デルモニア紀行

富浦伝十郎

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ゲルブ平原

レベルUP

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 レベルといえば狼を一匹はやっつけた筈だから少しは上がったかな ?
それに投石スキルの方もどうなってるか気になる。
確かめてみよう。


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  【 種族 】  ゴブリン
  【レベル】    7
  【ジョブ】    -
  【スキル】  投石[6**] 対獣格闘[1]
  【 HP 】   240/240
  【 MP 】    23/23
  【 装備 】    -
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 ・・え
Lv7?
そんなに上がるもんか ?
あの三匹を全部倒せたのだとしてもちょっと上がり過ぎじゃないの。
( 三匹目は石で殴れなかったので左手の指を右目に突っ込んでやったんだ )
HPとMPの上りも高い。  どんなアルゴリズムなんだろう。

 ・・やっぱりゴブリンはアップが早いのか?
格上を倒すと同じレベルまで上がる、とかもありそうだな。
( Lv10くらいまではソロで狼に囲まれるとウザかったものな )
まあゴブリンなんてものは最初のエンカウントで殆ど討伐されてしまうものだから こうでもしないと上がらない、ってのはあるんだろうけど。
ゴブリンとなってしまった今となってはありがたいことですわ。


 投石スキルは6に上がって * が一つ増えている。
これが遠距離での照準補正であるのはおそらく間違いない。

 そして "対獣格闘" 。
新しいスキルが追加されている。 これは狼と闘ったから付いたんだな。
剣士だった頃も狼とは随分闘ったけれども付かなかったスキルだ。
"素手で闘う"というのが条件なんだろう。  だからモンクにも付かない。
( 石は武器の範疇に入らないというのはやはりオイシかった )
…これは今後の検証結果によっては 大きく活用できる可能性があると思う。
投石と同じようにアゲて行きたい。


 FCにおけるスキルは(特に汎用スキルについては)リアル世界ではあり得ない"超能力"的なものではなく "威力"や"精度"の底上げ、という単純な性質であることが多い。 (『一度出した記録にイロを付けた成績を練習をサボってもキープできる』 てことだから十分チートだろうという意見もあるかもしれない )
付いていて困るものじゃないので獲れるものはどんどん獲って行こう。


( …それ以外に何かイイ方針 てあるか? )




 ・・しかしこの段階でやられた死んだのはよかったかもしれないな。

 何も失わずに済んだ。
FQファイナルクエストには厳しい『デス・ペナルティ』は無いと言っていい。
HPとMPは復活時に全回復するし、レベル落ちやポイント抹消も無い。
ただし装備していた武器やアクセサリは失われる。(死亡した場所に残る)
それがないとゲーム全般の緊張感が著しく低下してしまうからだ。
"ダメモト特攻"が頻発し雰囲気がダラけて来るのだ。
だから殆どのプレヤーは勝ち目のない戦闘は避ける。
勝算があっても危険を伴うミッションにはパーティチームを組んで臨む。
メンバーから犠牲者が出たらその装備を回収する というのも理由の一つだ。
ソロではクリアするのが難しいから組むが 共に戦っている内に自ずとメンバー同士が"信頼"という絆で結ばれてゆくのがパーティだ。 
…FQはそういう"人間関係"を強いる傾向が強い。

 ソロプレイを好む者には少々"暑苦し"く感じられるのは否めない。
久し振りに"身一つ"でフィールドに降り立ち、たった一人で戦ったこの感じ。
( おれが求めていたのはコレなのかもしれないな )



 ・・・フィールドに戻って"続き"をやりますかね。
湧き上がる雑念を振り払い、気持ちを切り替えてワープのパネルを開く。
見慣れたFQのワールドマップが眼前に出現した。
「?」
ちょっといつもと違う。
マップ自体は同じだが候補となる"転送先"のドームが表示されていない。
点滅する光点はブラン大陸の南側。 …これはゲルブ平原俺が死んだ場所だ。
『転送先を指定してください』
というテキストがパネルに表示されている。(これはいつもと同じ)
光点をフォーカスして動かそうとしてみた。 動かない。
他の場所(大陸)は選べない。 地図も光点から離れた領域は黒く潰れている。
・・・未踏破領域には転移できないようだ。
地図を拡大してみた。

 光点が拡がり"円"になった。  円の直径は・・・10kmくらいか。
その中心にやはり点滅する光点がある。 俺がやられたポイントだ。
円の範囲内で別の光点をカーソルのように動かせる。
多少は死亡地点から距離を置いて転移できるようだ。

( 完全に同じ場所に戻ったら直ぐにまた"死ぬ”かもしれないものな )

 死亡と復活の無限ループに陥るのを防ぐ為の5kmの偏移許容なのだろう。
見方を変えれば戦闘で失われた貴重な装備を回収することが容易いとも言える。
HPとMPは完全回復するのだから予備の装備さえあれば十分有り得る選択肢だ。


・・・よく考えられた仕様だな。


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