真面目ちゃんの裏の顔

てんてこ米

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第八章 芽生え

9 勢い余って

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 李浩然リーハオランが朝食の粥を作り終わる頃、ちょうど良いタイミングで家族が続々とリビングに現れる。朝からきっちりと身なりを整えた李若汐リールオシーを見て、呉宇軒ウーユーシュェンはおや?と首を傾げた。

「お前、どっか出かけんの?」

 今日の彼女は紅葉のような赤色のロングスカートに黒いニットを着ていて、雑誌に載っているデートコーデみたいだ。連休とはいえ朝から妙に気合が入っている。

「出かけないけど? あっ、ラン兄、今日の髪型決まってるね!」

 怪訝そうに彼を見返した李若汐リールオシーは、いつもと違う従兄弟の髪型にすぐに気付き、パッと笑顔になった。彼女の目から見ても今日の李浩然リーハオランはかなり格好いいようで、その出来栄えをまじまじと見つめながらよく似合っていると褒め讃える。

「だろ? 最高に格好いいよな!」

 幼馴染を褒められて、呉宇軒ウーユーシュェンは上機嫌で頷いた。普段の髪型の彼ももちろん格好いいが、今日は一段と素晴らしい。
 自分の目に狂いはなかったと満足していると、彼があまりにも嬉しそうにしていたので、李若汐リールオシーがぷっと吹き出す。

「なんでシュェン兄が喜んでんの?」

 呉宇軒ウーユーシュェンは当たり前だろ、と言ってニヤリと笑った。

浩然ハオランにはこの髪型が似合うって気付いたのは俺だぞ? さすが俺!」

 元々彼は、垢抜けない幼馴染をもっと良くしたいと思っていたのだ。普段の李浩然リーハオランは服装も髪型も無難にまとめていて、せっかく顔が良いのに勿体ないといつも思っていた。そんな彼が朝から髪型をセットしてお洒落をしているのだから、喜ばないわけがない。
 いつもの幼馴染自慢が始まったとうんざりした李若汐リールオシーは、はいはい、と軽く流して席に着いた。そんな彼女の前に、李浩然リーハオランが粥をよそった器をとんと置く。李若汐リールオシーは従兄弟と呉宇軒ウーユーシュェンを交互に見て、あれ?と言った。

「今日の朝食はラン兄が担当なんだ。シュェン兄は作らないの?」

「さっき作って食べた。みんなの分はコイツに譲ってやったんだよ」

 練習にもなるからと付け加えると、李若汐リールオシーはずるい!と不満そうな顔をした。

「私もシュェン兄のお粥食べたかったのに!」

 残念そうにする彼女に、呉宇軒ウーユーシュェンは首を傾げる。
 彼は先ほど、李浩然リーハオランが作った粥を味見して上手にできているかチェックしていた。なので、幼馴染の粥は自分が作ったものと何ら遜色はないと胸を張って言える。

「大して変わんねぇだろ。そんなに食べたいなら、明日は俺が作ってやるよ」

 我儘を聞いてもらえた彼女はやった!と両手を上げて喜んだが、それは作った人に対して少々失礼だった。そのことにすぐに気が付いた李若汐リールオシーは、ハッとして従兄弟に目を向けると慌てて付け加えた。

ラン兄のお粥もすっごく美味しいよ? でもほら、シュェン兄のお粥は滅多に食べられないから」

 大慌てで言い訳するも、二人の会話を全く意に介していなかった李浩然リーハオランは、それを聞いても眉一つ動かさず平然としている。彼は少しぼんやりしているようで、彼女に生返事を返した。
 呉宇軒ウーユーシュェンは幼馴染が心ここに在らずなのを良いことに、あーあ、と残念そうな声を出して李若汐リールオシーをからかった。

「どうすんだよ、然然ランラン落ち込んじゃったぞ?」

 すると、何故かその声は李浩然リーハオランの耳にしっかり届いたらしい。彼は意地悪をする幼馴染を自分の元に引っ張り寄せて、出鱈目を言う唇を指で軽く挟んだ。

「落ち込んでない」

 悪戯をした子どもを叱るような声音でそう言うと、悪い子になった幼馴染をじっと見つめる。
 口を塞がれた呉宇軒ウーユーシュェンは不満げな眼差しで幼馴染を見たが、李浩然リーハオランの表情はいつもと変わらないはずなのに、髪型を変えた彼はいつになく色っぽく見える。目を合わせているだけでだんだんドキドキしてきて、呉宇軒ウーユーシュェンは結局、視線に耐えきれず目を逸らしてしまった。
 李浩然リーハオランは大人しくなった幼馴染を見て満足げに微笑むと、唇を挟んでいた手を退けて解放してくれる。それからニヤニヤしながら二人を眺めていた李若汐リールオシーに向かって口を開いた。

「気にしなくていいから」

「うん。ところでシュェン兄、何かあったの?」

 勘の鋭い彼女は二人の間に漂う微妙な空気に目敏く気付き、これは何かあったに違いないと察したらしい。からかうように尋ねるその瞳は楽しげに細められていて、心底面白がっていることが窺えた。
 呉宇軒ウーユーシュェンはちょうど、朝に起きた李浩然リーハオランとの気まずい出来事を思い出していたところで、彼女の言葉にぎくりとする。

「なんもねぇよ!」

「うっそだぁ、絶対何かあったでしょ! 教えてよ!」

 慌てて否定すると余計に怪しく見えて、彼女は確信を深めてニヤリとした。その表情は何があったか絶対に言わせてやると意気込んでいるようで、武力行使の気配を感じた呉宇軒ウーユーシュェンは顔を引き攣らせる。
 このままリビングに居続けていると、食事を終えた彼女に喋るまで締め上げられそうだ。朝の一件にあまり触れられたくない呉宇軒ウーユーシュェンは大慌てで幼馴染の腕を掴むと、リビングから逃げるように飛び出し、ちょうど良いからとこのまま外出することにした。



 空には雲一つなく、絶好のお出かけ日和だ。ひやりとした風が吹く中、李浩然リーハオランが呼んでくれたタクシーに乗り込んで家を後にする。呉宇軒ウーユーシュェンはこれからどこへ行くのか楽しみで仕方なくて、秋色に染まった外の景色を眺めながらそわそわと落ち着かないでいた。
 二人を乗せたタクシーは大学を通り過ぎ、そのまま軍事訓練で泊まった宿舎の方へ向かっていく。進行方向には学生街とはまた違った大きな街があり、呉宇軒ウーユーシュェンたちは訓練中によく食事をしに行っていたが、彼らが歩いたのは街のほんの一部だけだ。
 下調べを欠かさない李浩然リーハオランのことだから、きっとどんな店があるか把握していることだろう。よく行っていた食堂や店を通り過ぎると、ついに辺りは見慣れない景色になり、呉宇軒ウーユーシュェンは窓の外を流れる景色をキョロキョロと見回して何があるか目を凝らす。しばらくすると、タクシーは小さな繁華街にある黒い瓦屋根の厳しい店の前で止まった。

「着いた?」

「うん。先に降りて待っていて」

 厳しくもどこかくたびれた建物で、ぱっと見ではなんの店かよく分からない。呉宇軒ウーユーシュェンはタクシーから降りると、じっくりと外観を見てピンと来た。
 この店は刃物専門店だ。
 大きな街ではまた違うが、地元でひっそりと包丁を売る店は大きな看板などはなく、一見分かりにくい場合が多い。この店はいかにも老舗といった外観で、かなり歴史を感じる。
 刃物店の中には粗悪品を売る怪しい店もあるが、李浩然リーハオランが調べた店なら間違いない。彼のようなお金持ちは独自の情報網を持っていて、良質な店を探すのもお手のものなのだ。
 タクシーの支払いを済ませた李浩然リーハオランは、幼馴染が目をキラキラさせているのを見て微笑んだ。

「もうどこに連れてこられたか分かったのか?」

「うん! 刃物専門店だろ?」

 普段から包丁を使っている身としては、喜ばずにはいられない。どんな良質な包丁が置いてあるかとうずうずして、呉宇軒ウーユーシュェンは居ても立っても居られなかった。そんな彼を微笑ましく見つめると、李浩然リーハオランは思いがけない言葉を口にした。

「欲しいと思ったものがあったら、遠慮なく言って。値段は気にしなくていいから」

 彼の発言は随分と太っ腹で、まるで誕生日かクリスマスでも来たかのようだ。呉宇軒ウーユーシュェンは目を丸くさせて驚き、今日は一体何の日だ?と考える。国慶節は祝日ではあるが、こんな風に高価な物を贈るような一大イベントではない。

「俺、今日が誕生日だっけ?」

 今は十月だが、呉宇軒ウーユーシュェンは夏生まれだ。そんなはずはないと思いながらも聞かずにはいられず、彼は恐る恐る幼馴染に尋ねる。すると李浩然リーハオランはふっと笑みを漏らし、さも当たり前のように言った。

「今日はデートをすると言っただろう?」

 つまり彼は、練習ではなく本当にデートをしに来たということだ。呉宇軒ウーユーシュェンは喜びで胸がいっぱいになり、李浩然リーハオランに飛びついた。
 包丁を買ってくれるなんて、彼は本当に幼馴染のことをよく分かっている。ちょうど今使っている包丁がボロボロになってきたので、近いうちに買い替えたいと思っていたのだ。

「ありがとう! 浩然ハオラン大好き!!」

 喜びが溢れて止まらなくなった呉宇軒ウーユーシュェンは、幼馴染を力いっぱい抱きしめ──気付いた時には彼の唇にキスをしていた。
 ちゅっと軽やかな音がして、しっとりとした唇の柔らかさを感じる。次の瞬間、彼は突然正気に戻り、大慌てで身を引いた。
 李浩然リーハオランは驚いた顔で固まっているが、呉宇軒ウーユーシュェンは直視できずにさっと目を逸らす。恥ずかしさのあまり顔から火が出そうだ。

「ご、ごめん! 嬉しくてつい……」

 彼はまともに幼馴染の顔を見ることもできず、ごにょごにょと口ごもった。
 どうしてそんなことをしてしまったのか、呉宇軒ウーユーシュェンは自分でも分からず混乱してしまう。喜びのあまり彼の頬に口づけることはままあったが、よりによって唇にしてしまうなんて。
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