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番外掌編
S2.恋と苦味
※幕間の「星空と初恋」、本編の「白雪と薔薇」を読んでいただければより分かりやすいと思います。瑠奈が高校一年生の二月の話です。
恋はチョコレートと同じだと思う。甘いけれども、どこかほろ苦い。
バレンタインから一日過ぎた、二月十五日の夜のことだった。
わたしは二階の自分の部屋のベッドに寝転がり、「あるもの」とにらめっこをしていた。今日は土曜日だけれども、お父さんは休日出勤、お母さんはパートに出ていて、家にはわたしひとりしかいない。
「あーあ……」
わたしはシーツに頬杖をつき、また深く、深く溜息を吐いた。
「結局渡せなかったなぁ」
目の前には薔薇色とピンク色のふわふわした包装紙を重ねて、金色のリボンでラッピングをした箱が置いてある。中には手作りの星形チョコクッキーを詰め込んでいた。これまで作ったお菓子の中で、一番気をつかって頑張って仕上げた。
本当は今日の部活のあとで、四十川部長に渡そうと思っていた。けれども、結局何もできずにこうして溜息を吐いている。
わたしは昨日の帰り道での、部長との会話を思い出していた。
部長は現在K大法学部の受験が終わり、本人曰く「合格発表までブラブラ過ごしている」のだそうだ。今日も部室に行くからとメッセージで予告があって、いつものようにわたし達部員と天文談義をし、二時間ほどで帰ってしまった。試験はどうだったのかと尋ねられると、「九十九パーセント合格だから」――と余裕の表情だった。
その間何度も、何度もチョコクッキーを渡そうと思った。でも、なかなかタイミングが掴めなかった。だから、部長が腕時計に目を落として、「そろそろ帰るから」と言ったとき、「一緒に帰りますっ!」と思わず席を立ったのだ。
受験勉強のストレスから解放されたからなのか、部長は帰り道でもよくおしゃべりをしてくれた。
『へえ、荘田さん、副部長に立候補するんだ?』
『はい。松本先輩のお手伝いがしたいなって思って』
『そうか。荘田さんも二年生になるんだよな。頼もしいよ』
――すごく嬉しかった。
去年の夏休みの合宿でやっと打ち解けるまで、部長はいつもわたしには無表情だったから。何か悪いことをしたのかと戸惑ったけど、思い当ることがまったくなくて、どうすればいいのかが分からなかった。大きくて、怖くて、苦手な人だとしか思えなかった。
なのに、いつから好きになったんだろう?
そう、きっとあの合宿で一緒に星を見た日からだ。ご両親の事故死を語る部長は、とても悲しそうで、寂しそうに見えた。その姿が初めて会ったあの日の四歳の陽に重なったのだ。あの時の陽も悲しそうで、寂しそうだった。
ふと、その薄茶色の髪を撫でてあげたいな、と思った。次に、その髪がテディベアの毛の色によく似ていると気が付いた。陽が去年の誕生日にプレゼントしてくれた大事なものだ。
――それがきっかけだった。
楽しいひと時はあっと言う間に過ぎ、最寄りのバス停に着いてしまった。部長はここからバスに乗り、おばあさんと暮らすおうちに戻るはずだ。
『じゃ、ここで』
『あ、あの』
わたしは思い切って部長を見上げた。薄茶の目にわたしの顔が写っている。その瞬間に突然我に返り、恥ずかしくなってしまった。
部長は背が高いし、かっこいいし、すごくモテると聞いている。そんな人がわたしなんて相手にするだろうか。今日だって靴箱にたくさんチョコが詰め込まれていた。きっと送り主には可愛い子も、きれいな子も、たくさんいるのだろう。それに部長は自分目当てに入部する女の子に、いい加減うんざりしていると聞いた。
――告白したらきっと軽蔑されて嫌われる。
その思いは心と喉を凍り付かせた。わたしは必死に笑顔を浮かべる。
『合格しても遊びに来てくださいね』
これが精いっぱいだった。
『みんなで待っていますから……』
カバンの中のチョコクッキーが虚しかった。
――そんなわけでわたしは結局この包みを渡せなかったのだ。
「意気地なし、意気地なし、意気地なしっ!!」
わたしは枕を抱き締め顔を埋めた。じんわりと涙が滲み出てくる。恋って、甘くて、楽しくて、キラキラしているだけじゃないんだ。こんな風に打ち明けられずに苦しくて、心が辛いこともあるんだ。
「もっと可愛かったらなぁ……」
知らず声に出して呟く。わたしは顔を上げると、枕元のテディベアを引き寄せた。
「陽みたいにきれいだったらな。そうしたらきっと――」
「――俺がどうしたって?」
突然低く艶やかな声とともに、部屋のドアが静かに開けられた。
「わ、わわっ!!」
心臓が止まるかと思った。陽はコートを脱ぎ、顔をかすかにしかめる。
「鍵が開いていたぞ。女なんだからひとりになるなら気を付けろ。俺以外の男が来たらどうする」
黒い瞳がベッドに真っ直ぐに向けられ、テディベアを抱き締めるわたしを捉える。とたんに、陽はぷっと吹き出しくすくすと笑った。怜悧に見える美貌の印象がぱっと変わる。
「お前……そのクマよっぽど気にいったんだな」
「あ……え?」
わたしは慌ててテディベアを元の位置に戻した。
「な、何しに来たのっ!?」
思わずベッドの上に正座をしてしまう。
「何しに来たのって……お前、今日七時から勉強みてくれって言っていただろ?」
「あっ」
わたしはその場でぴょんと飛び跳ねてしまった。
「そ、そうだった。ご、ごめん……」
部長のことで頭がいっぱいになっていたのだ。申し訳なさで顔が真っ赤になってしまう。
「ちょっと待ってね。今すぐ問題集出すね」
わたしはベッドから起きシーツを整えた。
ところがその間に陽は包みを見つけたらしい。切れ長の目がかすかに歪んだ。
「瑠奈、それって……」
「あっ」
わたしは慌てて包みを胸に抱いた。直後に「そうだ!」と頭に豆電球が点る。わたしはベッドをぽんぽんと叩き、陽に「ここに座って」と促した。陽は言われるままに腰かけ、「いったい何だ?」と首を傾げる。わたしは隣に腰かけ「どうぞ」とクッキーを手渡した。切れ長の瞳が大きく見開か
れる。
「これ、今日のお礼。先払いだよ」
事情がばれませんようにと祈る。陽は妙にカンが鋭く、すぐにわたしの心を見破るからだ。
「ぎ、義理チョコだよ。陽に取っておいたの」
わたしはつい嘘と言い訳をしてしまう。
「自分ではもう余った分をたくさん食べちゃったし、友達にも部活の人にももうあげちゃったから」
「……」
陽はまじまじと包みを眺めていたけれども、やがて「……そうか」と呟きわたしの頭をぐりぐりと撫でた。
「まあ、仕方ない。失恋のひとつやふたつ誰だってするさ」
更に悪いほうに解釈されてしまった。
「……っ!?ち、違うよっ!!」
わたしは必死に陽に訴える。陽はどこか嬉しそうに笑い、包みのリボンを解いた。
「ああ、分かった、分かった。落ち込むんじゃない。後で慰めてやるよ。取りあえずこれ食って
からな」
「だから、違うよ!!」
わたしは否定しながらもだんだん悲しくなってしまう。
わたしは陽から見てもすぐにふられる女の子に見えるのだろうか。やっぱり告白しなくて正解だったのかもしれない。
「あ、陽には分からないよ」
わたしは頬を膨らませぷいと横を向いた。
「陽はかっこいいし、頭もいいし、何でもできるもん」
ラッピングをきれいに解き、箱を空けた陽の手がぴたりと止まる。
「どんな女の子だって陽を好きになるでしょ? 」
「……」
黒い瞳に影が落ちた。
「――分かるよ」
陽はわたしを見ないまま語る。
「俺にも好きな子がいる。きっと叶わない恋だと思う」
「えっ……」
わたしは目を丸くして陽の横顔に目を向けた。陽に好きな人がいるだなんて初めて聞いた。低く艶やかな声にどこか苦しげな響きが混じる。
「好きで、好きで、苦しくて、眠れない夜を過ごしたことが何度もある。いっそ何もかも失ってもいいから、浚って閉じ込めてしまいたいと思ったこともある。けど」
陽は言葉を切りわたしをじっと見つめた。黒い瞳に恋の光が瞬いている。
「……きっと一生打ち明けられない」
わたしはしばらく息を呑んでいたけれども、数分後にようやく我に返り陽に謝った。
「ご、ごめん……」
陽がそんな苦しい恋をしているだなんて思わなかった。告白すらできないなんていったい誰が好きなんだろう?
わたしはせめてもの励ましにと陽の肩をぽんぽんと叩いた。
「そのクッキー、ぜんぶ食べていいから」
陽の好きな人はどんな人なのだろうか。きっときれいで、頭がよくて、素敵な人に違いない。
わたしはしばらく考えはっとそうだと思い至る。
――きっともう結婚している人だ。さすがに人の奥さんはマズいよね?
わたしは陽の苦しさ、辛さに胸が痛んだ
陽の秘めた打ち明けられない恋――でも、わたしが告白できない理由なんて簡単だ。ただ、自信と勇気がないだけだ。
わたしは「よし」と顔を上げた。当たって砕けようと決意する。
卒業式にはクッキーを作り直して、今度こそ部長に言おう。「あなたを、ずっと好きでした」って――。
「陽」
わたしは陽の顔を覗き込んだ。
「陽の恋がいつか叶うといいね」
心からそう思う。
陽はクッキーを1枚手に取り、わたしから目を逸らした。
「ああ……そうだな。そんな日が来るのなら」
甘いから苦い、苦いから甘い。
――そう、きっと恋とはそんなものだ。
恋はチョコレートと同じだと思う。甘いけれども、どこかほろ苦い。
バレンタインから一日過ぎた、二月十五日の夜のことだった。
わたしは二階の自分の部屋のベッドに寝転がり、「あるもの」とにらめっこをしていた。今日は土曜日だけれども、お父さんは休日出勤、お母さんはパートに出ていて、家にはわたしひとりしかいない。
「あーあ……」
わたしはシーツに頬杖をつき、また深く、深く溜息を吐いた。
「結局渡せなかったなぁ」
目の前には薔薇色とピンク色のふわふわした包装紙を重ねて、金色のリボンでラッピングをした箱が置いてある。中には手作りの星形チョコクッキーを詰め込んでいた。これまで作ったお菓子の中で、一番気をつかって頑張って仕上げた。
本当は今日の部活のあとで、四十川部長に渡そうと思っていた。けれども、結局何もできずにこうして溜息を吐いている。
わたしは昨日の帰り道での、部長との会話を思い出していた。
部長は現在K大法学部の受験が終わり、本人曰く「合格発表までブラブラ過ごしている」のだそうだ。今日も部室に行くからとメッセージで予告があって、いつものようにわたし達部員と天文談義をし、二時間ほどで帰ってしまった。試験はどうだったのかと尋ねられると、「九十九パーセント合格だから」――と余裕の表情だった。
その間何度も、何度もチョコクッキーを渡そうと思った。でも、なかなかタイミングが掴めなかった。だから、部長が腕時計に目を落として、「そろそろ帰るから」と言ったとき、「一緒に帰りますっ!」と思わず席を立ったのだ。
受験勉強のストレスから解放されたからなのか、部長は帰り道でもよくおしゃべりをしてくれた。
『へえ、荘田さん、副部長に立候補するんだ?』
『はい。松本先輩のお手伝いがしたいなって思って』
『そうか。荘田さんも二年生になるんだよな。頼もしいよ』
――すごく嬉しかった。
去年の夏休みの合宿でやっと打ち解けるまで、部長はいつもわたしには無表情だったから。何か悪いことをしたのかと戸惑ったけど、思い当ることがまったくなくて、どうすればいいのかが分からなかった。大きくて、怖くて、苦手な人だとしか思えなかった。
なのに、いつから好きになったんだろう?
そう、きっとあの合宿で一緒に星を見た日からだ。ご両親の事故死を語る部長は、とても悲しそうで、寂しそうに見えた。その姿が初めて会ったあの日の四歳の陽に重なったのだ。あの時の陽も悲しそうで、寂しそうだった。
ふと、その薄茶色の髪を撫でてあげたいな、と思った。次に、その髪がテディベアの毛の色によく似ていると気が付いた。陽が去年の誕生日にプレゼントしてくれた大事なものだ。
――それがきっかけだった。
楽しいひと時はあっと言う間に過ぎ、最寄りのバス停に着いてしまった。部長はここからバスに乗り、おばあさんと暮らすおうちに戻るはずだ。
『じゃ、ここで』
『あ、あの』
わたしは思い切って部長を見上げた。薄茶の目にわたしの顔が写っている。その瞬間に突然我に返り、恥ずかしくなってしまった。
部長は背が高いし、かっこいいし、すごくモテると聞いている。そんな人がわたしなんて相手にするだろうか。今日だって靴箱にたくさんチョコが詰め込まれていた。きっと送り主には可愛い子も、きれいな子も、たくさんいるのだろう。それに部長は自分目当てに入部する女の子に、いい加減うんざりしていると聞いた。
――告白したらきっと軽蔑されて嫌われる。
その思いは心と喉を凍り付かせた。わたしは必死に笑顔を浮かべる。
『合格しても遊びに来てくださいね』
これが精いっぱいだった。
『みんなで待っていますから……』
カバンの中のチョコクッキーが虚しかった。
――そんなわけでわたしは結局この包みを渡せなかったのだ。
「意気地なし、意気地なし、意気地なしっ!!」
わたしは枕を抱き締め顔を埋めた。じんわりと涙が滲み出てくる。恋って、甘くて、楽しくて、キラキラしているだけじゃないんだ。こんな風に打ち明けられずに苦しくて、心が辛いこともあるんだ。
「もっと可愛かったらなぁ……」
知らず声に出して呟く。わたしは顔を上げると、枕元のテディベアを引き寄せた。
「陽みたいにきれいだったらな。そうしたらきっと――」
「――俺がどうしたって?」
突然低く艶やかな声とともに、部屋のドアが静かに開けられた。
「わ、わわっ!!」
心臓が止まるかと思った。陽はコートを脱ぎ、顔をかすかにしかめる。
「鍵が開いていたぞ。女なんだからひとりになるなら気を付けろ。俺以外の男が来たらどうする」
黒い瞳がベッドに真っ直ぐに向けられ、テディベアを抱き締めるわたしを捉える。とたんに、陽はぷっと吹き出しくすくすと笑った。怜悧に見える美貌の印象がぱっと変わる。
「お前……そのクマよっぽど気にいったんだな」
「あ……え?」
わたしは慌ててテディベアを元の位置に戻した。
「な、何しに来たのっ!?」
思わずベッドの上に正座をしてしまう。
「何しに来たのって……お前、今日七時から勉強みてくれって言っていただろ?」
「あっ」
わたしはその場でぴょんと飛び跳ねてしまった。
「そ、そうだった。ご、ごめん……」
部長のことで頭がいっぱいになっていたのだ。申し訳なさで顔が真っ赤になってしまう。
「ちょっと待ってね。今すぐ問題集出すね」
わたしはベッドから起きシーツを整えた。
ところがその間に陽は包みを見つけたらしい。切れ長の目がかすかに歪んだ。
「瑠奈、それって……」
「あっ」
わたしは慌てて包みを胸に抱いた。直後に「そうだ!」と頭に豆電球が点る。わたしはベッドをぽんぽんと叩き、陽に「ここに座って」と促した。陽は言われるままに腰かけ、「いったい何だ?」と首を傾げる。わたしは隣に腰かけ「どうぞ」とクッキーを手渡した。切れ長の瞳が大きく見開か
れる。
「これ、今日のお礼。先払いだよ」
事情がばれませんようにと祈る。陽は妙にカンが鋭く、すぐにわたしの心を見破るからだ。
「ぎ、義理チョコだよ。陽に取っておいたの」
わたしはつい嘘と言い訳をしてしまう。
「自分ではもう余った分をたくさん食べちゃったし、友達にも部活の人にももうあげちゃったから」
「……」
陽はまじまじと包みを眺めていたけれども、やがて「……そうか」と呟きわたしの頭をぐりぐりと撫でた。
「まあ、仕方ない。失恋のひとつやふたつ誰だってするさ」
更に悪いほうに解釈されてしまった。
「……っ!?ち、違うよっ!!」
わたしは必死に陽に訴える。陽はどこか嬉しそうに笑い、包みのリボンを解いた。
「ああ、分かった、分かった。落ち込むんじゃない。後で慰めてやるよ。取りあえずこれ食って
からな」
「だから、違うよ!!」
わたしは否定しながらもだんだん悲しくなってしまう。
わたしは陽から見てもすぐにふられる女の子に見えるのだろうか。やっぱり告白しなくて正解だったのかもしれない。
「あ、陽には分からないよ」
わたしは頬を膨らませぷいと横を向いた。
「陽はかっこいいし、頭もいいし、何でもできるもん」
ラッピングをきれいに解き、箱を空けた陽の手がぴたりと止まる。
「どんな女の子だって陽を好きになるでしょ? 」
「……」
黒い瞳に影が落ちた。
「――分かるよ」
陽はわたしを見ないまま語る。
「俺にも好きな子がいる。きっと叶わない恋だと思う」
「えっ……」
わたしは目を丸くして陽の横顔に目を向けた。陽に好きな人がいるだなんて初めて聞いた。低く艶やかな声にどこか苦しげな響きが混じる。
「好きで、好きで、苦しくて、眠れない夜を過ごしたことが何度もある。いっそ何もかも失ってもいいから、浚って閉じ込めてしまいたいと思ったこともある。けど」
陽は言葉を切りわたしをじっと見つめた。黒い瞳に恋の光が瞬いている。
「……きっと一生打ち明けられない」
わたしはしばらく息を呑んでいたけれども、数分後にようやく我に返り陽に謝った。
「ご、ごめん……」
陽がそんな苦しい恋をしているだなんて思わなかった。告白すらできないなんていったい誰が好きなんだろう?
わたしはせめてもの励ましにと陽の肩をぽんぽんと叩いた。
「そのクッキー、ぜんぶ食べていいから」
陽の好きな人はどんな人なのだろうか。きっときれいで、頭がよくて、素敵な人に違いない。
わたしはしばらく考えはっとそうだと思い至る。
――きっともう結婚している人だ。さすがに人の奥さんはマズいよね?
わたしは陽の苦しさ、辛さに胸が痛んだ
陽の秘めた打ち明けられない恋――でも、わたしが告白できない理由なんて簡単だ。ただ、自信と勇気がないだけだ。
わたしは「よし」と顔を上げた。当たって砕けようと決意する。
卒業式にはクッキーを作り直して、今度こそ部長に言おう。「あなたを、ずっと好きでした」って――。
「陽」
わたしは陽の顔を覗き込んだ。
「陽の恋がいつか叶うといいね」
心からそう思う。
陽はクッキーを1枚手に取り、わたしから目を逸らした。
「ああ……そうだな。そんな日が来るのなら」
甘いから苦い、苦いから甘い。
――そう、きっと恋とはそんなものだ。
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