太陽と月の禁断

東 万里央(あずま まりお)

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第1部

20.白雪と薔薇(3)

 幸福な夢が熱の籠る暗闇へと変わる。

「……う」

――体がひどく熱い。

 あきらくんはこんなに熱かっただろうか。肌から汗が滲みその肌の上に別の肌が重なっている。胸の膨らみが誰かの胸板に押し潰され息が苦しい。

「……?」

 わたしはうっすらと目を開けた。視界に霞がかかっている。枕元のランプだけがぼんやりと黄に灯っていた。その灯りにすらりとした影が照らし出される。影はわたしに伸し掛かり、両の手首を掴み顔の横に押しつけていた。

「だ……れ?」

 体の中心に熱く固い何かが押し当てられる。

「……っ」

 わたしは反射的に身を竦ませ、どうにか逃れようと、暗闇の中で身を捩った。けれども腰から下を押さえ付けられ動けない。

「あ……」

 狭い肉を掻き分け熱い固まりがわたしの中に押し入ろうとする。けれども、何かが引っ掛かり固まりは途中で動きを止めた。どうやらやめてくれたようだ。けれどもほっと息を吐いた次の瞬間、隙を見計らったかのように、その固まりに体を貫かれてしまったのだ。

「……っ」

 切り裂くような痛みに声を失くす。更に腰を抱えられぐぐ、と奥に押し入られた。

「あ、あっ……」

 喉を仰け反らせただ喘ぐ。夢なのにどうしてこんなに痛いのだろうか。熱く固い何かがわたしの中に満ち満ちている。内臓を内側から押し上げられひどく苦しい。

「いや……だっ」

 わたしはぽろぽろと涙を流した。

「痛い、痛い、痛いよぉ……あきらくん……」

 わたしは前の前にある影の肩に縋り付いた。

「い、痛い……」
「お前……まだ」

 影の動きが驚いたように止まる。

「……瑠奈、力を抜け」

 これ以上ない優しい声がわたしの耳元で囁かれる。

「これは夢だ、瑠奈」

 ぐちゅりと更に深く抉られてしまう。

「あっ……」

 唇から吐息が零れる。体の中から血とは違う、ぬるりとした蜜が滾々と湧き出すのを感じた。

「誰の名前を呼んでもいい。そう、お前を抱いているのはお前が好きな男だ。今はそれでいい」

 わたしの、好きな人――。

――一樹君。

 わたしはその優しい笑顔を心に思い浮かべる。

「瑠奈、愛してる」

 広い胸に深く包み込まれ、わたしはほっと息を吐いた。

「ねえ、一樹君。もう、怖くない?」
「ああ、怖くない……」

 一樹君は腕に力を込めた。

「だから、眠れ」

 意識がまた暗闇に飲み込まれて行く。

 痛いけど、大丈夫。もう何にも怖いことはない……。
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