太陽と月の禁断

東 万里央(あずま まりお)

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第2部

15.黄昏と枯葉(1)

 それから僕は土曜日ごとに神戸に帰郷し、瑠奈と、時には松本さんも交え大地君を見舞いに通うようになった。

 大地君は人見知りをしない性格で、あっと言う間に僕にも懐き、病室を訪ねるごとにぱっと顔を輝かせ、「おにいちゃん」と手を差し伸べてくるようになった。特に体調のよい時僕に高々と抱き上げられ、病室の窓の外を見るのが気に入ったらしい。ベッドから見上げる景色と全く違うのだと言う。

「――おにいちゃん、またそとをみたい」

 その日も僕は大地君にせがまれたので、威勢良く「よし!」と答えるが早いか、小さな身体を一気にベッドから抱き上げた。大地君は甘え上手なところも昔の瑠奈を連想させる。

「そらっ!」
「わっ!あははっ!」

 大地君が笑いながら僕の首に手を回した。瑠奈も「仕方ないなぁ」と笑いながら「ありがとう」と礼を述べる。それから僕に頼まれた缶コーヒーを買いに病室をいったん出ていった。大地君は中庭を興味津々で見下ろしている。

「おにいちゃん、みてみて。あのきにとりのすがあるよ。からっぽだけど、またくるかなぁ?」
「ああ、あれは鳩の巣か? 確かにここは絶好の観察ポイントだ。秋にまた子育てに来るかもな」
「おにいちゃん、いっしょにみようよ。ひな、いちどでいいからみてみたい」

 そこに、大地君の担当である医師がやって来た。加賀さんと言う先生であり、まだ 三十代前半なのだそうだ。

「失礼しますね」

 加賀先生はパンパンと手を二度叩くと、ベッドに近付き素早く敷布を整えた。残念ながら一時間の面会時間が終わったのだ。

「はいはーい。大地君、お休みしようね」
「えー……はやいよー……」

 大地君は救いを求めるように僕を見上げた。僕は苦笑し大地君の栗色の髪を撫でる。

「また来週来るから。今日はもう休もう」
「はぁい……」

 大地君はしぶしぶと、それでも素直に頷いた。僕は大地君をベッドに横たえ、胸までタオルケットをかける。

「荘田さんは?」

 僕は先生を振り返り事情を説明した。

「買い物に行ったのでしばらく時間がかかるでしょう。ところで少しだけお話をしたいのですがいいですか」

 実は瑠奈に頼んだコーヒーは病院の自販機にはない。ただ義理堅く律儀な彼女のことだから、きっと外のコンビニにまで探しに行くことだろう。それを踏まえてあえてその銘柄を頼んだのだ。

 先生は戸惑いながらもはいと頷く。

「ええ、それは構いませんが……」
「では、さっそく」

 僕は先生に続き病室を出て行った。

「大地君、またな」

 扉を閉める前にベッドを振り返ると、大地君は大きく頷き「約束だよ」と笑った。

「ぼく、いいこにして、まってる」
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