デルモニア紀行

富浦伝十郎

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プロローグ

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 え、何? PCペルソナコピーに人権はあるか、って??
・・・無いだろ。  無いって。
逆に訊くけどお前はあると思ってる訳 ?  ・・おう。 ・・どうして? 
どうして”ある”、て思う訳 ?


 うん。 そう。 うん。 それはそうかもな。
俺だってあるよ。 爺様のPCとさ。  墓参りの時な。
「ちゃんと勉強してるか?」 っていっつもそればっかりw
いや、よく出来てると思うよ。 生チャと区別付かないレベルじゃないの?
ついペコペコ頭下げちゃうもん。  全く勘弁してくれって話。

 ん? だから? だから何よ。  …うん。 聞くよ。 話してみ?

・・・・・・

 お前の言いたいことは分からないでもない。 
根本にあるのはヒューマニズムだよな。  そういうのは嫌いじゃない。
けどな、PCを ”解放されるべき虐げられた存在” みたいに考えてないか?
19世紀アメリカの黒人奴隷とか。
な? そうなんだろ。

 ・・・よし、じゃあ今度は俺の話を聞け。
ほれ、これを見ろ。 これは何だ?  そう、これだよ。
うん。 お前の写真だよ。 今撮った。
お前はコレに人権があると思うか? 思わないよな。
じゃあこっちはどうだ? お前の動画。 先週のアレw  いや、消してないよ?
コレに人権があるか?
そうだよ。 写真や動画には人権は無い。
いいか、PCてのは写真や動画の延長にあるものだろうが。

 肖像画や彫像が残ってるから俺たちはバッハやゲーテの顔を知ってる。
フィルムが残ってるからチャプリンやプレスリーのパフォを観る事もできる。
人々はそうやって自らの存在を未来へ(そして永遠に)残そうとして来た訳だ。
似顔絵や写真で外観を。 レコードやテープで声(歌や語り)を。
そして動画で人生の一時を切り取ってきた。 …まあ、結婚式で流れるアレだな。
そういうデータをAIに食わせて ”如何に行動するかもし今ここにいれば” を見せるのがPCだ。
データなんだよ。 人間じゃないんだ。
お前はFPSで敵を狙撃する時、RPGでモンスターを切り倒す時心が痛むのか?
データから生成された存在、という意味では奴らもPCと同じなんだが。
「”殺す”ゲームはやめましょう」 て運動でも起こすか ?
 ・・・
まあ、人間にはそういう側面があるよな。 
「猫や犬を虐待するな」 と云う一方で ステーキやトンカツや空揚げを貪り食う,
みたいな。

 俺だってPC技術には途轍もない可能性が秘められてると思ってるよ。
大学だってそっち方面の学部を選んだ訳だし。
そうそう、あのFQがさ、今度ADサービスを始めるんだってよ !
俺は速攻で申し込んだね。 ( 一番安いヤツだけど )
だから俺のPCもその内できるかもしれないぜ ♪


・・・てか、ADだから ”俺がPCになる” のか ?



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