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第十二章 学園祭の始まり
22 結果発表
しおりを挟む参加者たちはコンテスト開始時に着ていた伝統衣装に身を包み、全員がステージに上がる。最後尾にいた呉宇軒はステージに顔を出すなり、大盛り上がりの会場にサッと目を走らせた。
囮役の李浩然はステージのちょうど正面にいたので、すぐに見つけられた。彼の周りには友人たちの姿もあり、万全の体制だ。だが、肝心の黒幕女子の姿は、さすがにこの人の多さでは見つけられそうにない。
なにせ、彼女の顔をまともに見たことがあるのは、呉宇軒に嫌がらせをした実行犯たちだけなのだ。王茗が似顔絵を頼んでくれていたものの、この人混みの中で絵を頼りに特定するのは不可能に近い。
「さて、映えある美男美女コンテスト第一位になるのは誰なのか、投票結果を見ていきましょう!」
司会の声と共に、バックスクリーンに出場者の顔写真と名前が映し出される。それぞれ名前の下に広いスペースがあり、結果はそこに表示されるようだ。
先にジャンル部門の投票結果が発表され、呉宇軒は男子の可愛い部門と格好いい部門、それからセクシー部門で一位を取った。
「軒軒、三冠おめでとぉーっ!!」
ファンの女の子たちが息を合わせて声援を送ってくれる。呉宇軒はステージの前の方に飛び出すと、横断幕を掲げてアピールする彼女たちに大きく手を振ってみせた。
「みんなありがとぉー!!!」
大きな声で呼びかけながら、さり気なく李浩然のいる方へと視線を向けたものの、怪しい人物はまだいないようだ。人で溢れているせいで、もしかしたら近寄れないでいるのかもしれない。
メインの結果発表前にも拘らず、会場はすでに熱気に包まれている。そして、いよいよ美男美女コンテストの結果発表が始まった。
三位から順番に名前を呼ばれていくことになり、まずは女子の三位が発表された。ふんわりとした巻き毛の可愛らしい女の子で、上位に入れて大喜びしている。
幼馴染にかまけて女子たちのパフォーマンスをほとんど見ていなかった呉宇軒は、てっきり彼女がLunaのライバルだと思っていた。しかし、隣でヒソヒソ話している男子たちの声を盗み聞くに、どうやら彼女ではないらしい。
続いて呼ばれた名前に、呉宇軒はハッとして顔を上げた。
「男子の第三位は……建築学部、仁雷」
会場からわっと歓声が上がり、仁雷の顔がスクリーンにドアップで映し出される。彼の得票は他の参加者よりも頭二つ抜き出ていた。
彼は照れくさそうに頭を掻きながら前に出て、応援してくれていた友人たちに笑顔で手を振った。
「仁雷おめでとぉ!」
後ろで待機している呉宇軒も、周りと一緒になってライバルの健闘に声援を送る。
ふと、少し離れた所にいるイーサンの方へ目を向けると、彼はコンテストそっちのけで会場を食い入るように見ていた。
どうやら、例の女がいつ李浩然に接触するか気になって仕方がないようだ。そのせいで、彼は二位の女子の次に自分の名前が呼ばれたことに気付かなかった。
「二位はイーサン・チャン!」
司会の人が改めて名前を呼び、隣にいた参加者が見かねて彼を肘で突く。それでやっと、イーサンは自分が名前を呼ばれたと気付いてカメラを見た。
「よくやった!」
「俺の中ではナンバーワンだぞー!」
彼がステージの前の方に出ると、会場からは女子の歓声に混ざって健闘を称える男子たちの声が聞こえてくる。恐らく呉宇軒の首位転落を願っていたアンチ達だろう。
投票結果を見ると、仁雷から更に頭ひとつ抜けていた。ほとんど知名度のない状態からよくここまで票を集めたものだ。
温かい拍手で迎えられてはいるものの、結果に満足していないイーサンは不貞腐れた顔をしてふんと鼻を鳴らす。彼が二位ということは、必然的にライバルである呉宇軒の一位が決まったようなものだった。
「女子の第一位は今年もこのお方! 麗しのLuna女王様だぁー!」
二年連続で一位を取った彼女は、名前を呼ばれて誇らしげな笑みを浮かべる。ライバルとして有力視されていた二位の可愛らしい女の子は、堂々とした足取りでステージの前まで歩いていったLunaを見ながら悔しそうな顔をしていた。パフォーマンスでピアノを弾いていた、例の不憫な子だ。
しかし、結果を見ると二人の差はそこまでないように思える。プロ顔負けの李浩然の演奏が先になければ、結果はどうなっていたか分からないだろう。
「今年もLuna姉が一位か……隣に立つの嫌だな」
後輩として、彼女の勝利を祝う拍手を送りながらも、呉宇軒は密かにため息をつく。なぜなら、表彰のためにステージの中央には数字の書かれた台が置かれていて、男女それぞれの一位から三位までが並ぶことになっているのだ。
「映えある美男第一位は、呉宇軒!!」
司会の宣言が響き渡ると、女子たちの歓声とアンチたちからのブーイングが湧き起こる。その声はLunaの時よりも大きく、会場が揺れるほどだった。
「みんなありがとぉ! アンチ共、ざまーみろ! 然然、やったよぉー!!」
マイクをもらった呉宇軒は、ブンブンと手を振りながら大はしゃぎで声を張り上げる。二位との差は頭三つ分で、ぶっちぎりの得票率だ。
呉宇軒の言葉に、会場のカメラはステージ前に陣取る李浩然を映したものの、彼の後ろに映りこんだ友人たちが呑気に手を振るばかりで怪しい人影はない。
やはり、これだけ人が集まっていると近付くのは難しいのだろうか。向こうからの接触はしばらく無さそうだ。
もし犯人の女が来るとしたら、きっとコンテストが終わって李浩然が幼馴染を迎えに行く僅かな間だろう。
司会に促され、呉宇軒を含む一位から三位までの参加者は、ステージの真ん中にある台に立つように言われた。Lunaの隣に立つハメになった呉宇軒は顔を引き攣らせつつも、応援してくれた人たちに笑顔で手を振る。
彼らが感謝の気持ちを込めて手を振っていると、舞台の袖からコンテスト係の生徒が小走りにやって来た。『コンテスト委員会』と書かれたベストを着た女の子は、一人一人に花束を渡し、参加者の首にメダルをかけていく。そして、一位の呉宇軒とLunaには小さなトロフィーまで贈られた。
コンテストは大きなトラブルもなく、拍手喝采の中で幕を閉じた。
待機テントに戻った参加者たちは着替えの前に互いに健闘を称え合い、集まって記念撮影を始める。
すると、隣のテントにいるはずの女子たちが、こちらのテントにゾロゾロとやって来たではないか。彼女たちも記念撮影をしたかったらしく、大胆にもセクシーなスリットが入ったドレス姿のままで、歩くたびにチラリと脚が見える。
突如現れた美女たちに、参加者の男子たちは両手を上げて大喜びする。それもそのはず、コンテスト期間中はほとんど別行動で、お近付きになるタイミングが全然無かったのだ。
彼らは降って湧いた好機に連絡先を交換しようと必死で、積極的に話しかけに行く。ところがほとんどの女子たちはツンと澄ました顔で彼らの誘いをかわし、真っ直ぐに呉宇軒の元へやってきた。
「軒軒、連絡先交換しない?」
「あっ、あたしも! 参加者同士仲良くしましょ!」
押し寄せる女子たちに周りを囲まれて、呉宇軒はあっという間に身動きが取れなくなる。こんなところを李浩然に見られたら一大事だ。
「ごめんな。俺、今は女の子と連絡先の交換はしてないんだ。可愛い婚約者がやきもち妬いちゃうから」
そう言って宥めると、彼女たちは残念そうに「えぇーっ」と落胆の声を出す。だが、さすがは美女コンテストに出るだけあって、逞しい子ばかりだ。すぐに気持ちを切り替え、今度は呉宇軒が女子に囲まれている姿を遠巻きに見ていたイーサンと仁雷を取り囲みに行った。
「なんだよ、あいつらばっかり」
「それより呉宇軒だろ。美女たちを袖にするなんて生意気だな!」
女子たちからスルーされた男子の一部が口々に不満を漏らす。仮にも美男コンテストに参加したイケメンたちの体たらくに、呉宇軒はやれやれと肩を竦めて口を開いた。
「お前ら、がっつきすぎなんだよ! 仮にも美男コンテストの参加者だろ? もっと堂々と構えておけよな」
それを聞いた男子たちは不満顔で抗議しようと口を開いたが、呉宇軒は「それから」と彼らの言葉を遮った。
「こういう時は女の子に主導権を握らせてあげないと。どうしても落としたい相手がいるなら別だけど、どうせいないんだろ?」
手当たり次第に声をかけることほど見苦しいものはない。すると、彼の言葉に女子たちが口々に賛同した。
「そうそう、さすが軒軒! 分かってるわね」
「心配しなくても、みんなにも後で聞くわよ」
まるで子どもを諭すお母さんのような口調に、やっかみ男子たちはたちまち閉口して小さくなる。同じ参加者同士でも、男女でここまで差が出るとは面白い。
すっかり主導権を握った女子たちに翻弄されながらも、参加者たちはひと時の思い出を写真に残していった。
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