまりに素敵すぎて胸がトクンと音を立てる。
ああああ~!! かっこよすぎて目がやられてしまいそう。
金色の柔らかそうなストレートの短髪、よく晴れた空のように透き通った青い瞳、まるでおとぎ話に出てくる王子様みたいね。
「ねぇ君、名前を教えてもらってもいいかな?」
「アリスです。松本アリス」
アリスという名前は、私と同じく本が好きだったという母の愛読書からつけられた名前らしい。
らしいとしか言えないのは、私が母のことをよく知らないからだ。母は私が小さい頃に亡くなってしまい、記憶にも残っていない。
「アリスか。可愛い名前だね」
そう言われて思わず顔が熱くなる。こんなイケメンに呼び捨てにされたりしたら緊張しちゃうじゃない。
「それで……アリスはどうしてここにいるのかな?」
このイケメンは恋愛小説を読んでいるのを人に見られたくなくて、鍵をかけてこの書庫に閉じこもっていたらしい。そんな密室にいきなり私が現れたものだから、不思議でならないようだ。
「実は……」
私自身も正直よく分かっていないけれど、とりあえずできるだけ説明してみた。
「……というわけなんですよ」
私の説明を聞き終えたイケメンは、顎に手をあて、うーむとしばらく考え込む仕草を見せた。
「じゃあアリスは異世界からの客人なんだね」
前にそんな話を聞いたことがあるよっとイケメンはにっこりと微笑んで私を見た。
異世界からの客人……ってことはやっぱり私はあの本の中に吸い込まれてしまったのね。ああ、私ってば今本の世界にいるのよ!!
こんな状況なのにパニックにならずにすんだのは、そういった小説を数多く読んできたからだろう。そういうこともあるよなっと、すんなり受け入れてしまっている自分がいた。
「慣れない場所で不安だろうけど、大丈夫だよ」
イケメンの大きな手が私の手優しく包み込んだ。
「私が君を守るから」
真剣な眼差しでまっすぐに見つめられると息ができない。
えぇ? な、何なのこのシチュエーション?
密室に2人きりで、見たことのないほどのイケメンに見つめられるなんて……
「あ、ありがとうございます」
握られていた手をパッと離しながらそう答えた。このまま手を握られていたら、興奮しすぎて鼻血が出ちゃいそうだ。
きっと私、ものすごく赤い顔になっちゃってるわよね。ふぅっと小さく息を吐きながら熱くなっている頰に手を当てた。
「ではまず王宮の中を案内しようか」
そう言ってイケメンは立ちあがり私の横に立った。
「えっ? 王宮って?」
驚く私にイケメンは事も無げに答えた。
「あれ、言ってなかったかな? ここはアイゼンボルト王宮の書庫だよ」
「アイゼンボルト王宮……」
聞いたことのない名前だわ。そりゃ当たり前か。なんてったって私は本の世界にいるんだし……
「そう言えばまだわたしの自己紹介がすんでいなかったね」
そう言ってイケメンがキラキラパワー全開の笑顔を私に向けた。
「わたしはウィルバート アイゼンボルト、このアイゼンボルト王国の王太子です」
うわおっ。見た目王子様みたいとか思ってたけど、本当に王子様だったなんて。
初めて会う本物の王子様を前に返す言葉が思いつかない。そんな私の手をウィルバートが優しく持ち上げる。
「ようこそアイゼンボルト王国へ」
ウィルバートの形のよい唇が私の手の甲に優しく触れた。
はうっ。
ずきゅんと心臓が射抜かれたような痛さを感じて、思わず体が縮む。
私ってばこのまま死んじゃうんじゃない?
イケメンに耐性のない私はウィルバートのキラキラ攻撃にすっかりやられてしまった。
ドスンっと文字通りの音を立てて尻もちをついた。お尻の痛さに耐えながら立ち上がり、辺りを見回して言葉を失う。
ここは一体……?
どこかの書庫だろうか?
だとしたらかなりの規模の書庫に違いない。私を取り囲むように聳え立っているのは、天井まである大きな本棚の大群だ。見上げるほど高い本棚は無数に並び、その中にはまばらだけれども、高価そうな革張りの本が収納されている。
どうして私はこんな場所にいるのかしら?
本好きとしてはこの書庫を見て回りたい気もするけれど、無闇に知らない場所を歩き回ることに少しだけ恐怖も感じた。何しろここは圧倒されるほどの本棚に囲まれて少々薄暗い。
えーっと……今日もいつものように放課後図書室にいたわよね……
私、松本アリスは事情により放課後はいつも高校の図書室で過ごしている。まぁ事情って言っても、家族とうまくいってないから家に帰りたくないっていうだけのことなんだけど。
読書、中でも恋愛小説好きの私にとって、図書室はひきこもるのに最適の場所だった。読書をしてると、時間なんてあっという間にたってしまう。
そうそう。今日は見慣れない本が机の上に出しっぱなしだったんだっけ。
それは革製の年季が入ったぶ厚い本だった。図書室では見かけない高価そうな装丁が気になって、つい開いてしまったら……ここで尻もちをついていたのよね。
ってことは……信じられないし信じたくはないけれど、私ってば本に吸い込まれちゃったとか?
「まさかね」
そんな小説みたいな事あるわけないじゃない。だいたいそういう魔法みたいな事があるんなら、眩い光とかが本から出てきそうだし。
自分で自分の考えがバカバカしくて、ふふっと小さく笑った。
その笑い声に反応するかのように、分厚い本を閉じるようなトスっという音が、静まり返った部屋の中に響いた。
「誰かいるのかい?」
薄暗い部屋の奥から、低くてゆったりとした声が響いてくる。
ど、ど、どうしよう?
私、おばけとかホラーとかって苦手なのよね。
姿の見えない人物の声に恐怖を感じるが、このまま黙って隠れているのも、それはそれで怖い気もする。
恐る恐る声のした方に歩いていくと、1人の男性が座って本を読んでいるのが目にとまった。
「あの、私……」
話かけようとして、その人の顔に目が釘付けになる。
何、この人……超絶イケメンなんですけど。こんなカッコいい人テレビでも見たことないわ。
固まってしまった私を気にする風もなく、その人は不思議そうな顔をした。
「君は……どうやってここに入って来たんだい? 扉には全て鍵をかけたはずなんだけど」
「私は……えっと……」
気づいたらここにいたって言って、分かってもらえるかしら?
自分でもどうやってここに来たのか分からないので、うまく説明できる自信はない。何と答えようかと頭を働かせていると、男性の読んでいる本に目がとまった。
「あら? その本って……」
「こ、これは」
目の前のイケメンは慌てたように本の表紙を腕で隠した。どうやら私の目から本の題名を隠したかったようだ。
何、今の動作? とっても不審なんですけど……それにそんな隠し方したって遅いのよ。
「それ、『あの日の約束』ですよね?」
だってその本は私が一番好きな本なんだもん。結構古い本なんで、私以外に読んでる人を見るのは初めてだ。
「私もその本大好きで何度も読みましたよ。特に最後のアンドルが嘘をつくところ、何回読んでも泣いちゃいます。それに嘘に気づいたイザベラが気づかないフリをするところもいいんですよね。健気っていうか……」
しまった……大好きな本だからって、知らない人相手につい語ってしまった。しかも相手はこんなイケメンだ。絶対うざがられるに決まってる……
けれど目の前のイケメンは嫌な顔はしていなかった。というより、驚いたような顔で私の事を見つめていた。
「君は……笑わないだね……」
えーっと……今のどこに笑う要素があったかしら?
私は別にお笑いに厳しい人間ってわけじゃないけれど、今の流れで笑わなくて驚かれるというのはどういうことだろう?
戸惑う私に、「そういう意味じゃないよ」と、彼は少し目を細めて切なそうな表情を見せた。
「君はわたしが恋愛小説を読んでいることに気付いたのだろう? 男のくせにこんな物を読んでって、馬鹿にしないのかと聞いたんだよ」
「そんなことで馬鹿にするわけないじゃないですか」
なぜか自分でも驚くほど大きな声が出てしまった。目の前の男性も驚いた様で、元々大きな瞳をさらに大きく見開いている。
「読書に男も女も関係ないじゃないですか。恋愛小説だろうと推理小説だろうと、好きな本を読んで馬鹿にされるなんてあっていいわけありません」
全く失礼にもほどがあるわよ。私が読む本で他人を馬鹿にするような人間に見えたってこと?
腹が立ちながらも、さっきの怪しい行動を思い出す。
もしかしたらこの人は前に馬鹿にされた事があるのかしら? だから読んでいる本の表紙を慌てて隠したのだろうか?
「ありがとう」
男性が嬉しそうな顔をして微笑んだ。その笑顔があまりに素敵すぎて胸がトクンと音を立てる。
ああああ~!! かっこよすぎて目がやられてしまいそう。
金色の柔らかそうなストレートの短髪、よく晴れた空のように透き通った青い瞳、まるでおとぎ話に出てくる王子様みたいね。
「ねぇ君、名前を教えてもらってもいいかな?」
「アリスです。松本アリス」
アリスという名前は、私と同じく本が好きだったという母の愛読書からつけられた名前らしい。
らしいとしか言えないのは、私が母のことをよく知らないからだ。母は私が小さい頃に亡くなってしまい、記憶にも残っていない。
「アリスか。可愛い名前だね」
そう言われて思わず顔が熱くなる。こんなイケメンに呼び捨てにされたりしたら緊張しちゃうじゃない。
「それで……アリスはどうしてここにいるのかな?」
このイケメンは恋愛小説を読んでいるのを人に見られたくなくて、鍵をかけてこの書庫に閉じこもっていたらしい。そんな密室にいきなり私が現れたものだから、不思議でならないようだ。
「実は……」
私自身も正直よく分かっていないけれど、とりあえずできるだけ説明してみた。
「……というわけなんですよ」
私の説明を聞き終えたイケメンは、顎に手をあて、うーむとしばらく考え込む仕草を見せた。
「じゃあアリスは異世界からの客人なんだね」
前にそんな話を聞いたことがあるよっとイケメンはにっこりと微笑んで私を見た。
異世界からの客人……ってことはやっぱり私はあの本の中に吸い込まれてしまったのね。ああ、私ってば今本の世界にいるのよ!!
こんな状況なのにパニックにならずにすんだのは、そういった小説を数多く読んできたからだろう。そういうこともあるよなっと、すんなり受け入れてしまっている自分がいた。
「慣れない場所で不安だろうけど、大丈夫だよ」
イケメンの大きな手が私の手優しく包み込んだ。
「私が君を守るから」
真剣な眼差しでまっすぐに見つめられると息ができない。
えぇ? な、何なのこのシチュエーション?
密室に2人きりで、見たことのないほどのイケメンに見つめられるなんて……
「あ、ありがとうございます」
握られていた手をパッと離しながらそう答えた。このまま手を握られていたら、興奮しすぎて鼻血が出ちゃいそうだ。
きっと私、ものすごく赤い顔になっちゃってるわよね。ふぅっと小さく息を吐きながら熱くなっている頰に手を当てた。
「ではまず王宮の中を案内しようか」
そう言ってイケメンは立ちあがり私の横に立った。
「えっ? 王宮って?」
驚く私にイケメンは事も無げに答えた。
「あれ、言ってなかったかな? ここはアイゼンボルト王宮の書庫だよ」
「アイゼンボルト王宮……」
聞いたことのない名前だわ。そりゃ当たり前か。なんてったって私は本の世界にいるんだし……
「そう言えばまだわたしの自己紹介がすんでいなかったね」
そう言ってイケメンがキラキラパワー全開の笑顔を私に向けた。
「わたしはウィルバート アイゼンボルト、このアイゼンボルト王国の王太子です」
うわおっ。見た目王子様みたいとか思ってたけど、本当に王子様だったなんて。
初めて会う本物の王子様を前に返す言葉が思いつかない。そんな私の手をウィルバートが優しく持ち上げる。
「ようこそアイゼンボルト王国へ」
ウィルバートの形のよい唇が私の手の甲に優しく触れた。
はうっ。
ずきゅんと心臓が射抜かれたような痛さを感じて、思わず体が縮む。
私ってばこのまま死んじゃうんじゃない?
イケメンに耐性のない私はウィルバートのキラキラ攻撃にすっかりやられてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
フローライト
藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。
ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。
結婚するのか、それとも独身で過ごすのか?
「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」
そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。
写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。
「趣味はこうぶつ?」
釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった…
※他サイトにも掲載
王妃となったアンゼリカ
わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。
そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。
彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。
「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」
※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。
これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる