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ゲルブ平原
東京転位
しおりを挟む・・・え、なんで !?
俺は(また)聖堂に戻っていた。 これで三度目だ。
周囲の安全は確認していた筈だ。 少なくとも俺の射程範囲内に敵はいなかった。
誰か(何か)にヤられて死んだ、 てのは考え難い。
あ、そうか。 アラートが鳴ってたよな。
ADプレヤーの ”ログオフ状態” てのはこのドーム、てことになるのか。
そのままいきなりSWを切られるよりはマシ、なのか?
( SWを切られてもこっちには分からない訳だが )
・・・だけど今回は何か違う。 俺の他にもう一人いる !?
CA? エレベーターガール? いや 受付嬢か? みたいな恰好をしたお姉さんだ。
「”野田明様”、此度は御迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
そのお姉さんが白手を重ねて深々とお辞儀をして来た。
「その上にお時間を取らせてしまい恐縮で御座いますが、弊社代表が直接お詫びを述べさせて頂きたいとのことで、何卒ご容赦の程お願い申し上げます」
「 ? あ、はい。 御丁寧にどうも」
つい、俺もお辞儀で返してしまう。 (てか今俺喋った?)
「なお御利用のサーバーは只今停止しておりますのでお時間の御懸念は不要です」
「そーですか」
棒返事。
( 思い出した。 コレはテクノフロンティアの制服だ )
・・・て事は。
「有難う御座います。 それでは私はここで失礼させて頂きます」
「いいえこちらこそ」
お姉さんがお辞儀をする。 俺もお辞儀を返す。(やっぱ喋れてる?)
頭を上げた時、其処はもうあの聖堂ではなかった。
俺は広い部屋の窓際に立っていた。
部屋の全幅・全高を一枚ガラスが占める窓を持つ明るいオフィス。
窓から見えるのは六本木のあのタワー。 そしてその向こうにスカイツリー。
見間違いようもない。 眼下に広がるのは東京の街並みだ。
「 御足労いただいてどうも、野田明君 」
俺の隣に立っていた男が声を掛けて来た。
「初めまして。 テクノフロンティア代表の進藤昭です」
握手を求められた。 (半ば反射的に)握り返す。
握手を受けたのはゴブリンの手ではなく本来の俺、人間・野田明の手だった。
間違いない。 TFの創立者で代表取締役の進藤昭その人だ。
あのM社やH社、S社の創業者と並び称される日本、いや世界のカリスマ。
写真や動画で見たことはあるが、会う(?)のは初めてだ。
此処は彼のオフィスなのだろう。
( しかしホントにVRなのか? )
俺はゴブリンではなく、ログインアバターの美形剣士でもない野田明の本来の姿に戻っていた。 服や靴は普段家にいる時や外出時に良く身に着けていた物だ。
・・・訳が分からない。
( リアルにロードバックしたんじゃ? )
それだったら野田明の”その後”の記憶がある筈だ。 それが全く無い。
( 独立したPCのオリジナルへの再統合はまだ遠い将来の課題だとされている)
無いと言えば肝心なアレも無い。 ・・・やはりこれはVRか。
「こちらこそ初めまして。 御社でゴブリンをやらせて頂いてる野田明ですw」
進藤昭がちょっと驚いたような表情を見せたがすぐに平静を取り戻す。
「驚いたな… こうして会ってみると本当に野田君そのものですね」
オレ本人に面識があるんだな。( リアルのデータも採ったのか )
「僕も驚いてますよ。 コレがなければ勘違いしていたかもしれませんw」
ポンポン、と”前”を叩いて見せる。
進藤が頷く。
「いや、全く。 ”御本人”が仰っていた通りだ。 う~む」
「…やっぱり生きてましたかw」
「おぉ!」
進藤の俺を見る目が輝いている。 てか潤んでいるように見える。 何コレ?
「素晴らしい! 私は今日という日を忘れないでしょう!」
両手を握られた。
軽く汗ばんでいる。 熱が伝わってくる。 何かに納得したような表情。
手を握られたまま立ち尽くしているとデスクの上の液晶カレンダが目に入った。
それはもう6月を表示していた。
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