太陽と月の禁断

東 万里央(あずま まりお)

文字の大きさ
29 / 90
第1部

28.暗闇と微睡(1)

*無理やりの描写があります。苦手な方はお気を付け下さい。(五行下)





 それからわたしは「薔薇の間」に閉じ込められた。扉には外にチェーンが取り付けられ、窓には強化テープが貼られ、ひとりでは開けられなくなった。連絡手段はすべて取り上げられ、服も寝間着以外には許されない。

 ここにわたしを訪ねて来るのは陽と高野さんだけだ。陽のいない日中の朝食と昼食は高野さんが、夕食は陽が自ら持ってやってくる。一度ハンガーストライキを決行し、ギリギリまで痩せここから出してと叫ぶと、陽に流動食を口移しにでも食べさせられた。

 夕食のあとには横抱きにされ浴室へと連れて行かれる。わたしの体は髪からつま先まで陽がすべて洗った。他の誰かに髪の一筋も触れさせたくないのだと言う。入浴のあとにはバスローブだけを着せられ、薔薇の間ですぐに剥ぎ取られベッドに組敷かれる。どれだけやめてと泣いても許してくれない。



*



 六月の終わりも梅雨時の、珍しく晴れた夜のことだった。カレンダーはないけれども、きっとそれくらいにはなっている。拭い切れない湿り気が薔薇の間にも漂っていた。そして、その日もわたしは陽に抱かれていた。

 カーテン越しに月明かりが差し込み、陽のうっすら汗に濡れた美貌を照らし出す。その動きに合わせてベッドが軋み、わたしの喘ぎ声がそこに重なった。

「ああ……」

 わたしは喉を仰け反らせ熱い息を吐いた。長針、短針、秒針が一二の位置に重なり、すでにどれだけの時が過ぎたのだろうか。もう手首にロープは掛けられていない。小柄なわたしがどれだけ暴れたところで、呆気なく押さえつけられるしかないのだと、陽もようやく理解したらしかった。それでもわたしは一抹の慈悲を求め、震える手を伸ばし陽の二の腕を掴む。

「お、願い。もう、やめ、て……」
「……」

 陽は答えの代わりにわたしの手首をシーツに縫い止め腰を激しく動かす。体がベッドの上で上下に揺さぶられ、くちゅくちゅと繋がる箇所から粘ついた音がした。体の内から感じるその響きと、陽の肉の生々しい感触に、わたしはたまらずまた涙を流す。金曜の夜はこうして眠る間もなく犯される。翌日には泥のように体が辛く苦しかった。わたしは泣きたい思いで陽に訴える。

「今日は……もう、眠、りたい」
「―― 駄目だ」

 ぐ、と深く抉られ、そのまま強く押し付けられる。

「……っ!」

 わたしは声にならない声を上げた。上げられた右手が宙を掴む。もう何度目になるかも分からないセックスで、陽はわたしの弱い箇所を探し当てていた。

「……」

 陽はわたしが息もできない間に奥にまで腰を進め、小さく呻き己の欲をわたしの胎内に放つ。

「……あ」

 わたしの目が大きく見開かれる。脳髄から背筋にまで電流が駆け抜け、視界が真っ白になるのと同時に、じわりと子宮に熱が染み込んでいくのを感じた。

「――瑠奈」
「い、や……」

――また、中に出されてしまった。

「ああ……」

 ほの暗い快感と絶望が入り混じり心を染め上げて行く。陽は肩で大きく息を吐きわたしの胸に顔を埋めた。そこにもいくつもの赤い痕が散り、吸われた胸の先が濡れて光っている。わたしの体で陽に触れられていない部分はもうどこにもない。

 陽は体を起こしわたしの頬を覆った。

「一樹いつきさんはとんだノロマだ。あれだけ長く傍に居て、瑠奈を抱きもしなかったのか」
「……」

 わたしは何も言えずに顔を背ける。

「あの程度の事件で瑠奈を簡単に捨てもする。俺ならお前がどれだけ汚れても、お前にどれだけ裏切られても、お前がどれだけ壊れても、必ず瑠奈――お前を攫いに行く」

 陽はぐいとわたしの顎を掴み、無理矢理に上向かせた。わたしの唇と舌を貪る。

「ん……ん」

 陽のキスはいつも苦しい。奪うように、飲み込むように、唇を塞ぐ。

「あいつだけには絶対に渡さない。あいつに恋をしてからお前の心が、」

 陽はそこで言葉を切った。

「……瑠奈の心が分からなくなっていった」

 昔はお前のどんな小さな心の囁きも分かったのに――そう苦しげに呟き、陽はわたしの体を強く、強く胸に抱きしめた。
感想 3

あなたにおすすめの小説

触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました

由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。 そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。 手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。 それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。 やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。 「お前に触れていいのは俺だけだ」 逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。 これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。

皇帝の愛妾を痛めつけたら、相手は皇帝の姉でした

由香
恋愛
後宮で最も愛された妃・麗華。 ある日、皇帝に寵愛される“謎の女”を敵と誤解し、手を下してしまう。 だが―― その正体は、皇帝の姉だった。 「……遅かったな」 すべてを失った後で知る、取り返しのつかない真実。 愛も地位も壊れた先に残るのは、静かな後悔だけ。 これは、「愛されたかった女」が、すべてを壊すまでの物語。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき