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第1部
28.暗闇と微睡(1)
*無理やりの描写があります。苦手な方はお気を付け下さい。(五行下)
それからわたしは「薔薇の間」に閉じ込められた。扉には外にチェーンが取り付けられ、窓には強化テープが貼られ、ひとりでは開けられなくなった。連絡手段はすべて取り上げられ、服も寝間着以外には許されない。
ここにわたしを訪ねて来るのは陽と高野さんだけだ。陽のいない日中の朝食と昼食は高野さんが、夕食は陽が自ら持ってやってくる。一度ハンガーストライキを決行し、ギリギリまで痩せここから出してと叫ぶと、陽に流動食を口移しにでも食べさせられた。
夕食のあとには横抱きにされ浴室へと連れて行かれる。わたしの体は髪からつま先まで陽がすべて洗った。他の誰かに髪の一筋も触れさせたくないのだと言う。入浴のあとにはバスローブだけを着せられ、薔薇の間ですぐに剥ぎ取られベッドに組敷かれる。どれだけやめてと泣いても許してくれない。
*
六月の終わりも梅雨時の、珍しく晴れた夜のことだった。カレンダーはないけれども、きっとそれくらいにはなっている。拭い切れない湿り気が薔薇の間にも漂っていた。そして、その日もわたしは陽に抱かれていた。
カーテン越しに月明かりが差し込み、陽のうっすら汗に濡れた美貌を照らし出す。その動きに合わせてベッドが軋み、わたしの喘ぎ声がそこに重なった。
「ああ……」
わたしは喉を仰け反らせ熱い息を吐いた。長針、短針、秒針が一二の位置に重なり、すでにどれだけの時が過ぎたのだろうか。もう手首にロープは掛けられていない。小柄なわたしがどれだけ暴れたところで、呆気なく押さえつけられるしかないのだと、陽もようやく理解したらしかった。それでもわたしは一抹の慈悲を求め、震える手を伸ばし陽の二の腕を掴む。
「お、願い。もう、やめ、て……」
「……」
陽は答えの代わりにわたしの手首をシーツに縫い止め腰を激しく動かす。体がベッドの上で上下に揺さぶられ、くちゅくちゅと繋がる箇所から粘ついた音がした。体の内から感じるその響きと、陽の肉の生々しい感触に、わたしはたまらずまた涙を流す。金曜の夜はこうして眠る間もなく犯される。翌日には泥のように体が辛く苦しかった。わたしは泣きたい思いで陽に訴える。
「今日は……もう、眠、りたい」
「―― 駄目だ」
ぐ、と深く抉られ、そのまま強く押し付けられる。
「……っ!」
わたしは声にならない声を上げた。上げられた右手が宙を掴む。もう何度目になるかも分からないセックスで、陽はわたしの弱い箇所を探し当てていた。
「……」
陽はわたしが息もできない間に奥にまで腰を進め、小さく呻き己の欲をわたしの胎内に放つ。
「……あ」
わたしの目が大きく見開かれる。脳髄から背筋にまで電流が駆け抜け、視界が真っ白になるのと同時に、じわりと子宮に熱が染み込んでいくのを感じた。
「――瑠奈」
「い、や……」
――また、中に出されてしまった。
「ああ……」
ほの暗い快感と絶望が入り混じり心を染め上げて行く。陽は肩で大きく息を吐きわたしの胸に顔を埋めた。そこにもいくつもの赤い痕が散り、吸われた胸の先が濡れて光っている。わたしの体で陽に触れられていない部分はもうどこにもない。
陽は体を起こしわたしの頬を覆った。
「一樹いつきさんはとんだノロマだ。あれだけ長く傍に居て、瑠奈を抱きもしなかったのか」
「……」
わたしは何も言えずに顔を背ける。
「あの程度の事件で瑠奈を簡単に捨てもする。俺ならお前がどれだけ汚れても、お前にどれだけ裏切られても、お前がどれだけ壊れても、必ず瑠奈――お前を攫いに行く」
陽はぐいとわたしの顎を掴み、無理矢理に上向かせた。わたしの唇と舌を貪る。
「ん……ん」
陽のキスはいつも苦しい。奪うように、飲み込むように、唇を塞ぐ。
「あいつだけには絶対に渡さない。あいつに恋をしてからお前の心が、」
陽はそこで言葉を切った。
「……瑠奈の心が分からなくなっていった」
昔はお前のどんな小さな心の囁きも分かったのに――そう苦しげに呟き、陽はわたしの体を強く、強く胸に抱きしめた。
それからわたしは「薔薇の間」に閉じ込められた。扉には外にチェーンが取り付けられ、窓には強化テープが貼られ、ひとりでは開けられなくなった。連絡手段はすべて取り上げられ、服も寝間着以外には許されない。
ここにわたしを訪ねて来るのは陽と高野さんだけだ。陽のいない日中の朝食と昼食は高野さんが、夕食は陽が自ら持ってやってくる。一度ハンガーストライキを決行し、ギリギリまで痩せここから出してと叫ぶと、陽に流動食を口移しにでも食べさせられた。
夕食のあとには横抱きにされ浴室へと連れて行かれる。わたしの体は髪からつま先まで陽がすべて洗った。他の誰かに髪の一筋も触れさせたくないのだと言う。入浴のあとにはバスローブだけを着せられ、薔薇の間ですぐに剥ぎ取られベッドに組敷かれる。どれだけやめてと泣いても許してくれない。
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六月の終わりも梅雨時の、珍しく晴れた夜のことだった。カレンダーはないけれども、きっとそれくらいにはなっている。拭い切れない湿り気が薔薇の間にも漂っていた。そして、その日もわたしは陽に抱かれていた。
カーテン越しに月明かりが差し込み、陽のうっすら汗に濡れた美貌を照らし出す。その動きに合わせてベッドが軋み、わたしの喘ぎ声がそこに重なった。
「ああ……」
わたしは喉を仰け反らせ熱い息を吐いた。長針、短針、秒針が一二の位置に重なり、すでにどれだけの時が過ぎたのだろうか。もう手首にロープは掛けられていない。小柄なわたしがどれだけ暴れたところで、呆気なく押さえつけられるしかないのだと、陽もようやく理解したらしかった。それでもわたしは一抹の慈悲を求め、震える手を伸ばし陽の二の腕を掴む。
「お、願い。もう、やめ、て……」
「……」
陽は答えの代わりにわたしの手首をシーツに縫い止め腰を激しく動かす。体がベッドの上で上下に揺さぶられ、くちゅくちゅと繋がる箇所から粘ついた音がした。体の内から感じるその響きと、陽の肉の生々しい感触に、わたしはたまらずまた涙を流す。金曜の夜はこうして眠る間もなく犯される。翌日には泥のように体が辛く苦しかった。わたしは泣きたい思いで陽に訴える。
「今日は……もう、眠、りたい」
「―― 駄目だ」
ぐ、と深く抉られ、そのまま強く押し付けられる。
「……っ!」
わたしは声にならない声を上げた。上げられた右手が宙を掴む。もう何度目になるかも分からないセックスで、陽はわたしの弱い箇所を探し当てていた。
「……」
陽はわたしが息もできない間に奥にまで腰を進め、小さく呻き己の欲をわたしの胎内に放つ。
「……あ」
わたしの目が大きく見開かれる。脳髄から背筋にまで電流が駆け抜け、視界が真っ白になるのと同時に、じわりと子宮に熱が染み込んでいくのを感じた。
「――瑠奈」
「い、や……」
――また、中に出されてしまった。
「ああ……」
ほの暗い快感と絶望が入り混じり心を染め上げて行く。陽は肩で大きく息を吐きわたしの胸に顔を埋めた。そこにもいくつもの赤い痕が散り、吸われた胸の先が濡れて光っている。わたしの体で陽に触れられていない部分はもうどこにもない。
陽は体を起こしわたしの頬を覆った。
「一樹いつきさんはとんだノロマだ。あれだけ長く傍に居て、瑠奈を抱きもしなかったのか」
「……」
わたしは何も言えずに顔を背ける。
「あの程度の事件で瑠奈を簡単に捨てもする。俺ならお前がどれだけ汚れても、お前にどれだけ裏切られても、お前がどれだけ壊れても、必ず瑠奈――お前を攫いに行く」
陽はぐいとわたしの顎を掴み、無理矢理に上向かせた。わたしの唇と舌を貪る。
「ん……ん」
陽のキスはいつも苦しい。奪うように、飲み込むように、唇を塞ぐ。
「あいつだけには絶対に渡さない。あいつに恋をしてからお前の心が、」
陽はそこで言葉を切った。
「……瑠奈の心が分からなくなっていった」
昔はお前のどんな小さな心の囁きも分かったのに――そう苦しげに呟き、陽はわたしの体を強く、強く胸に抱きしめた。
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