太陽と月の禁断

東 万里央(あずま まりお)

文字の大きさ
3 / 90
第1部

02.太陽と樹木(2)

「ねえ、陽、また背が伸びた?」

 陽はわたしを見下ろし魅惑的な微笑みを浮かべる。

「ああ。二cm伸びた。今一八三cm?」
「それ以上伸びないでよ。怖いじゃないの」
「そんなことを言われても不可抗力だ」

 悔しいけれども陽は皆がふり向くほどかっこいい。さらさらの黒髪と漆黒の双眸が印象的だ。イケメンと言うより美青年と言った方が正しいだろうか。産みの母に、ママに顔立ちがそっくりなのだ。ママだと儚げな美人に見える顔が、陽では影のある美形になっている。おまけに背もすらりと高く大人っぽい。一見二二、三歳に見えるのではないだろうか。

 一方、わたしは残念なことに弟には似ていない。身長もそんなに伸びず一五〇cmで止まってしまった。取り柄と言えば色素の薄さとこの栗色の長い髪くらいだろうか。

「陽はいいなぁ。背も高いし、かっこいいし、頭もいいもんね。わたしたちって本当に双子?って時々思うもの」
「バカ」

 陽はわたしの頭をぽんぽんと二度叩いた。最近陽はわたしをことさらチビ、かつ子ども扱いをする。姉としては少々複雑な心境だった。

「俺は男で瑠奈は女だ。違って当たり前だろ」

 陽から女、と言われると何だかくすぐったい。わたしは照れ隠しに乱れた頭を両手で整える。

「きっとママのお腹の中で陽にいいところみーんな取られちゃったんだわ。うーん、心の底から陽が男でよかった。陽が妹だったらおかしなコンプレックス持ちそう」

 かたや美少女の妹と、かたや一〇人並みの姉、悲惨な状況になりそうだ。

一樹いつき君だけは違うとは思うけど、彼氏が妹を好きになるとかありそうでしょ? ドロドロの展開になるじゃない」

 陽が目を見開きその場に立ち尽くした。

「一樹って誰だ? それに彼氏って何だ」
「あれっ? 陽に言ってなかった?」

 二組の両親には恋人ができたことをもう報告し、気の早い生家のママは「一樹君との婚約はいつ?」だなんて言い始めている。最近では「あなたの花嫁姿が見たい」とも零していた。

 実は本人もうすうす感づいていると思うけれども、ママはもう長くないと言われている。数年前かかった不治の病がママの体力を奪い、ただでさえ弱い体から命を徐々に奪っていった。今日もお見舞いを兼ねての訪問だったのだ。

「私の初めての彼氏! 同じ部活の先輩で、今は大学生やっているの。K大だから結構頭いいんだよ。陽ほどじゃないかもしれないけど」

 私はピースを作り陽の前で振った。

「わたしにもちゃんと恋人ができるんだからね? 陽が"お前なんかもらってくれる男はいないだろ"、なんて言っていたの覚えているんだから」
「……」

 陽は呆然と私を見つめている。

「陽、どうしたの?陽?」
感想 3

あなたにおすすめの小説

触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました

由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。 そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。 手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。 それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。 やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。 「お前に触れていいのは俺だけだ」 逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。 これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

皇帝の愛妾を痛めつけたら、相手は皇帝の姉でした

由香
恋愛
後宮で最も愛された妃・麗華。 ある日、皇帝に寵愛される“謎の女”を敵と誤解し、手を下してしまう。 だが―― その正体は、皇帝の姉だった。 「……遅かったな」 すべてを失った後で知る、取り返しのつかない真実。 愛も地位も壊れた先に残るのは、静かな後悔だけ。 これは、「愛されたかった女」が、すべてを壊すまでの物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき