好きな人とは結ばれない。

白田

文字の大きさ
上 下
1 / 1

6年の片思い

しおりを挟む
 小3から中2まで名字が一緒のY君に片思いをしていた。
 いつも私に突っかかってきて喧嘩になるのが恒例行事。それを止めるのが私とY君と同じ苗字のMちゃん。出席番号で並ぶときは私、Mちゃん、Y君の順番。Mちゃんと仲良しの私は放課後や昼休み2人で遊んでた。でも、小4のときに親の転勤で引っ越してしまい、出席番号で並ぶときに私の後ろにY君が来た。嫌で嫌でしょうがなかった。後ろから脅かされたり背中をツンツンされたり。止めてくれるMちゃんはいない。他の子達は面白がってみてるだけ。喧嘩は先生に怒られるまで続く。学校だけなら良いが帰り道も一緒なので最悪だった。
 最初は嫌だったが小3の秋になるとお互い仲良くするようになった。「なんの本読んでるの」「これ知ってる?」「放課後遊ぼうよ」など話すようになった。学校での仲良しグループにいつからかY君とその友達がいた。席が前後になったときはY君が私の消しゴムを取ったり小さなイタズラをされた。授業中でも2人でコソコソ遊んだ。少しずつY君のことが好きなった。
 小5の冬頃、少し中が悪くなった。ギスギスした関係が続いた。何がきっかけだったのかわからないけどずっと気に食わなかった。帰りも1人で帰るようになった。それが何日も続き、ある日の帰り道Y君が橋の上から大きな声で私に「〇〇家の恥晒し」といった。悲しくてたまらなかった。Y君と名字が一緒なだけでそこまで言われないといけないのだろうかと思った。小さい頃から気にしていたことを好きな人に言われたことで傷つき泣いてしまった。Y君は言い返してくると思ったんだろうけど私は泣きながら何も言わずに帰った。
 次の日の帰り道Y君は「給食係の恥晒し」と私にいった。その時彼はただ軽い気持ちで言ってるんだとわかった。でも、昨日のこともあって少し泣きながら「なにそれ意味わかんないよ」と言ったらY君は「ごめん。たしかにそうだよね」といった。そこから少しずつ前の関係に戻った。
 小6の夏。昼休みに暑いから図書館にいって本を読んでたらY君とその友達が来た。「本なんて読むんだね」というと「いつも読んでるだろ。たまには図書館もいいかと思ってきたの」と返された。昼休み終了のチャイムが鳴り、図書館から出るとぴったりとY君とその友達がずっと後ろをついてきた。いつもはチャイムが鳴ってもすぐに行動しないのに珍しかった。5時間目は理科だったので急いで理科室に行った。着席しようとしたら後ろの友達に「〇〇、ズボンに血がついてる」と小声で教えてくれた。急いで先生に言い、トイレに行った。授業終わりに友達が「大丈夫だった?昼休みからついてたのかな?」と聞いてきた。その言葉でY君とその友達の行動に気づいた。帰り道でお礼を言うと「なんのこと?忘れたよ」と言われ、Y君の優しさに助けられた。
 中学に上がるとクラスは別々になった。関わることもなくなりただひっそりとY君のことを想っていた。夏に仲良しグループのNちゃんが私とY君を映画に誘ってくれた。そのときにLINEを交換してちょくちょく連絡を取り合った。冬に2人で映画を見る約束をした。映画館前に集合して2人で映画見た。泣ける映画だったのだがY君が隣りにいることが気になって泣けなかった。クライマックスでY君のことをチラッと観ると彼は泣いていた。初めて泣く姿を見た。このことは大人になっても忘れてやらないと思った。映画を見終わったあとは特にやることもないので解散した。
 Y君にLINEで「夜に家を抜け出して空を見ている」と話した。すると、「明日一緒に散歩しよ」と誘われた。もちろん承諾した。当日の夜に家族が寝静まったあとに外に出た。星がきれいで輝いていた。待ち合わせ場所はY君の家の近くにある電柱。合流してその日は土手に向かって歩いた。土手の手前にある道路の縁石に2人で座って空を見た。「きれいだね」「あれ、夏の大三角形だ」とか話した。するとY君「ねえ、こっち見て」といった。Y君を見ると私の方に体を向けていた。私も彼に体を向けた。お互い向かい合いハグをした。「ねえ、触れても良い」といわれ「うん」と返事をすると服の中に彼の手が入ってきた。少し冷たくて大きな手が私の胸に触れた。私はY君のことを強く抱きめた。そんな状況が終わったのは車のライトのおかげだった。すごい速さで車が私達を照らし去っていった。その時もの凄く恥ずかしくなり「今日はもう帰ろうか。明日も学校だし」と私が言うとY君も「そうだね」といい、手を繋いで帰った。そんな曖昧な関係が冬まで続いた。
 中2になると連絡はパタリとなくなった。私はY君のいる水泳部に転部した。少し期待していた。同じ部活じゃないからY君は振り向いてくれないんだと思っていたからだ。そんなことなかった。同じ部活でもあまり大差なかった。Y君を好きという気持ちよりも同い年の女の子の病み具合を相手するのに面倒臭くて大変で毎日疲れていた。そのせいかY君を想うことにも疲れてしまい、私はY君を好きでいるのを辞めた。
 未だにあの時Y君からの告白を待つんじゃなくて自分から告白していたらなにか変わってたんじゃないかなと思ってる。遅いけどね。


追記
 5年生のときY君のご両親が離婚したことを高3のときに幼なじみに聞いた。その辛さを誰かにぶつけたくて私にぶつけていたのかもしれない。
 高1の夏にNちゃんがまた私とY君を映画に誘ってくれた。何かあるかもしれないと思い承諾した。映画を見終わってもY君への気持ちが再熱するわけでもなく、なにもなく終わった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...